自己肯定感の低い美少女に『貴方好みの女の子に染め上げてください』と頼まれた件
にぃ
第1話 星宮くんの好みを早く教えやがってください
「ずっと……ずっと星宮くんのことが好きでした」
緊張した様子の女の子が俯きながら僕の前に立っている。
桜井ひまりさん。
あまり話したことはないけれど、クラスメイトの女の子だ。
常に緊張しているような喋り方をしており、小動物みたいで守りたくなる。
正直屋上に呼び出されたときはまさかと思った。
僕なんかには一生縁がないイベントと思っていたから……
「あ、ありがとう。桜井さん。まさかそんな風に思っていてもらえていたなんて本当に嬉しい。それで、告白の答えなんだけど……」
「——待って! 星宮くんの言いたいことは分かります! 今まで何の接点のなかった私風情が急に何を言っているんだって感じですよね!」
「えっ? いや、そんなことは——」
「——分かってる! 分かってますから! でもチャンスくらい与えてもいいと思いませんか!? お願い! フラれる前に私にチャンスをください!」
「え? えっ? ちゃ、チャンス?」
「一ヶ月後、私はもう一度貴方に告白をします! その時までに貴方好みの女の子に変わります! 絶対に変わって見せますから!」
桜井さんが全然喋らせてくれない。
どうしてこの人はこんなにも今の自分に自信がないんだ……
「だからお願いです! この一ヶ月間で私を貴方好みの女の子に染め上げてください。桜井ひまり改造計画を一緒にやっていきましょう!」
「桜井ひまり改造計画ってなんだ!?」
「私の駄目な所を知られてしまう前に、貴方好みの女の子として生まれ変わってしまおうという完璧すぎる計画です」
確かに僕らは互いのことをよく知らない。
でも付き合いながら少しずつ互いのことを知っていくのも僕はありだと思っている。
「桜井さん。一ヶ月後なんて待たなくても僕からの答えは決まっているよ。僕で良ければぜひこの瞬間から付き合って欲しいです」
改造計画なんて必要ない。
ありのままの桜井さんを好きになれば良いだけの話じゃないか。
「……優しいですね星宮くん。私を傷つけない為にそのような優しい嘘も付けるのですね。でも星宮くんの優しさに甘えて彼女にさせてもらうなんてそんな図々しいことはしません。私は実力で貴方の彼女になりたい……いえ、なってみせます!」
「どうして告白OKしたのに自分から引き下がったの!? 自己肯定感が低いにも程があるよ!? 付き合ってから互いをよく知っていこうよ!」
「そんなことしたら私の悪い所ばかりが目立ってしまいます! 私の魅力の無さを侮ってますか!?」
「そんなことないから! 桜井さんは魅力的な女の子だよ。現に今告白してもらえて僕はめちゃくちゃ喜んでいるよ?」
「な、なんて優しい嘘を言ってくれるのですか。ますます惚れました。絶対絶対! 貴方の彼女になって見せますからね!」
「話聞け!?」
だめだ。彼女の自己肯定感の低さが邪魔して全然告白OKを受け付けてくれない。
今のままでは絶対に受け入れてもらえないという勝手な思い込みが桜井さんを意固地にさせてしまっているようだ。
「あの……早速ですが、星宮君の女の子の好みを早く教えやがってください」
「教えやがってください!?」
「好きな身長は!?」
「せ、背の高さなんて気にしないよ」
「でも本当は!?」
「え、えと、まぁ、高身長の女の子だと嬉しいかな。僕自身が身長高めなので」
「わかりました! 明日までに背を伸ばしてきます!」
「明日までに背を伸ばしてきます!?」
「では!!」
ぴゅーっと走り去っていく桜井さん。
なんていうか信じられない一時だった。
告白されて、受け入れて、でも付き合うことができなかった。なんだそれは。
「こんなことがあって良いのだろうか……」
こうして、自己肯定感の低い桜井ひまりさんの改造計画がなんか勝手に始まってしまったのであった。
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