第14話 死地
「か、かわいい!」
現在、俺たちは南門近くの森にいる。
「さわり心地最高…!」
森までは迷うことなく来ることができ、森に着くまでは計画通り進んでいた。
「毛並みもフワッフワ!」
一つ問題があるとすれば…
「私もテイムしたい…」
パーティーメンバーによってウサギとスライムが撫で回され、かれこれ5分はこの状態だということだ…
森に入ったということで、パーティーメンバーに紹介も兼ねて出したのだが、女の子たちにうちのモンスター達の可愛さは刺激が強すぎたようだ。
数分後…
「各自、斧は持ったか?」
「はい!」 「うん」
というわけで、モンスターの襲撃に備え、パーティーで離れすぎないようにある程度集まって木材を集めることになった。
…
たまに雑談を挟みつつ木を切り、パーティーの親睦を深めていると、
―グルルル…―
「森林オオカミだ!戦闘準備!」
事前の取り決め通り、モンスター襲撃時は俺とウサギが前衛、それ以外が後衛という配置につく。
(森林オオカミ、群れで狩りを行うとのことだが、何匹で来る…?)
―ガアアッ―
「おっと!」
不意に横合の草むらから突進を受けた。
「はっ!」
ギリギリで気付くことができ、突進を避けると同時に一太刀浴びせる。
傍から見れば滑らかに反撃できたように見えるかもしれないが、普通に危なかった。
「かっこいい!」 「おぉー…!」
幸いなことに後ろのパーティーメンバーたちに俺の焦りは伝わらなかったようだ。
―ドスッ―
逃げようとする森林オオカミにウサギの角が突き刺さり、オオカミは沈黙した。
…
その後も断続的に森林オオカミの襲撃はあるが、うまく捌けている。
―グルルルルル…―
「また森林オオカミ、戦闘準備。」
久しぶりに唸り声が聞こえてきたので戦闘態勢をとったのだが…
「…多くね?」
続々と辺り一帯から森林オオカミが姿を現す。
(1、2、3、4…10匹はいるぞ…)
数えている間にも見る見るうちに数を増していく。
「…撤退だ!」
「「はい!」」
一回交戦してわかったのだが、森林オオカミは一体一体もしっかり強い。
2匹以上との戦闘となると苦戦は必至。言わずもがな、群れと戦うとなると後衛のケアも難しくなってしまう。
(森の結構深いところまで来てしまっているが、逃げられるか?)
ここで、木材の質がいいからと、森の奥の方まで来てしまったのがあだとなった。
なにしろ、森林オオカミは足が速い。逃げ切れる可能性は高いとは言えないだろう。
(初デス覚悟するしかないな。)
オオカミたちを睨みつけながら、皆でゆっくりと後ろに下がる。
オオカミたちも今までの戦闘を見ているのか襲ってくることは無く、距離が少しずつ開いていく。
(逃げられるか…?)
―バキッ―
ルリさんが小枝を踏んだ音が響いた…
―ガアアアアアアアッ―
「くそっ!」
「ごめん!」
音に反応してオオカミ共が雪崩のごとく走ってくる。
ここからは大混戦だった。
一匹目の嚙みつきを剣で受け、動きが止まった先頭のオオカミをシズさんが突き刺し、ウサギがとどめを刺す。その間、俺は足と腕に噛みつかれ、動きが止まったところを胴体に突進を受け、盛大に吹き飛ばされた。
俺は段々とパーティーの面々から離され、孤立したところを集中攻撃にあってしまう。
最終的に、スライムから飛んでくるバフで攻撃を通しつつ、オオカミによる包囲網の突破を試みた。
…
「やった、生き残った…!」
俺はその後、何とか包囲網の突破に成功し、後衛の救援に向かうことができた。オオカミの数が減ったことで何とか全員で一体づつ処理することができ、オオカミの群れ計17匹の討伐に成功した。
キルスコアは俺が7、ウサギが8で、女の子二人で1ずつだ。
「「はぁ…はぁ…」」
後衛陣は声も出せないほど疲労したようだ。
無理もないだろう、どう考えても適正狩場ではなかったのだから。
「ここはさすがに無理だ、森の入り口に戻ろう。」
コクリと静かにうなずいた二人を連れ、再びオオカミの群れに出会わないことを祈りながら、森の入り口付近へと向かった。
…
「さて、気分転換にテイムでもしないか?」
先ほどの戦闘の疲れもあり、死んだ目をして木の根元に座り込んでいるパーティーのお二方に提案してみる。
(今の状態で木を切らせるのはあまりに酷だろう。)
気分転換もかねて、目的の一つでもあったテイムについて話し、
「また、伐採作業に戻ってもいいけど、どうする?」
「テイムしたい!」「どうやってするの…⁈」
…やけに食いつきがいい。そんなにテイムがしたかったのだろうか?(すっとぼけ)
…
「テイムの方法は『鳥の卵』ってアイテムを温めるだけ、って鍛冶屋の店主が言ってた。」
「「へぇ~」」
鍛冶屋の店主によると、木の上や地面に隠れている『鳥の卵』を見つけ、何かしらの手段で温めるとひなが孵るらしい。ちなみに、何が孵るかは完全ランダムなようだ。
「じゃあ、卵は見つけたもん勝ちってことで。15分後集合にしようか。」
今日の戦闘によりレベルが上がったことで、全員森の入り口付近なら苦戦することはないと判断し、各自で卵を集めることにした。
…
辺りを探し回ること15分、
「みんな何個見つかりました~?…なんと、私は11個です!」
「俺は5個だ。」 「私4個…」
一人だけ文字通り桁の違う数集めてきたルリさんがドヤっている。
11個もどうやって見つけてきたのだろうか。
「じゃあ、温めてみるか!」
こんな森の中で、卵をどうやって温めるか気になるだろう。
もちろん、方法は考えてある。それは…
「ウサギの腹の下に入れよう。」
「それってアリなの?」
無論アリだろう。
現実の鶏も自分の体温で卵を温めるのだからウサギで代用できないはずがない。
「5分温めて孵らなかったら、ハズレらしい。売るか、目玉焼きにでもすればいいってさ。」
「ざ、残酷…!」
―5分後…
ウサギとスライムにみんなで餌をやりながら待機していると、
―ピィ、ピィ、ピィピィ―
ウサギの下から鳥っぽい鳴き声が聞こえてくる。
(さすがはモンスター、生まれてすぐに鳴き始めるとは…)
一般の鳥は生まれてすぐには鳴くこともできないが、モンスターの成長の早さには感心するほかない。
「さて、何匹孵っているかな…」
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