私の人生
「レオン、行こう!」
授業を休み私達は家から少し離れた場所に旅行に来ていた。
「待ってください。本当に入りますか?」
遊園地のお化け屋敷の前で石像のように固まるレオン。
「ホラー映画大丈夫じゃん」
私の気分転換に付き合ってくれると言うので、私が行きたかった場所に一緒に来た。
「ジャパニーズホラーは苦手です」
ゾンビやモンスターには耐性があるらしいが、日本人形やこけしが苦手らしい。
大きな体で怖がっている姿につい意地悪をしたくなる。
「大丈夫!行こう!」
私の押しに弱いので、レオンは渋々中に入ってくれた。
悲鳴や風、匂いなど様々なトリックが仕掛けられており、その度にレオンは何とも言えない声を出していた。
「ノア、怖くなかったですか?」
げっそりしているレオンに水を渡して首を横に振った。
「レオン見てたらもはや面白かった」
水を飲むレオンの喉ぼとけが動く。
それを見つめているとレオンの大きな手が私と重なった。
「迷子にならないでください」
平日で人も少ないので、迷子になることはそうそうないだろう。
「子ども扱いしないでよー」
「ノー!してないです。僕がノアと手を繋ぎたいです」
その大きな手は私に安心感を与える。
たった一日、学校にいただけで私の精神はかなり参っていた。
自分の弱さを強く実感した日だった。
私が先生に代返の事をバラしても得が無いと伝えても聞く耳を持ってくれなかった友達。
便乗して、私に白い目を向ける友達。
その噂は一瞬で広まり、同じ授業を受けている生徒の話題にもなっていた。
身に覚えのない罪を着せられて、私は一瞬で居場所を失った。
「ノア、次は何がしたいですか?」
そんな私に居場所を与えてくれたのがレオンだった。
「…コーヒーカップ!」
今も昔もレオンは私の居場所を作ってくれる。
本当にヒーローのようだ。
「レオンはどうして私を好きになってくれたの?」
遊園地の乗り物にはある程度待ち時間が必要だ。
デートで遊園地に行くと待ち時間が原因で別れることもあるそうだが、理解に苦しむ。
聞きたいことが山ほどあって、知りたいことが山ほどある私にとっては全く苦の時間には思えなかった。
「ノアが可愛いと思ったからです。アメリカで日本語の勉強をして会いに来ました」
そう言って私を見つめた。
「ノアはどうですか?僕を好きになった理由は何ですか?」
「単純だよ。私が一番しんどいときに話聞いてくれて、居場所作ってくれて。どんな時でもレオンがいたら大丈夫って思えるの。アメリカでレオンに出会って、また再開して…大人になったレオンの事を知れば知るほど好きになっていく。今流行のメロいって感じだよね」
少しずつ進む列に足を動かす。
周りの音が大きくて、恥ずかしさを感じない。
「めろい?」
首を傾げる姿に笑って『メロメロになるくらい魅力的な人に使うらしいよ』と言った。
その言葉を気に入ったのか何度か声に出して、メモしていた。
「クールと同じ感じですか?」
「まぁそうだね。若者のスラング的な?」
そのあとも私達は遊園地を満喫した。
平日に遊園地に来るのは初めてで、人の少なさに驚いた。
ホテルに戻ると私はパソコンを開いた。
「僕は上のバーにいます。頑張ってください」
そう言ってレオンは私を残して部屋を出ていった。
「あ、聞こえていますか?望愛さん」
「はい、大丈夫です」
今日は就職活動や今後の学校生活のアドバイスとしてゼミの先生がオンライン会議をすることになっていた。
そのため、レオンは部屋を出て行ってくれたのだ。
「何か困ってることは無い?」
「今のところ就職活動は何とかなってます。大学生活も…大丈夫です」
先生に話したところで変わらないし、何より私達はもう大人。
「そう…けどね、望愛さん。馬鹿な先輩はあなたのことを心配しているようよ」
するとオンライン会議の参加者の数が3になり蓮さんが入って来た。
「え?何で?蓮…」
「しゃべるな。お前、一人か?」
しゃべるなと言われたので指示に従い、頷いた。
「レオンは?」
首を横に振ると蓮さんはイヤホンをするように指示してきた。
「黙って聞けよ。信じるかどうかはのんちゃんが決めて」
画面越しの蓮さんはどこかいつもと雰囲気が違って、あの夏祭りの日のように感じる。
「代返をチクったのはレオンだ」
私の表情に蓮さんは『落ち着け』と言った。
「何がしたいか知らないけど、のんちゃんの世界を小さくしようとしているのは確かだ。友達がいなくなれば今度は親か?あいつは正気じゃない。多分、のんちゃんはGPSとか盗聴器とかつけられてるよ」
蓮さんの話は理解しがたいものだった。
「恋は盲目。好きな人を見てるのも良いけど周りの意見も自分の意見もちゃんと持て。あいつはのんちゃんに執着し過ぎている気がする。何がそうさせたかは知らないけどそれ以上は俺が入るとこじゃない。俺もこの前、レオンからこのことを探ろうとしたら警告された。…自分の幸せはのんちゃんが決めて」
ひたすらに言葉を並べる蓮さんに何かを問う時間はもらえなかった。
「いいか。これはのんちゃんの人生。レオンが好きでもレオンを全て肯定する必要はどこにもないんだ」
そう言って蓮さんは画面から消えていった。
『私の人生』その言葉にどんな意味が込められているのだろう。
私は小さな頭でこれからの事を良く考えた。
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