俺とのんちゃん
蓮side
俺の人生は割とイージーモードだった。
生まれた家庭は恵まれた。
容姿も整っており、大抵のことは順調に進んできた。
そんな俺は中学に入って女と遊ぶようになった。
告白されれば受け入れて、別れようと言われれば受け入れた。
次第に俺に告白してくる人はいなくなり、体だけの関係を求める人が増えた。
「蓮、キスして」
「もっと可愛く強請ってくれたらいいよ」
この行為に感情なんて無かった。
ただ人間の三大欲求である性欲を満たしているだけ。
頭もそこそこよくて、容姿端麗。
俺を欲しがる人はたくさんいた。
そのやり方は高校までずっと変わらなかった。
呼ばれたら来てくれる都合のいい女が好きだった。
「誰か本命にしないの?」
セフレの一人がそう呟いた。
「しない」
はっきりと断言した俺に『何で?』と聞いてきた。
「面倒。そもそもセックスに愛情を求めるやつの意味が分からない。好きとかそんなんどうせ終わるし。面倒な恋愛感情よりも利害の一致が良いに決まってる」
恋とか愛とかくだらない。
どうせいつか消えてしまうものなのに縋ろうとするのは人間の本質なのだろうか。
俺には一生理解できない感情だと思った。
「あんたは人間じゃないのかもね」
「別に人間にこだわってない」
薄暗い部屋で俺達はもう一度体を重ねた。
愛とか恋とかくだらない。
そんなものよりも自分の欲求を満たすことにしか興味がなかった。
女と遊ぶことで俺のポジションは上昇していく。
欲しいと思った女に声をかければ簡単に引っかかってくれる。
こんなにも簡単な遊びに興味も薄れてきたころ、大学生活が始まった。
求めてなくても寄って来る人間をうまく使って大学での地位も形成しようと考えていた。
実際、サークルや授業で友達を作りある程度の信頼値は得ていた。
「あの子、可愛いな」
友達の一人が食堂にいる女を指差した。
みんな同じような顔をして俺に媚びるため、正直女の顔は一定以上可愛いとは思えなくなった。
「みんな同じ笑い方すんだよ。あいつもきっとそうだ」
俺に取り入ろうと声のトーンを上げて、体に触れる。
「ねぇ、何してるの?」
俺の友達はいけると思ったのか声をかけにいった。
「次の授業まで待ってます」
その顔は作られたものでは無かった。
席にいた他の女とも話が違う。
「だったら一緒に話さない?暇でしょ?」
俺が声をかけたのが意外だったのか友達は目を丸くしていた。
「え、お前、こういう清楚系好きなの?」
焦った友達は小声で聞いた。
「いや…清楚系ってか…何となく?」
自分でも何が起こっているのか分からなかった。
「別にいいですけど、私は課題の続きやるんで」
その女は友達に俺達の話し相手を放り投げて、パソコンを見つめた。
初めて出会った。
俺の会話に媚びを売らずに乗ってくれた女に興味を持った。
「名前は?」
パソコンから少し目を離して、『望愛』と言った。
「のんちゃん!SNS繋げよ」
呆れた顔をしながらスマホを差し出すのんちゃんに俺は新しい感情が芽生えた。
「蓮さん?」
SNSの名前を読み上げて俺の名前を呼んだ。
「なーに?」
のんちゃんに出会うまで女の言動は何となく予想が付いた。
しかしのんちゃんは違う。
「今度飲みに行こうよ」
「まだ飲めません」
俺の誘いを断って来た初めての女。
「付き合おう」
「無理です」
俺の告白を断って来た初めての女。
この女との出会いが俺を変えたのは紛れもない事実だった。
俺のアプローチに全くなびかないのんちゃんとの関係が続いていたある日、明らかにやばい男と出会った。
留学生だと言っていた、レオン。
初めて会った時、その目は異常な程にのんちゃんに執着していたのが分かった。
その後も二人を見ているとレオンの動きが普通ではないとよくわかる。
「へぇ、付き合ったんだ」
ゼミの友達からの話で二人が恋人という関係になったことを知った。
ムカついたのは事実だが、二人を割いても意味がないことは分かっていた。
「…失恋?」
俺がこんなにもアタックしたのは初めてで、つい笑えて来る。
この失恋を機に、もうのんちゃんのことは友達として見ようと思っていた。
「のんちゃんが代返チクった?」
ゼミの中でその話題が回った頃にはのんちゃんは大学に顔を出していなかった。
SNSの投稿も一切ない。
「けど、代返チクってメリットは?友達だったんだろ?」
俺の疑問に友達も頭を悩ませていた。
「…まさか」
問題となっている授業の教授に話を聞きに行くと、この事件の真相が明らかとなった。
「あいつ、何がしたいんだよ」
教授が代返の事実を知ったのは学校用のパソコンに送られてきたメールだと言っていた。
上手いこと誘導してそのメールを見せてもらい、俺は確証を持った。
こんなことをするやつで、不格好な日本語。
代返の密告をしたのはのんちゃんではなくレオンで間違いない。
俺はのんちゃんのSNSからレオンを探してメッセージを送った。
「まさか、電話かけてくるとは。びっくりなんだけど」
『警告です。このまま普通に生活したいのならば僕達に構わないでください。僕はただ、ノアを守りたいだけです』
電話越しに聞こえる声は少し低く、嫌気がさす。
「守りたい?孤立させることが?おかしいだろ」
少し間を開けてからレオンの舌打ちが聞こえた。
『ノアにはこの世界が広すぎます。警告はしました』
そう言って電話を切られた。
女なんていくらでもいる。
のんちゃんでなくてもセックスが気持ちい女や、金持ちな女が寄って来る。
それでも俺はあの純粋な笑顔を守りたいと思ってしまった。
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