サマーバケーション!

レオンが家にいるこの生活にもだいぶ慣れてきた。

同じ授業を受けたり、ショッピングに行ったり。

レオンの笑顔をたくさん見ることが出来た。

長い長い夏休みに入る前に待っている地獄のテスト期間に差し掛かった。

「勉強すごいです。コーヒー飲みますか?」

レオンの日本語もだいぶ上達していっている。

元々吸収能力が高いのか日に日に成長しているレオンを見ていると我が子の成長を感じる母の気持ちになってきた。

「うん、お願い」

レオンがコーヒーを入れてくれている間、マーケティングの本と睨めっこをしていた。

「ノア、姿勢悪いです」

レオンは淹れたコーヒーを私の前に差し出した。

椅子の上であぐらをしながら勉強をしていると注意されてしまった。

「はーい」

椅子から足を伸ばしてプラプラさせるとレオンは横で小説を読み始めた。

「レオンは勉強しなくていいの?」

余裕そうなレオンは私を見て『授業は理解してます』と言った。

レオンの記憶力や吸収力を分けて欲しい。

「あ、心愛ちゃん」

スマホの通知音で連絡に気付きメッセージを見た。

『地元の祭りで屋台のお手伝いしてほしくて。良かったら二人、どうかな?浴衣貸してあげる!』

詳細について送られてきたものを読んでいるとレオンにスマホを取り上げられた。

「勉強中です」

「おかんか!」

少し首を傾げる姿が可愛くて『お母さんって意味』と伝えた。

「僕はお母さんじゃないです。ノアのボーイフレンドになりたいです」

あの告白からレオンは私に気持ちを伝えてくる。

しかしレオンは私の返事を急かすことはしない。

それを分かっているから、私も返事を返していない。

とても卑怯だと分かっていながら返事をする勇気がなかった。

もしこのまま友達から恋人へと発展したら、いつかこの関係が終わる日が来てしまうのかもしれない。

そう考えてしまうのだ。

友達ならこの関係が終わることはないだろう。

「心愛ちゃんが夏祭りのイベントを手伝って欲しいんだって。行く?テスト終わってからだから行こうと思ってるんだけど」

話しをはぐらかしイベントの事を伝えるとレオンは快く引き受けてくれた。

「浴衣かぁ。何年ぶりに着るかな」

心愛ちゃんが持っている浴衣を貸してくれると言うのでテンションが上がっていた。

「その前にテストです」

心愛ちゃんに連絡を終えるとレオンは私のスマホを奪って、隣で私の監視を始めた。

授業数もそんなに多くないのでレポートの数や試験の数は少ない。

ある程度の勉強をすればある程度の成績を付けてもらえる。

そのため前期のテストを無事に終えることが出来た。

「夏休みかぁ…就活始まる。鬱」

就職活動の早期化が始まり、私達は大学3年から情報収集を始めていた。

「夏のインターン全落ち。学歴不問とは?」

私たちの大学はそこまで頭がいいわけでは無いし、世間的に見ればFランというやつなのだろう。

「学歴で勝負は無理あるわ。私は先着でワンデーインターン。オンライン開催のやつね。あれしか受けてない」

私は学歴で勝負しようなんてはなから思っておらず、大手の選考は受けるつもりがなかった。

「そう言えばあの留学生君は日本で働くの?」

「さぁ?アメリカに帰るんじゃないかな」

レオンと将来について話したことが無かったので全く知らなかった。

「そんなことより、いい加減返事してあげなよ。どうせOKなんでしょ?付き合うんでしょ?ならすぐに受け入れればいいのに」

友達の勢いに驚いたが、背中を押してくれているのが分かる。

「…そうだよね。優しさに甘えてばっかじゃダメよね。決めた。今度心愛ちゃんに誘われて夏祭りのイベントスタッフやるのね。浴衣貸してくれるし、自由時間もあるらしいからそこで返事返す!」

一度言っていしまったことは撤回できないので心に決めた。

「てか、最近仲いいね。警戒してなよ。あの子、絶対何かあるから」

私もそう思っていたが、今まで特に何も起こっていないのが事実だった。

「レオン君。望愛ちゃんの浴衣姿可愛いでしょ?」

イベント会場に着くとすぐ、心愛ちゃんに連れていかれて浴衣を着せてもらった。

「わーお、美しいです。似合ってます。写真撮っても良いですか?」

スマホを取り出してカメラを向けるレオンに少し恥ずかしかった。

「私だけの写真なんて要らないでしょ!一緒に撮ろう」

レオンの服の裾を引っ張ってお願いすると、少し屈んで一緒に撮ってくれた。

「撮ってやるよ。並べ並べ」

イベントの人にそう言われ心愛ちゃんも連れて三人で並んだ。

「私も良かったの?一緒に」

申し訳なさそうにする心愛ちゃんにレオンが『心配ないです』と答えた。

私達はボールすくいの店番となり、三人で座ってお客さんを待っていた。

喜ぶ顔や悲しむ顔を見て夏祭りの良さを感じた。

「ごめん、誰かこっち手伝ってくれない?」

焼きそば屋が人手が足りないそうで私が名乗り出るとレオンが『僕が行きます』と言った。

「鉄板熱いよ?焼きそば。こっちにいな」

暑さ耐性がそこまでないレオンはあまり気分が優れなさそうだったため、私が店を移った。

「…のんちゃん?」

「蓮さん?」

焼きそば屋で店番をしていると蓮さんと出会った。

「あいつは?」

「レオンならボールすくいの店番です」

私達が話していると友達だと思ったのか店の人がトイレに行きたいと蓮さんを中にいれた。

「焼きそば分けるだけだから、できますよね?」

パックに同じくらいの量を分ける作業を少ししていると、列がどんどん出来てきた。

「焼きそば屋にイケメンがいるとかって噂回ったんじゃないですか?」

一生懸命分ける蓮さんに声をかけながら、横でお会計をした。

夏祭りとは夏の一大イベント。

それが良い方に傾くかどうかはその人次第。

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