第一話 起きたら目の前に妖怪がいた件
「.........?」
ぱち、と目を覚ますと、目の前には5、6歳くらいの赤い服を着た小さい女の子が立っていた。
「わあああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
俺が全力で叫ぶと、その女の子は少し驚いたような顔をし、それからゆっくりと口を開いた。
「目が覚めたかと思えば私の方を見るなり、いきなり叫ばないでください。此処には他のお客様も泊まっているんですからね。」
「此処?」
するとその女の子はむぅ、と少し怒った様子で
「ここが何処なのか分からないのですか?宿ですよ、宿。この宿、座敷旅館では煉獄大通りに建っているということもあり、毎日沢山のお客様がいらっしゃられるんですよ。親切な私が、大通りで霊たちに遊ばれていた貴方を助けてあげたんですよ。」
「!?!?」
一瞬、理解が追いつかなった。反射的にばっ、と窓から外を見てみると、そこにはお化けや妖怪たちが沢山いたのだ。
わなわな、と俺は青ざめた顔でその女の子に語りかける。
「ここは何処なんだ?なんで作り話にしかいないはずの妖怪が大量にいるんだ?俺はこの先どうなってしまうんだ!?!?」
「....一度に私に質問しないでください。場所は先程言った通りです。妖怪といえば私もそのグループの内に入ります。座敷童子です、確か人間の間ではかなり有名な方だったはずですよ。ですから貴方がこれからどうなるかなんて座敷童子には分かりません。」
注意されてしまったが、ご丁寧に順番に全ての質問に答えてくれた。
普通に考えればありえない状況だが、目の前に本物がいる以上、認めるしか無い。
「少し気分が落ち着いてきた、ありがとう。ところで、妖怪の中には、俺たちを食べる奴もいるのか?」
このような質問をしたのは昔俺が持っていた妖怪図鑑に、人間を食べるなどと説明書きされた妖怪が載っていたからだ。意識を失っていた状態の俺が霊たちに遊ばれていたと聞いて、少し不安になったのだ。
「基本的に、妖怪達が人間を食べたりするようなことはありませんよ。そんなことをするのは、常識はずれの奴だけです。」
「良かった...」
「とはいえ、この世界には怪異と呼ばれる人間にも妖怪にも害をなす存在がいるので、油断大敵ですよ。あいつらは妖怪に外見こそ似ていますが、知能はほぼ無いに近く、動いているものを見ると相手がなんであろうと襲ってくるんです。時々そのせいか、怪異同士が戦っていることもあるらしいですよ。ここは街なので安全ですが、外に出れば怪異達が蔓延っているので十分に注意してくださいね。」
「分かった、忠告ありがとう。ただ、俺今この世界のことを知ったばかりで、これからどうすればいいのか本当に分からないんだ。何かアドバイスをくれないか?」
「記憶喪失かなにかですかね....。まあ良いです、もし人間に会いたいというのであればここから数キロメートル先の人間の国へ向かえば良いですよ。」
すると、座敷童子の女の子が地図とお守りのようなものを差し出してきた。
「これはこの世界の地図とお守りです。地図はあくまでもざっくりとしたものなので細かいところは書かれていないですがね。絶対に無くさないようにしてください」
俺はそれをおずおずと受け取る。
「随分とサービスが良いな。言っておくが、俺は通貨も何も持っていないぞ?」
ーー何かお守りに仕組まれているかもしれない、そう一瞬思ったが、相手は座敷童子。座敷童子は確か人間と友好的な関係だったはずだから、信用してみるという手も悪くない。
「別に何も求めて無いですよ。拾ってしまった私に責任はあります」
「そんな捨てられていた子猫を拾ったみたいな感じで言わないでくれるか?」
「.....色々ありがとうな、次会った時は礼をさせて貰いたい。俺はそのために今からその人間の国とやらに行ってくる!」
そうして部屋を出ようとした時、座敷童子の女の子にがっ!と下ろしていた方の腕を掴まれ、にこにこしながら俺に話しかけてきた。
「人間の国に行くんでしょう?今のうちにエネルギーを蓄えてから行った方が途中で力尽きずに済みますよ。」
ーーーー客人でもなんでも無いのに結局、ご飯までご馳走になってしまった。今度会ったら絶対お礼しよう。ご飯に毒とかは入ってなかったし、このお守りもやっぱり付けていこうかな。
そう思いながら、俺は着用していたショルダーバッグにお守りをつける。
服装は何故かマンションを出た際の時と全く同じだからショルダーバッグも一緒についてきたのだ。過去の自分、ありがとう。
からんからん。
「では、気をつけて行ってくださいね。」
「そういや、お前なんていう名前なんだ?」
名前がなければ、その本人かどうか確信が持てないから、お礼がしずらい。
座敷童子の女の子は少し不意を突かれたような顔をしてから、
「座敷童子に名前なんてものは無いですよ。」
と言った。
去り際に俺が言う。
「じゃあ今日からお前の名前はあき子だ!」
「勝手に変な名前付けないでくださいよっ!!」
彼女がそう言った時にはもう俺の姿はなく、虚しく空に響いただけだった。
ギィ....。
ゆっくりと扉がしまる。
「さっきの言葉、ちゃんと受け取ったよ?またいつか必ず会いに行くから、その時はーーー」
にっ、とその女の子はひそかに笑っていた。
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