第20話 三河改革 1
とりあえず今川義元様から三河統治は俺に任せるという言質を頂いたので、貧困している三河を一等国に押し上げるつもりで頑張ろう。
岡﨑城に入った俺は、城を任されていた朝比奈泰朝の親父殿との引き継ぎを終え、ようやく本丸に入ることができた。
4年ぶり……そう考えると短いな。
まぁいいや。
大広間に家臣達を集めて挨拶をしていく。
鑑定で名前は確認できるが、顔を覚える意味でも1人1人挨拶していく……。
本多本多本多大久保大久保大久保鳥居鳥居……。
一族経営が基本とはいえ、本多、大久保、鳥居の名字の者が多い事……将来は水野一族とかを国衆連中を吸収したら松平の名字の者も増えるんだろうけど……。
鑑定の能力あってよかった……名前覚えるの大変だわ……。
そんな三河武士達の能力は……正直に言うと低い。
武力は高い者が多いが、それでも70前半で、統率は平均50前後、知略や政務に至っては30台がゴロゴロ……よく史実の徳川家康はこんな家臣状態から立て直していけたな。
勿論光る者もちゃんと居る。
俺と年が近く若輩の者は比較的能力が高い。
まぁそれでも年齢で見たらという感じであるが……。
今から育てればまだ間に合うかもしれないので、俺が岡﨑に来て最初にやったことが、元服したての者や元服前の少年達を人質や小姓として岡﨑城に住まわせるようにという命令をしたのである。
家臣達は人質などしなくても松平に忠誠を誓いますと言うが、そうではないと宥めた。
俺自身人質として織田、今川という大きな大名の下で色々な事を学び、その学んだ事を俺と将来を長く共にしていく者達に文武を教え、学ぶことで松平の将来の躍進の為に学びの場を提供したい、その為には長く岡﨑に居てもらう必要があると伝えると、三河武士の家臣達は主君が我々の息子達をそれほど大切に思っているのかと感激して、次々に人質もしくは小姓にと息子達を差し出した。
人数にして50人近く集まったので、俺は菅原道真公と鞍馬に徹底的に教育を行うように指示を出し、二の丸に学び所という学校の教室の様な屋敷を作った。
更に教育の質を高めるために俺も鑑定で初めて知った超マイナー英雄である快元というお坊さんを召喚した。
快元さんは関東にある足利学校という施設の校長をしていた人物で、衰退してボロボロだった足利学校を1代で坂東の大学と呼ばれるくらい日ノ本一の教育機関に導いた人物である。
これより前の足利学校は坊さんが運営していたので仏教色が強く、覚えるべきことに仏教の経典等もあったのだが、それを廃止して、仏教色を取り除き、実用的な勉学と儒教関係に教えることを絞ったり、敷地内に学生や職員で畑を耕し、薬園や薬草園を作ったりと現代で言うところのカリスマ教師みたいな人物である。
英雄の人物は比較的若く召喚されるが、快元さんも20代前半の姿で召喚された。
「いやはや、私の様な者を召喚していただき感謝します。使い道がなくて死蔵されるのとばかり思っておりましたが」
「いやいや、無学で申し訳ない。これほど立派なお坊さんが居たとは……」
「僧ではありますが、私は教育者として扱ってもらえたら幸いです。で、私は誰を教えればよろしいでしょうかな?」
「俺の家臣達に快元さんの知識を教えてほしい。菅原道真公と鞍馬天狗も居ますので、3人で教える内容を話し合いながら行ってもらえれば……」
快元さんは少し考えた後に
「では将来教師を育てるための学校を作ることをお許しください」
「教師を作る学校ですか」
「ええ、足利学校では来た者は意気込みが有れば無銭で学ぶことができていたのですが、足利学校を各地に広めるということはできませんでした。なので教師となる人物を育て、私塾を幾つも開かせていき、質の良い場所は学校として昇格させ、民の質を上げていきたいのです」
「俺としても優秀な人材が増えるのであれば願ったり叶ったりだからな。まぁ最初は俺の家臣を育てるので我慢してくれ」
「ええ、わかりました」
こうして学問の神様、武神、そしてカリスマ教師という最高の組み合わせの教育機関が誕生し、松平家を人材の宝庫へと成長させていくことになるのだった。
「おやおや、すっかり私の事は忘れたかと思っておりましたが」
「いやいや多月、君を忘れたこと等無いよ」
俺が織田や今川に人質に行っている間に三河に広めるための作物を育ててくれていた。
「あ、竹千代じゃんおひさ!」
「お、久しぶりですね竹千代」
「埴安に少名もお久しぶりです。元気にしていましたか?」
「もちもち!」
「ええ、結構自由にやらせてもらいました。我々で改造した村を見ていきます?」
「ああ、紹介してくれ」
俺は3人に連れられて村を巡っていく。
まず目に付くのは水車の数だろうか。
無数の水車が動いていて、村の畑に水を供給していた。
「うちが作った水車小屋だよ! 中はこんな感じ」
埴安が作った水車小屋の中は木槌と臼を連結して精米する装置だったり、アブラヤシから油を抽出するための圧搾装置、小麦や蕎麦などを粉するための製粉装置が連結して動いていた。
「この水車小屋が動くことで周囲には水を供給しつつ、動力として稼働していたよ。今後はガラ紡っていう紡績機だっけ、前に鞍馬天狗が運んできた奴の複製をしているから待っててよ」
「ん? 紡績機を作るのは良いが、肝心の糸となる物はあるのか? 麻で作るわけにもいかんだろ?」
「ふっふっふ、少名っちが木綿の種を入手してここで着実に株を増やしているんだよね!」
「なに! 本当か少名」
「ええ、偶然ですが三河の商人が木綿の種を売っていて、買えるだけ買ってきたのですよ。和綿と呼ばれる種類で、西洋の紡績機には使えないけど、ガラ紡とは相性が良いって埴安も言っているよ」
「そうそう! ガラ紡で紡ぐ糸としては最適だね。木綿の量産ができれば着物の値段は大幅に下がるんじゃないかな? 安価な布が出回るのは良いことでしょ?」
「そうだな。着る物に困っている人達も多いし、木綿は三河の産物に将来なる物だから、前倒しして育てれば領主としても貴重な収入源になるだろう」
「おけおけ! 量産できるように改良しておくね!」
「ああ、頼んだ」
水車小屋から出て、畑を見に行く。
今の季節は冬なので大根とかの冬野菜が植えられていたり、秋植えの小麦やじゃがいもが育てられていた。
「4年で輪作の記録は取れはった。連作障害も起きず、収穫量の維持はできてはるよ。特に鞍馬はんに持たせてくれた緑肥となる原料の種は良かったんちゃいますかな。クローバー、燕麦、ヒマワリ……クローバーと燕麦は家畜の餌に、ヒマワリは絞れば油になりますし、肥料としても優秀でしたわ」
多月が作ってくれた資料を見ながら収穫量の推移を確認する。
それぞれ1反当たりの収穫量が載っていて、肥料を投入するとこれぐらい収穫量が変わるというのも載っていた。
基準として1石を150キロとする。
まず米は1反で肥料無しだと3石、肥料有りだと4石の収穫量となっており、戦国時代での1反の収穫量は1石程度なので3倍から4倍になる。
以後は肥料有りを見ていくが、小麦が3石、大豆が1石と4分の1、蕎麦が半石、稗が4石半、とうもろこしが生食及び加工用が7石、家畜の餌用が17石、じゃがいもが20石、薩摩芋が16石、かぼちゃが13石となっていた。
他の作物も既存で育てるやり方より収穫量は2倍から4倍増える統計が出ていた。
「私達の所で教え込んだ管狐達が各村を巡って松平様の教えということで色々な作物を教えているけど、評価は疎らだよ。まぁ収穫量が増えたら自然と教えが広まっていくんじゃなんやない?」
「各村で特産品にしてしまった方が良いか?」
「換金性の高い作物はそれでもええんやない? ただ穀物類は制限かけんほうがええと思うで」
「とりあえず地道に広めていくしかないな。まぁ広まれば三河の一次産業は凄い活性化することになるから……酒なんかに加工して多方面に売り込むか」
「まぁそこら辺は松平のやることやね。私らは引き続き作物作って、弟子に広めていくわ」
「よろしく頼む」
「はいよー」
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