旗本の家に生まれた佐竹伊織。
彼は叔父の養子となり、叔父の役職であった目付けを継いで、旗本・御家人の行動を監視する日々を送っていた。
そんなある日、三年前に剣術修行のために江戸に向かった友人・大橋辰之助が帰ってくる。
伊織の、幼いころからの想い人だ。
その密かな想いを知っているのは、婚約者の小園だけだったが、そんな彼女も流行病で亡くなってしまった。
辰之助と再会を果たし、伊織の想いは再び動き出す。
しかし、そんな伊織の行動に鋭い視線を向ける者がいた――小園の兄、孫四郎だ。
江戸時代を背景に、道ならぬ恋を描いた本作。
静謐で無駄のない文体、登場人物たちの会話のどれもが、この時代の雰囲気をぞんぶんに味わえることができ、また細やかな設定に作者様の造詣の深さを感じざるを得ません!
さらには、ドキドキの展開が随所にちりばめられております。
伊織と辰之助の恋にドキドキし、目付け役の伊織が他者から監視されるというサスペンスにドキドキし……心臓が高鳴って仕方がありません!
それだけでも素晴らしいのですが、伊織と秘密を共有してきた小園の存在により、とても深い人間ドラマを創り出していると感じました!
素晴らしい作品です!
是非とも、ご一読ください!!!