第三十話「操る者、操られる者」

「なんとかなった......」  


 ハーザムをなんとか倒しその場に座る。


「ケイどの、今の魔法は! すごい威力でした!」


 壁に空いた穴をみてリオネがいう。


「ああ、アンデッドジェリーフィッシュが体を圧縮して、触手を伸ばしたように、魔法も圧縮してはなったんだ」


「それであの威力か...... すさまじいな」


 ザークはうなづき納得している。


「すごいわね。 私にも教えてよ!」


「ああ、帰ってからね。 でも今は」


「ハーザムと話していた者の事ですね」


「何者だろうか...... どうやらその者の力でハーザムはあんな姿になったようだが......」


(確かに、明らかにその背後に潜む者がいる......)


「ただ今はこの国のことだ。 早く帰ろう。 城の宝玉も危ない」


 私たちはダンジョンよりかえった。



「やはり、宝玉は奪われたあとですか......」


「ええ、宝玉だけなくなっていました」


 そうハルシェン女王はうなづく。 私たちがダンジョンより戻ったとき、ガルギア王たちは城を包囲していたモンスターを一掃していた。


「ハウザーとハーザムを操る者か...... そして奪われた宝玉」


 ガルギア王は考えるように呟く。


「ええ、ですがこの件で皆さま方には感謝しきれないほどです。 ありがとうございました」


 そう女王は改めて礼を述べる。


「これで四種族間の絆が深まりました。 なにかあれば皆で協力できるでしょう。 それは喜ばしいことです」


 ガルギア王がそう応じるの、その場の四種族の皆がそうつなづく。


 これを機に四種族間の同盟が結ばれ、各部族は守りを固めることを確認した。


「ケイどの。 どうされました」


 リオネがそうきいた。


「宝玉を奪われている事が気にかかるんだ。 種族ごとに持っているならゴブリン族のところにもあるはず。 ビケルさんに聞いてみよう」


 私たちはビケルさんにあいにゴブリン族のもとへと急いだ。



「宝玉...... ああ、確かにありました。 それは白い宝玉でした。 それはかつて儀式に使いダンジョンに封印したそうですな」


 ビケルさんはそういった。


「儀式とは?」


「はい、あの宝玉を使い、他の種族からの防衛をしておったようです。 しかし強い力には反動がつきもの。 使用にも犠牲がおおく。 さらにはモンスターの襲撃を招き、それゆえ封印したそうです」


「それが宝玉......」


「それはいまのどこにあるの?」


 ティルレがきく。


「ええと、東の森の中のはず......」


「どうされますかケイどの?」


「そうだね。 取りあえず確認だけしておこうか。 もし宝玉がハウザーたちの狙いなら、ゴブリンのものも狙うはずだ」


 私たちはゴブリンの宝玉を調べにクルスとともにむかった。


「クルス、授業があるのにすまない」


「いいえ、他のものに頼みましたから大丈夫です。 それにどうも嫌な予感がします...... ゴブリン族にも何か起こるのではと」


(確かに...... その何者かは、魔力の宝玉を集めている。 なにかに使うのだろうが間違いなく渡すのは危険だな)



「ティルレどうだ?」


「うーん、深い森だからね。 みえづらいけど...... あっ! あれかも」 


 ティルレが空から降りてきた。


「この先に丘のような石があったの。 あんな自然石はみたことないわ」 


「よし、いってみよう」


 そこにはドーム状の大きな石がある。


「確かに自然でこんなにも丸くはならないな...... かなり厚い」


「......ケイどの」


 リオネが裏側から呼んだ。


 行くと裏には大きなこじ開けられたような穴がある。


「これは......」


「先に行かれたようですね」


 クルスが剣の柄をにぎる。


「......ああ、気をつけていこう」


 私たちは開けられた穴から地下へと降りていく。 地下はやはり人工的につくられた通路のようでまっすぐに奥へと続いている。 


「魔力が濃い。 なのにモンスターはいないのが不気味です」


「......ああ、だがモンスターを操れるならこの状況も理解できる」


「そうか、それでモンスターがいないのか」


 ティルレが真剣な顔でそういう。


 通路の奥へとすすむ。


「これか......」


 大きな部屋の前で声がする。 ゆっくりのぞくと祭壇の上でハウザーと人狼族数人、従えたであろう無数のモンスターがいた。


「ハウザーさま。 本当にあの者言うことを信じられるおつもりですか。 ハーザムも死んだようですぞ」


 部下らしきものがそういった。


「......あやつがこちらを利用としようとしてるのは知っている。 それなら逆に利用するだけだ。 この宝玉がこちらの手にあるうちは、やつもこちらを裏切れぬ」


 そう手にした水晶をみている。


(あれはハーザムの持っていたやつか)


「キュオォ......」


 突然そばで鳴き声のような音がした。 クルスが切りつけると、それは地面に落ちた。 それはカメレオンのようだった。


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