第二十九話「裏切りの果て、魔力の獣」

 私たちはザークの案内でモンスターを避けつつ、中央にあるというダンジョンのある場所にきた。 そこは湿地帯の真ん中で巨大な枯れたマングローブの森だった。


「ここか、確かにモンスターがでてきている」


「ああ、ここは封印されていたが、おそらくハウザーとハーザムが封印を破壊してモンスターを溢れさせたんだろう」


 ザークは怒りに満ちた顔でそういう。


「宝玉をえるために...... か、しかし、宝玉をなんのために集めているんだろうか」


「まあ、よくないことじゃない事だけは確かね」


 リオネにティルレがいった。


(宝玉...... なにか魔王に関係することなのか。 そもそも魔王の情報が少なすぎる。 ただ、いまは先にやることがある)


「......もしかしたらハウザーたちがひそんでいるかも知れない。 気をつけて進もう」


 私たちは森へとすすむ。



「やはり、魔力がこい。 しかもモンスターたちも強いな」


「ああ、ダンジョンのもとをたたないと、このまま増え続ける。 しかしダンジョンがどこなのか、目印が消えている」


「枯れたマングローブがうっそうと繁って、空からもダンジョンの位置がわからないよ」


 ティルレが空を飛びながらそういった。


「では私が試してみます。 風よ! 舞いおどれ!!」


 突風がふくと風が竜巻になりモンスターと、マングローブを削り取っていく。


「リオネ、すごいな......」


「ええ、私も皆さんとおなじく新たに魔法を考えていましたから」


「あそこだ!」


 ティルレが指差すほうに地下へと続く穴があった。 そこは人工的につくられた通路のようだ。


「そもそもここのダンジョンはどんないわれなんです?」


 リオネがきく。


「はるか昔から存在していて、かつてのリザードマンたちは戦いのために、ここで何らかの儀式をしていたという」


「リザードマンが儀式を......」


「なにかはわからないが、そのあと多大な犠牲を払って封印したといわれている」


 そう地下へおりながら、ザークは話を続けた。


「そういえば、我が国もダンジョンでなにかの儀式をしていたという話はありますね。 そこは石で固めてしまったとも......」


「ザルドラもか......」


(儀式、なにをしていたんだ......)


「なにか来る!」


 てティルレ蛾さけぶ、みんなが武器をかまえる。 奥からモンスターが次々とでてきた。 


「水よ!!」


 ザークが水を放ち吹き飛ばしていく。


「ザーク、みんな、あまり魔力を使わずにすすもう。 なにがいるかわからない」


「はい」


「わかった」

 

 私たちは通路を先へとすすむ。 



「ここが最深部か...... あれは」


 部屋をのぞくと、奥でリザードマンとみられる人物が水晶を覗き込んでいるのがみえた。


「あれはハーザム!」


 ザークがそういった。


「元宰相か...... 一体なにをしている」


「......ええ、すでにハウザーが城へと向かい、宝玉を奪い取りに向かいました」


『......そうですか』


(誰かと通話している...... ハウザー以外に誰かが裏にいたということか)


「このままどうしましょうか?」


『そのまま、モンスターをつくり続け、その国を落としてください......』


(ちいさい声だがなんとか聞き取れるか)


「し、しかし、それでは私が支配する国が復興できぬほどに......」


『できない...... と』


「い、いえ、ですが......」 


『そうですか...... あなたの役目は終わったようです』


「そんな! 話がちがう! あなたは力を貸せば、この国をくださるとおっしゃったから!」 


『そうですね、国は差し上げましょう。 国を......』


 水晶が黒く染まり輝くと、そこから黒い霧がでてハーザムを飲み込んだ。


「な、なにを!! うわあぁぁあ!!!」


 水晶は砕けちり、床にころがり悶え苦しむハーザムの肌は黒く変色して、体が歪に大きくなる。


「ガアアア!!!」


 竜のような姿になったハーザムは体に黒い霧をまといながら暴れまわり、落ちてきたモンスターを食らい始めた。


「なんだあれは!?」


「モンスターのようになった!」

 

「もはや、話ができる状態ではないですね!」


「止めるしかないだろう! みんないくぞ!」


 私たちは魔法でモンスター化したハーザムへと放つが、効いてはいないように前へとでてくる。


「魔法が効かないのか!」


「俺がいく!」


「私も!」


 ザークとリオネが剣をふるい竜のようになったハーザムと対峙する。


(二人が抑えてくれているうちに、対処を...... 魔力であの姿になったのなら、魔法が効かないとは思わない。 だとするとあの黒い霧が拡散か軽減しているはず......)


「ティルレ、あの黒い霧を溶かしたゴーレムで包めるか!」


「えっ!? わ、わかったやってみる! ゴーレム!」


 ティルレは石鳥のゴーレムをつくり、それをハーザムにぶつけ溶かし固めた。 黒い霧はそのままハーザムとくっつく。


「よし! 光よ溶けろ!」


 両手で大きな光球をつくり液体のようにする。


「縮んで放て!!」


 それを圧縮して放った。


 圧縮された光はレーザーのようにハーザムを貫く。


「ガアァァァァアッ......」


 ハーザムはその場に倒れ伏した。 



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