第22話 銃は剣よりも強し?

「ちっ、不意打ちなのに避けれんのかよ……マジ速じゃん」


 俺の放った『轟響の夜明けレコ・ラ・ローヴ』の弾丸は目の前の人物には当たらず、すぐ避けられてしまった。


 アイツで間違いないよな? 間違ってたらホントにゴメンなんだけど、まあクロっちに剣向けてたしあってるはずだ。


 そこそこ長い白髪が絹織物のように光を弾く。左右ひとつずつの大きな数珠で両サイドの髪を束ねていて、それも光を反射して全体的にキラキラしている。


 服装は……なんというか、白いネオ和服とでも形容できそうな感じで、決して派手ではないけれど、西欧の工芸のように緻密な装飾がなされている浴衣もどきだ。


 確かに『純白』だな……アルビノ、ではなさそうだが。


「来たのか!」


「ミングルがすごい音がするってーから様子見に来たんだ。アイツは来てないけど」


 来てくれよ……。


 少女が剣を何度か握り直した。


「……私は無為に人を斬るつもりはない」


「俺はお前を撃つつもりだ」


「……」


「お前があれだろ、前の枯渇騒ぎとかの元凶って話だし、一応聞くけど合ってるよな」


「……元凶、か。そういう見方もできるだろうな」


 まあ撃つつもりとか言ったはいいが、勝てる気がしないんだけど。……もしかしてこれミングルとか星胡とか呼んできたほうがいい感じ?


 いや、弱気になったって仕方ないな。頑張ろう。


「仕方ない。……せめて、穏やかに眠れ」


「っ、お断りだ!」


 速っ……!


 俺の目の前でガキン! と鈍い金属同士の衝突音が轟く。『轟響の夜明けレコ・ラ・ローヴ』と少女の剣がぶつかりあった……パリィ成功だ!


「知ってるか!? 剣は振るしか脳がねえけど銃は弾飛ばせんだぜ!」


「遅い」


 ――シュバンッ!


 はっ、遅いっつったってこの弾丸を相当警戒してるっぽいけどな……。まあそりゃそうだ、かなりの威力があるし。


 こいつの皮膚が、あの巨人ほど頑丈でないことを祈っておこう。


「……【雨が降る時】、【下手に魔道具を扱おうものなら】」


「!」


 藤が舞った!


「【それは周囲一体を吹き飛ばすかもしれない】な」


「これはニルちゃんが丹精込めて……か知らねえけど準備してくれたやつだぜ。そう簡単にぶっ壊れてたまるか。ていうかこれ壊れたら俺死ぬし」


「……」


 藤の花のエフェクトは魔法発動のサインか? たくさん散った花びらはやはり幻覚の代物みたいで、地面の水たまりに沈むと溶けるように消え失せた。


 とはいえ……ひとつ、気にかかりはしたが。


「声の『響き』……ヤマカンだけど、声で何か操作する能力か?」


「……」


「おっと――!」


 答えてくれたっていいだろ! いや俺でもたぶん手の内を開示する気はないけど!


 ぶん! と風を切り裂く激しい音が耳に届く。すぐさま反射的に、避けるっ!


「……貴様を、甘く見ていたようだ」


 あれぇ、俺ってここまで反射神経すごかったっけっか……?


 若干シャツの袖が切られてしまったが、それ以外は左腕に軽く傷がついただけだ。刃に毒でも塗ってあったらまずいけど、今のところ問題はないみたいだな。


 すぐさま銃の引き金を引く――考えるよりも先に動くんだ!


「……!」


 幸い、弾切れの心配をする必要はない。市街に被害がバカバカ出ることに目をつぶってしまえば、まったく心配すること無く攻撃の継続ができる!


 次々に弾丸に射抜かれた石畳が砕かれ、小さな無数の石片が空中に飛び散った。


 少女もこっちの弾丸を警戒してか、ヒットアンドアウェイのような戦法になっている。とはいえ――。


 魔法攻撃はしねえのかな? ほらこう、火の槍とか。されたらこっちもだいぶ困るってのはあるけど……この弾丸で打ち消すことはできるんだろうか?


 ――できるのではないかな。


「だが、私は先に忠告したはずだ」


「……忠告?」


 表情を変えないまま、凍てつく氷の棘のような冷たい声を放つ少女。


「『それは周囲一体を吹き飛ばす』――と」


 その声に呼応するかのように、バチチッ――と耳障りな音がした。

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