第6話 残響
時代が変わり、スマートフォンが人々の生活の中心に定着しても、裕平の「居場所」はどこにもなかった。
SNSは華やかな言葉と映える写真で満ちていたが、そこに彼が割り込む余地はない。
彼のアカウントには、かつて「ネットミームの残りカス」として残ったわずかなフォロワーがいた。だが彼は返信を受け付けない設定にし、コメント欄も閉じ、徹底的に他者の声を遮断した。
誰かと交わることを恐れ、ただ一方的に発信するだけの孤独な発信者。
彼のタイムラインには、自撮りに失敗した暗い部屋の写真や、支離滅裂なつぶやき、時に「俺を笑ってみろ」といった挑発めいた言葉が積み重なっていった。
そんな中、またしても「俺オナ民」の影が忍び寄った。
匿名の残党は、ネカマの仮面をかぶり、甘ったるいメッセージを裕平に送りつけた。
「あなたのこと、ずっと見てました」「会ってみたいな」
裕平は、心の奥で警戒を覚えながらも、その文字に抗えなかった。
夜ごと、DMは続いた。愛を囁く言葉、欲望を掻き立てる文面。
やがて裕平の返答は、羞恥と切実さの入り混じった滑稽な文章になった。
――その全てが、スクリーンショットとして切り取られ、SNSの海へと投げ込まれた。
「また釣られてるぞ」
「進化しない生き物w」
炎上はかつてよりもさらに速く、広く広がった。
裕平は画面を食い入るように見つめ、指を硬直させながら更新ボタンを押し続けた。心臓が圧迫されるように鼓動し、皮膚の下で蠢く違和感はもはや痛みに近づいていた。
――まるで、彼自身が“晒し者”として変容していくことこそが、この世界の必然であるかのように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます