果てしない宇宙。
灰色の船内にひとり目覚めた少年は、ただ「ログ」を書き続ける管理人だった。
名前も、過去も、家族の記憶すら奪われたその役目に、彼は何の疑問も抱かない――はずだった。
けれどある夜。
意識の底に沈んでいた「何か」が、静かに揺れ始める。
潮の香り。焼けたアスファルト。
白いセーラー服の背中。交わした言葉、すれ違いの痛み。
そして、空へ飛ばした夢――ロケット。
科学と感情、宇宙と記憶、孤独と再会。
そのすべてが、切り離されたはずの記憶を呼び起こす。
一人の少年が思い出すのは、「誰かと過ごした夏」の断片。
これは、宇宙という棺に眠る魂が、
もう一度「青春」という名の地球を目指す物語。