危険魔法は危険すぎない!?~何かを失う代わりに得る魔力~ / 国府春学

ジャンル:児童文学/少女向け

URL:https://kakuyomu.jp/works/822139836230471978

作品PR:魔力を得るためにだいじなものを奪われる少女たちの、成長ストーリー

批評公開日:2025/10/15

対象話数:第9話 迄(10,801文字)



【三行あらすじ】

小学五年生の頃、親友で飛び級クラスの天才少女・れおなちゃんから魔法を教わった千瀬。

紆余曲折あり、二人は一流魔法使いを目指すべく、魔界の専門学校へ!

大切なモノを失った彼女達の、危険なファンタジー作品。



◉ 発想力 ◉

《GOOD ◎》

二人の少女が一流魔法使いを目指すべく、魔界の専門学校で奮闘する作品。

《BAD △》

設定を書きながら考えたような後付け感が窺える。生物や無機物に専用アプリをインストールし、それを媒介に魔法使いとして契約する——という設定が第1話に登場するが、それが物語に活かされている様子はなく。同級生や先生の反応から、人が魔法を使えるのが割と一般的な世界観でありながら、それが日常生活などに取り入れられている様子もなく。あげく、唐突に登場する『魔界』という場所。何と言うか、種類も材質も違う積み木をとりあえず積んでみただけ、という感覚。また、主人公たちの目標である一流魔法使いが一体どういうものなのか、の具体性も示されない。

充分に練り込んだ土台と、完成イメージの見える化が必要。


◉ 人物像 ◉

《GOOD ◎》

子供らしい無邪気さや無謀さなどは描かれている。

《BAD △》

登場人物たちの性格面に欠点が多すぎる。脇役のみならず、主役二人ですらマイナス方向の性格な為、共感が難しいキャラ造形になっている。魔法使いになった際の代償として失われた部分もあるが、だとしても後ろ向き過ぎる。

また、主人公・千瀬のキャラ設定や軸がブレブレ。ネタバレになるので詳細は伏せるが、設定と思考が矛盾している箇所があったり。一緒に一流魔法使いを目指させる為に親友の飛び級での大学受験を妨害しておきながら、自身は魔法使いになれなかった時の保険として学校に通い続けるべきかと悩む描写があったり。「悪いことに魔法を使うべきじゃない」と考えていたかと思えば、平気でお金を魔法で生成したり、魔法で召喚したライオンをけしかけたり。行き当たりばったりの性格、あるいは物語を進行させる為の道具のように見える。


◉ 表現力 ◉

《GOOD ◎》

人物の容姿描写は詳細に描かれている。児童文学として、ひらがなが多めな文章。

《BAD △》

漢字にする・しないの基準が不明瞭。「むずかしい(小六)」「かしてあげる(小五)」などが平仮名で小学校低学年向けを想定してるのかと思いきや、「髪」「殿下」「披露」など小学校で習わない漢字をルビも無く登場させている。児童文学だから難しい漢字を使うな、という訳ではなく、児童文学を通して新しい漢字に触れさせる機会を与え、キッチリふり仮名を振るのも優しさ。

また、情景描写も曖昧。第6話より、魔界の様子を説明した一節を抜粋「一流魔法使いや生まれつきの魔界の人は、寝なくても平気だから、こっちの世界はいつも昼だけど。千瀬たちのいる世界とちがって、一日中満点の星空で、季節のかわりめとか何かの日だけ、空の色が変わるようになっているらしい。」語順の影響もあるが、昼なのに一日中星空、という矛盾。そして何より、この一節しか魔界の情景を示す描写が登場しない。発想力の項でも述べましたが、描写の薄さも設定の浅さを窺わせる要因になります。


◉ 構成力 ◉

《GOOD ◎》

各話1,000文字強で構成されており、文量の統一感はある。

《BAD △》

人称視点がちぐはぐ。三人称視点の皮をかぶっていながら、千瀬目線になっていたり、れおな目線に変わっていたり。小説と呼ぶより、一コマ毎に視点や心情が切り替わる漫画表現に近い。絵で示せる漫画と違い、小説でやるには都度工夫が必要で、読者に読む負担を強いる構成になっている。

また表現力で前述したように、文量を抑えてある分、情景などの説明が疎かになりがち。読者に補わせる行間が多くなり過ぎている。


◉ 展開力 ◉

《GOOD ◎》

魔法を教わり、二人で一流魔法使いを目指し、その為に魔界に住居を構え、専門学校へ体験入学をする……。一万文字までで、ストーリーは確実に進行しています。

《BAD △》

発想力・人物像の部分で書いた通り、展開が行き当たりばったりに思える。「二人で魔法使いを目指させるエピソードを入れよう」「一流魔法使いになるための修行の場として魔界を作ろう」「そのついでに専門学校も」「現実の義務教育設定が邪魔だからキッカケを作って辞めさせよう」そんな意図が透けてくるような展開の薄さがあります。無人の荒野を道も引かず、裸足で歩いてるような印象。その結果として、キャラ設定に矛盾が生じたり、目標が不明瞭だったりしているように思えます。

まず書きたい方向性を明確にしましょう。


【総合評価】

     ■:発想力

     ■:人物像

    ■■:表現力

     ■:構成力

     ■:展開力

      54321

    ⭐︎★(1.2)



【コメント】

人物の容姿描写は丁寧でした。しかし物語の内容が薄く、その上でキャラクター達が作品の傀儡かいらいみたいな扱いに見えたのが非常に残念。発想力か、人物像か、そのいずれかに魅力を持たせられれば、読んで楽しめる作品になるはずです。



作品名:危険魔法は危険すぎない!?~何かを失う代わりに得る魔力~

著者:国府春学

🔗https://kakuyomu.jp/works/822139836230471978

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