第10話: 都市型テロと「国民の党」への跳躍
天城を奪った凶弾から、わずか三ヶ月。
日本はまだ傷を癒やしきれぬまま、新たな混乱に巻き込まれていた。
渋谷の繁華街。
週末の雑踏を突き破るように、爆発と銃声が轟いた。
叫び声、炎、逃げ惑う群衆──実行犯は数名の外国人武装グループ。
SNSで扇動された若者や不法滞在者も暴徒化し、渋谷は一夜にして戦場と化した。
ニュースは繰り返し映像を流し、政府(民自党)は狼狽え、対応の遅さが批判される。
「観光立国だの国際共生だの、結局は無防備じゃないか!」
国民の不満は爆発寸前だった。
******
そこに、大和未来党と響命教の姿が現れる。
教団の医療チームが即席の診療所を開き、信者たちが炊き出しを行う。
警察の混乱をよそに、津守新は防衛省幹部や自衛官と並んで現場に立った。
「この国を守るのは、ここに立つ者たちだ!
血を分けずとも、心を共にする者は我らの同胞だ!」
その言葉は、暴力に疲弊した人々の胸に真っ直ぐに響き渡った。
現場にいた若き自衛官たちは、制服姿のまま深々と頭を下げ、国民もまた津守の姿に喝采を送る。
******
支援活動の列の中、美央子もいた。
19歳になった彼女は、もはや少女ではなかった。
白い腕章を巻き、避難者に毛布を配り、泣き出した子どもの背を撫でる。
カメラがその姿をとらえ、SNSでは「第二の光」と拡散されていく。
けれど彼女の表情はふと翳る。
瓦礫の向こう、燃えさかる街を見つめながら、誰にも聞こえない声でつぶやいた。
「……どうして、平和はこんなに遠いの……?」
その声は、雑踏の中に吸い込まれ、誰の耳にも届かない。
ただ、彼女の胸の奥で静かに残響した。
******
夜のニュース。
各局が「無能な政府」と「行動する未来党」を対比的に報じる。
同時に、海外では「東亜連合」の軍事演習や「大洋国」の経済制裁準備など、不穏なニュースが相次ぎ、国際情勢の緊迫が強調されていた。
画面に映るのは、津守と美央子が並んで被災者を支える姿。
ナレーションが告げる。
「日本の未来を導く新たな力──大和未来党。その名は、いまや全国民の口に広がろうとしている」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます