エロゲー世界のNTR野郎の俺が、なぜか女性から守られている?
イコ
第1話 転生
艶やかな長い赤髪をした女の子を押し倒していた。
どんな状況なら、そんなことになるんだよ。
切れ長の澄んだ赤い瞳。
綺麗に整った顔立ち。
すらりと伸びた手足。
出るところはしっかり出ている体。
モデルか俳優をしているといわれても納得する美しい容姿。
そんな子が下着姿で俺に押し倒されている。
顔を赤く染めて歯を食いしばり……。
「どうしてあなたなんかに!?」
吐き捨てるように言われ、悔しさと涙に濡れた顔。
二十歳まで童貞で、飲み会なんて縁のない苦学生の俺にとって、こんな状況はあり得ない
「……」
俺はゆっくりと状況を整理するために、彼女から距離をとってベッドから身を起こした。
彼女が怪訝そうな顔をする。
違和感と重たい頭をさすりながら、次に視界に入ってきたのは……高層マンションから見える街の景色だった。
大きな窓の向こうで大都市を見下ろせるほどの高さ。
そのまま視線を部屋の中へ動かせば……グレーを基調とした高級ソファや本棚に広い部屋。
床はふかふかの絨毯で……明らかに俺の知っている家じゃない。
女性の部屋かと思ったが、キングサイズのベッドや枕、クッションはどれも男の物に見える。
……何が起きている? 頭がズキズキと痛み、不意に記憶が流れ込んできた。
うん、それは間違いない。俺の名前だ。
某有名大学に在籍しており、家族は母親と妹が一人。
父親はもう亡くなっている。
女性との経験多数。
……いや、違う。
……おかしい。俺は確かに片親だけど、父親だけだった。
それに妹なんていない。
親父とはもう何年も会っていないが、健在のはずだ。大学が決まってから、家を出てバイトをしながら生活費と、学費を稼いでいた。
なら、なんだこの記憶……。
もっと記憶を呼び起こそうとするが、そこでプツリと記憶が途切れて、次に別の記憶が流れ込んできた。
バイトばかりで、女性と付き合ったことなんてない。
だから潤いを求めて、パソコンで出来るエロゲーを購入した。
寂しい思春期男子の楽しみとしてのつもりで……。案外、ストーリーもビジュアルも、良くてエロゲーに登場するヒロインを攻略していくのに躍起になっていた。
二つの記憶が合わさっていく。
一つは、バイト漬けで恋愛経験ゼロの俺。
もう一つは、女に不自由しない蓮見恭弥という男の記憶。
どっちが本物だ? いや、どっちも俺の頭にある。
下着姿で怪訝そうにこちらを見てくる女性と視線が交差する。
エロゲーに登場するヒロインに酷似していた。
「お前、名前は?」(あなたの名前を教えてください)
「はっ?! 今更、そんなことを聞いてくるの? やっぱりあなたって最低ね!」
名前を聞いただけで怒ってしまい、彼女はベッド脇に落ちていた服を掴んで、部屋を飛び出していった。
彼女の冷たい目は、俺を最低のクズだと決めつけるような視線だった。
そうだ。思い出した! この役割、あのゲームでNTRを仕掛ける悪役プレイヤーの立場と同じだ。
……まさか、俺がそいつにされちまったのか?
このゲームを買ったのは、別に俺の性癖というわけじゃない。
リア充爆発しろ精神というか、カップルが出来て、大学生活を幸せそうに送る奴らへの意趣返しのつもりだった。
そんな奴らの彼女を寝取ったらどうなるのか? そんな思いで購入して……。
ゲームと、バイトと、大学と、疲れてフラフラしながら家に帰った。
そのまま意識がない。
「ここはゲーム世界の蓮見恭弥の部屋ってことだよな? それで、さっきの子は攻略対象者ってことか……? マジかよ」
部屋の中を見渡せば、ゲームの世界で見ていた景色に似ている。
目は冴えたはずなのに、混乱している頭……。
部屋から出れば、丸い大きなメガネをかけたメイド服を着た女性が立っていた。
「えっ?」
「恭弥様、お済みでしたら、お部屋を片付けてもよろしいですか?」
……黒と白を基調としたメイド服を身に纏った女性で、蓮見恭弥がNTRを実行する際に協力してくれるお助けキャラだ。
見た目は、冷たい眼差しで、クールビューティーという印象だが、実際は主人公を溺愛するドMで、黒髪をボブカットに切りそろえた美人。
「はっ?」(えっと、どういう意味ですか?)
驚いて声を出したつもりが、冷たく低い声が出てしまう。
思ったこととは違う、言葉が出てしまっていた。
「はぅっ?! 申し訳ありません。メス豚が余計なことを申しました。決して、恭弥様の情事を盗み聞きして、一人でしていたわけではありません!」
いやいや、そんなこと聞いてねぇよ!
「黙れ」(落ち着いてください)
ダメだ。思った通りに言葉を発することができない。
「もっ、申し訳ありません」
最悪だ。俺はNTR野郎として悪役街道まっしぐらじゃないか……。
このゲームはプレイヤーがNTR側だから、失敗時に破滅ルートが存在したはずだ。
相手の男にボコボコにされたり、警察のお世話になってしまう。
最悪殺されることもある。
とにかく破滅した時のレパートリーも多い。
女性に関わらなければ問題ないはずだよな?
「恭弥様?」
あっ、香澄さんのこと忘れてた。
凛々しい表情で上品な立ち振る舞いの美人さんなのにドMなのが残念キャラだなぁ〜。
「ちょっと……1人にしてくれ」
「はっ!? 恭弥様の賢者タイムにお邪魔して申し訳ありません。何かありましたらお申し付けください」
香澄さんは何かを悟ったように恭しく頭を下げて立ち去っていく。
俺は扉を閉じて、部屋に静寂が訪れる。
大きなひと息をついてから……部屋の中にある鏡の前に立つ。
「マジか!?」
引き締まった体に、どこぞの芸能事務所に所属していてもおかしくない整った容姿。青に近い紺色の髪色が短く切り揃えられて、俺が知る自分の顔じゃない。
「完全に、ゲームに登場する蓮見恭弥に間違いない?!」
タワマンにエロゲーの記憶。
逃げていくヒロイン。
そしてこの容姿……この世界では、主人公が悪役でもある。
しかも、女性と関わればNTRを成功しなければ、破滅が待っている。
「ヒロインはたくさんいるはずなのに、顔とシナリオがポッカリと抜け落ちて思い出せねぇ!!」
だが、俺は一つだけ最悪な事実に気づいた。
「……まさか。 さっき逃げた子、もう関わっちまったってことか? 寝取らなきゃ破滅。しかも肝心のシナリオが思い出せねぇ! ヤバい……マジで詰んでるだろ!」
いきなり破滅エンドが迫っているとか、やばすぎんだろ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
どうも作者のイコです。
誤字脱字報告お待ちしております!!!
どうぞよろしくお願いします。
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