第6話 ケガレ
私は学校から逃げるように離れると家から近い公園へと辿り着いて公園の手すりに手を付いて街の景色を眺めていた。
「初日からやっちゃったな…」
ふと頭に浮かんだのは岩下さんを突き放してしまった事とその場で謝りもせずに逃げ出してしまった事が私の頭を悩ませた。
「ちゃんと言いたい事を口に出来ないこの性格が嫌い…」
気づけば私は頭の中で自身の負のイメージを溜め込んでしまっており段々と体調が悪くなって来てしまい私は深く咳き込んでしまった。
(しまった…これはただの咳じゃない!!)
咳をした私の近くには黒いモヤのような物が漂っておりそれは空に浮かび上がるとそれは遠くの山の方へと飛んで行ってしまった。
「もしかしてこれがケガレ!?魔女の私がケガレを出しちゃうなんて大失態だ…」
ふと街の方へと視線を戻すと街の方からいくつものケガレが山の方へと飛んで行くのが見えて私はケガレが集まっているであろう山をじっと見つめた。
「夜になったらケガレはどこか1箇所に集まって1つになる筈…」
ケガレが1箇所に集まると予想し夜になったら討伐が出来ると思い一度家に戻って準備を整えてからケガレ討伐のために山に向かう事にした。
「ローブ良し…帽子良し!!」
夜になり、私は魔法使いの三角帽子を被り制服の上からローブを羽織りさらにブーツを履いた。
最後に小さいボールペンと同じサイズの小さな箒を取り出して先端部分を軽くトントンと叩くとみるみるうちに通常サイズの箒へと大きくなった。
「うん…これで大丈夫!!」
私の魔法使いの三角帽子は強風時でも決して吹き飛ばされない防風対策の魔法が掛けられており、ローブはケガレの攻撃から私の体を守ってくれる必須アイテムであり私は帽子を深く被り直すと箒へと跨った。
「頼むよ相棒…」
私は箒の後ろにある金属部に足で触れると箒をゆっくりと浮かび上がり始めてそのまま箒はこれから向かう進行方向へと加速し始めて私は吹き荒れる風の中で暗い空を流星のように駆け抜けた。
「これが長崎の夜景なんだ。綺麗…」
ふと視線を横に動かすと夜の夜景が目に入り夜なのに煌々と光る長崎の街の風景が私の目に飛び込んできた。
「大丈夫。みんなの夜は私が守るから…」
私はケガレが集まる山の方へと箒を加速させながらそう呟いた。山に近づくにつれて風の勢いがさらに強くなり私は吹き荒れる風を踏ん張って耐えていた。
「この風、ただの風じゃない…ケガレが出してるんだ…」
猛烈な強風が私を襲い私の帽子が揺れており私の羽織るローブが強風で激しくはためき中に着込む制服の校章のバッジが顔を覗かせていた。
「あれは…!?」
ふと山の方へと視線を向けると山の上から巨大な竜巻がこちらに迫っているのが見えてその中心に巨大な鳥がいるのが私の目に映った。
「大きい鳥の姿!?」
巨大な鳥のケガレは風を纏いながら私の姿を見るや突進し私は高く飛び上がり突進を回避しながらガラ空きの背中に向かって手を翳した。
私の手から炎の渦が放たれて鳥のケガレに命中したが風の壁のような物に弾かれてしまい私の炎は消え去ってしまった。
「くっ…風のバリアが…」
再び炎を放つが私の炎はあっという間に掻き消されてしまい私は鳥のケガレの強風を纏った羽ばたきに巻き込まれて吹き飛ばされてしまった。
「ダメだ…私の初級の炎属性の魔法じゃ全然効かない…」
私は箒から落下するが手を翳して箒を手に呼び寄せると箒は私の手に収まり私は箒を片手に空へと再び舞い上がった。
(あの風を破るには上級魔法じゃ無いと…)
私は咄嗟に他の魔法を使おうか迷ってしまい背後から私に迫る竜巻に気づくのが遅れてしまい私は後ろを振り向いた。
「しまった。避けられな…」
直後私は竜巻に呑み込まれてしまい。私は竜巻の中で身動きが取れなくなってしまった。
「ああああああ!!」
私は猛烈な竜巻の中で身動きが取れずについ片手に掴んだ箒を手放してしまい箒が上空へと飛ばされてそのまま竜巻の外へと吹き飛ばされてしまった。
「くっ…箒が…」
私は竜巻の中の分厚い風の壁に閉じ込められてしまい私は強風ではためく制服のスカートを押さえながらあらゆる初級魔法を風の壁にぶつけるがやはり効果は無かった。
「上級の魔法が使えない私じゃこいつに勝てない…」
私はどうしようもない状況に再び分厚い風の壁に向かって手を翳すが私が閉じ込められている竜巻に鳥のケガレが迫っているのを見ると冷や汗を掻いた。
「何をするつもり…まさか!?」
私の嫌な予感は的中し鳥のケガレは翼を羽ばたかせると2つの竜巻を発生させると2つの竜巻は私のいる竜巻へと迫っていった。
「いけない…竜巻同士がぶつかる!!」
直後私の体は竜巻同士がぶつかった衝撃で高く吹き飛ばされてしまい竜巻の外へと跳ね上げられてしまった。
「くっ…箒は…来ない!?」
私は空中で落下しながら箒を手元に呼び寄せるために手を翳すが箒は手元には来る事はなかった。
「ローブが!!」
私は強風の中で落下しながらついに私の防風魔法が掛けられていないローブが猛烈な風の影響で脱げてしまいローブがどこか遠くに吹き飛ばされてしまった。
「くっ…落ちる…」
私の視界には山の急斜面が迫り私は落下の衝撃を僅かにでも和らげるために落下地点に向かって魔法を唱えた。
咄嗟に放った私の風魔法が落下の衝撃を抑えてくれたが私はそのまま山の斜面を転がってしまい近くの大きな木の根元で止まった。
「くっ…私が…やらなきゃ…あいつを…」
私は体に力が入らず立ち上がろうとするがついに力尽きてしまいそのまま意識は深い深淵へと落ちていった。
「ふぅ…歌った歌った!!」
その頃学校帰りの岩下舞こと舞が自宅に帰るために道を歩いていると遠くの山に竜巻が発生しているのを見てついスマホを構えて撮影に入った。
「何あれ凄い…竜巻じゃん!!」
舞は撮影をしながら何かが竜巻によって吹き飛ばされているのを見ると撮影をやめてその方向をじっと凝視した。
「落下してるの…まさか人!?」
舞は落下している正体を確かめるために山の方へと走り出した。
山へと辿り着くと猛烈な風が発生しており舞は強風をじっと耐えながら歩いていると舞の目の前の木に大きい布のような物が引っかかっているのを見つけて舞は木から布を外して広げて確認した。
「何これ…ローブ!?」
それはまさしく魔女が身に着ける黒い大きなローブであり胸の辺りには星の形のバッジが付いていた。
「何でこんな物がここに…?」
「ニャーオ」
ローブを広げて見ていると舞の目の前に黒猫が舞を見上げるように座っており舞が猫の方を見ると猫は付いて来いと言うように走り出してしまい舞は慌てて後を追った。
「ここに何かあるの?」
舞は山の遊歩道へとやってくると急斜面を猫が降りていくのを見ると自身もゆっくりと急斜面を降り始めた。
「よっと…うわっ!!ローファーだとやばいなぁここ…」
本来はローファーで絶対に来るような場所では無いために舞はローファーの中に斜面の土や泥が入るにも構わずに斜面を降り始めた。
「ニャーオ」
「そっちだね?今行くよ!!」
舞は黒猫の姿を見つけると慌てて駆け寄るがその近くの木の根元にある物を見つけてとても驚いた。
「なっ…人!?」
先程竜巻によって吹き飛ばされた人だろうかと思った舞は倒れている人物を介抱するためにうつ伏せに倒れている人物を仰向けにして体を揺さぶった。
「大丈夫ですか!?しっかりして!!ねぇ!!」
ふと服装を確認すると今、自身が着ている服と同じ長崎市如月女子学院の制服であり舞は思わず顔を確認するために深く被っている魔女の三角帽子に触れた。
「ユッキー!?ねぇユッキー!!しっかりして!!」
倒れていたのはまさしくケガレとの戦闘中に落下して意識を失った現代の魔女こと内田優希本人であった。
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