第5話 岩下舞
「1年1組は…ここだ」
私は自身の教室を見つけると教室に入ってすぐの2番目の席に着席した。
「知らない人ばっかり…緊張するなぁ…」
周りは既にグループが出来上がっているようで私は自分から話しかけに行くことが出来ずにただひたすら入学式までじっと周りを見つめていた。
(あれ…私の前の席の人まだ来てない…)
前を見ると私の前の席が空いておりまだ席の主がまだ到着していないようだったが、そこに若い女性の担任の先生らしき人が教室へ入って来て明るく挨拶をしたタイミングで教室に1人の女生徒が駆け込んで来た。
「あ、よかった間に合った!!」
「岩下さんですね?ギリギリですよ。次からは早めに余裕を持って登校するように」
「はーい!!」
岩下さんと呼ばれる茶髪のショートカットの女生徒は元気に返事を返すと私の前の席に着席すると私の方を向いた。
「初めまして!!これからよろしくね…ってあれ?」
「貴方はさっきの…」
「さっきぶりじゃん!!同じクラスだったんだ〜しかも私の後ろの席だ!!」
「そ、そうですね。さっきぶりですね…」
私は苦笑いを浮かべていると岩下さんは私に手を差し出した。
「私は岩下舞!!貴方は?」
「… 優希です。内田優希 」
「優希さんかぁ〜じゃあユッキーで!!」
「はい…岩下…さん」
私は差し出された手を握ると握り返すが岩下さんは目を輝かせながら私にぐいと顔を寄せた。
「舞って名前で呼んで!!あと敬語も無しで!!」
「う、うん…」
私は岩下さんの勢いに押されてしまうが教室で先生の号令が掛かり岩下さんは残念そうに前を向いてしまい私はほっとため息をついた。
(フレンドリー過ぎないこの人!?)
その後入学式は滞りなく行われてあっという間に放課後になり、私は足早に自宅に帰るために靴に履き替えて学校を後にしようとしたが正門の前に部活の勧誘のためのチラシが配られており私の前にチラシが配られて私は様々な部活の先輩方からチラシを受け取ってしまっていた。
(私にはケガレの討伐の使命がある。部活なんて…)
ふとそんな事を思っていると私の肩に手が置かれてふと視線を向けると私を追って来たのか岩下さんが楽しそうな表情でチラシを手に私の方を見つめていた。
「ユッキーは入りたい部活とか決めてるの?」
「私は別に…」
「ねぇ一緒にどこかに部活に入部しない?」
「いえ、私は…」
「吹奏楽部とか良さそうだよ!!後は演劇部とか!!」
部活のチラシを私に見せながらぐいぐいと迫り私はだんだん岩下さんのペース合わせることが出来ずに頭を抱えた。
(私には使命があるなんて言えないし、なんて断ったらいいんだろう…)
「なんなら一緒に新しい部活でも作っちゃう!?じゃあ今から一緒にカラオケでも行ってそこで話し合いを…」
「あの、私は部活は…」
「とりあえずカラオケ行こ!!」
私は上手に断るための言葉が思いつかずにいると岩下さんは話を進めてしまい私をどこかに連れて行くつもりか私の手を掴んでしまい私は咄嗟に腕を振り払ってしまった。
「やめてっ!!」
「えっ…」
咄嗟に手を思い切り振り払ってしまったので岩下さんの手にあった部活のチラシが辺りに散らばり岩下さんが私の方を心配そうな表情で見つめた。
「ユッキー…?」
「あ、わ、ごめ、私は…」
(謝らなきゃ)
すぐに謝ろうとチラシを拾おうとしたが私達の様子を見ていたチラシ配りをしていた部活の先輩方がこちらを見ている事に気づいて私は顔を青ざめていた。
「あ…」
気づけば私の周りは他の同級生も見ている事に気づいて私はとても居心地の悪い気持ちに襲われてしまう
「ユッキー大丈夫?」
岩下さんが私の方を心配そうに見ていたが私は謝罪の言葉をうまく口にする事が出来ずに慌てて立ち上がった。
「ご、ごめんなさい…」
私は一言謝罪の言葉を告げる事しか出来ずにその場から早く立ち去りたい気持ちに負けてしまい地面に置いたバックを引っ掴むと勢いでバックから何かが地面に落ちる音が聞こえたが落ちたものを確認する余裕もなくその場から走り去ってしまった。
「あ、ユッキー待って!!」
後ろから岩下さんの声が響くが私は振り返る事も出来ずに自宅の屋敷に続く道をただひたすら走り続けていた。
(ごめんなさい。私忙しくて部活に入れない…そう一言言うだけなのになんでそれが言えないの私!!)
自分のあまりにもはっきりと物事を言えない性格が今回の大失敗に繋がってしまったと凄く後悔してしまうが一度走り出した足を止める事が出来なかった。
「ユッキー大丈夫かな…」
そう呟く岩下こと舞は走り去った優希の後を追う事が出来ずにただその後ろ姿を見つめる事しか出来なかった。
「これ…ユッキーの?」
咄嗟に優希が落とした物であろう物を拾い上げるとそれは優希の銀色の指輪であり夕焼けの光に照らされて光を放っていた。
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