第15話 テニススクール

「成田さん、帰りにお茶していかない?」

「いいわね。駅前のカフェで。」

 声をかけてきたのは、同じテニスクールの中級クラスの晴美はるみさんだ。1年以上同じクラスで、年齢も1つ違い、専業主婦なのも同じで仲がいい。もう一人葵あおいさんも仲がいいけど、今日はお休み。


「晴美さん、けっこう上達したね。私、ぬかれそう。」

「瞳さん、大学からやってるもん。まだまだよ。でも、野口コーチの教え方がいいからかなぁ~。」

「そうね。野口コーチ優しいし、教え方もうまいし。そうだ、テニスの話じゃないんだけど、ちょっといい?」

「なに?」

「あのね。連休に旦那と子どもたちと九州旅行へ行ったの。」

「さすがね。旦那さんゼネコンだもんね。」

「その旦那なんだけどさ。旅行中、私と同じ部屋になりたがってさぁ~。まあ、断わったんだけど。娘のママ友とその話した時に、『うちは夫婦で露天風呂に入って夜も何度もセックスしたわ~』だって40くらいの夫婦ってそうなのかな。」

「え~まさか~。旦那とセックスなんてあるわけないじゃない。」

「晴美さんとこも?」

「そうようちの旦那なんてお腹も出てるし、頭もちょっと薄くなってきて、する気持ちなんて全然起きないわよ。瞳さんとこの旦那さんは、イケメンだしスタイルも維持してるじゃない。」

「う~ん。それがだめなの。なんか空気というか家族というか触られるのもちょっと嫌なの。晴美さんちは、レスだと夫婦仲もいまいちなの?」

「ううん。そんなことないよ。旦那とは仲いいよ。優しいし人間性もいいし、夫として愛してる。ただ、恋愛対象じゃなくなったってこと。恋愛は別な人と。」

「別な人?何それ?」

「婚外恋愛。恋愛は、旦那とは別な人としてるってこと。」

 晴美さんは、ニヤッとした。

「それって、不倫じゃないの?」

「違う違う。不倫は旦那と別れてその人と一緒になるとかドロドロしてるもんでしょ。私のは、昼のちょっとした時間に恋愛気分を味わうだけ。旦那も家族も大事だし、息抜きみたいなもの。」

 晴美さんは、ニコッと笑った。

「相手は決まった人?」

「そう、今はね。太田君。」

「ん。え?太田コーチ?」

「そうよ。いいわよ~。大学生って。体なんて引き締まってるし、アソコも固くて精力もすごくて何回も求めてくるの。いつも大満足。」

 そうだったんだ・・・今日もアシスタントについていた太田コーチとだなんて。

「他にもそういう人いる?」

「葵さんは、パート先の独身社員とだって、言ってたわよ。」

「瞳さんは、旦那さん一筋だもんね。」

「え?わ、私は・・・・。」


『婚外恋愛』か・・旦那に愛があっても、恋愛は別な人としてもいいんだ。


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