第4話 仲間探しの始まり
翌日、ウォル=水原は町へ出かけた。情報収集と、何より重要な仲間探しのためである。
町の名前はアクアリス。人口三千人ほどの地方都市だった。石造りの建物が立ち並び、中央には市場がある。一見、中世ヨーロッパ風の景観だが、ウォル=水原の目には様々な問題点が映った。
「やはり上下水道がない…」
人々は井戸から水を汲み、排水は垂れ流し。衛生状態は決して良いとは言えない。道端には異臭を放つ汚水が流れ、ハエが群がっている。
「風呂も当然ない…」
人々の体臭はかなりきつく、髪も脂ぎっている。たまに川で体を洗う程度らしい。
「これは…本格的に文明の利器が必要だ」
まずは鍛冶屋を訪れた。ガスバーナーの代わりになる加熱装置を作れないかと思ったのだ。
「すみません、金属を加工していただくことはできますか?」
「おう、坊主。何を作りたいんだ?」
鍛冶屋の親方は気のいい男だった。名前はガロン。四十代半ばで、筋骨隆々としている。
「実は、水を温める装置を作りたくて…」
「水を温める?何のために?」
「えっと…体を清潔にするためです」
ガロンは首をかしげた。
「体を洗うなら川があるじゃないか。わざわざ温める必要はないだろう」
この世界の人々にとって、温水で体を洗うという発想自体が理解しがたいものだった。
「でも、温かい水の方が汚れが落ちやすいし、体にも優しいんです」
「ふーん…まあ、金を払ってくれるなら作るが…どんな装置だ?」
ウォル=水原は簡単な図面を描いて見せた。水を循環させる配管と、加熱用の火室を組み合わせた原始的な給湯器の設計図である。
「こりゃあ複雑だな…材料費込みで銀貨五十枚はかかるぞ」
「銀貨五十枚!?」
ウォル=水原は驚いた。庶民の月収が銀貨十枚程度と聞いている。とても払える金額ではない。
「やはり一人では限界があるな…」
次に向かったのは魔法具屋だった。魔法装置というものがあるかもしれないと思ったのだ。
「いらっしゃいませ」
店主は魔法使いらしく、杖を持った老人だった。
「すみません、水魔法を自動的に発動させる装置はありませんか?」
「水魔法を?珍しいことを聞くね。水魔法なんて誰も使わないから、そんな装置は作られていないよ」
やはり、である。水魔法は最低ランクとされているため、需要がないのだ。
「でも、魔法装置自体は存在するんですね?」
「ああ、魔石に術式を刻み込んで、魔力を注入すれば一定期間は自動で魔法が発動する。ただし、高度な技術と大量の魔力が必要だから、値段は…」
「どのくらいですか?」
「簡単な炎魔法の装置でも金貨三枚はするね」
金貨一枚は銀貨百枚に相当する。つまり銀貨三百枚。庶民には手の届かない代物だった。
「うう…お金の問題が深刻だ…」
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