第16話 実物よりも気持ち良い

 老い。歳をとり身体や精神が衰えること。全ての人間は平等に時間が経過して歳を取る。20代くらいまでなら歳を重ねる毎に背が伸びたり、知恵が身に付いたり、経験が増えたり成長と捉える事ができるが、40歳50歳を超えると記憶力が落ち、筋力が落ち、病気やケガからの回復も遅くなる。当然、性的な面でも性欲が減退したり、生理不順などの衰えが来る。男性は特に分かりやすく、勃起が弱くなり竿も持ち上がらない。一度フル勃起になってもセックスの最中に萎えることもあると聞く。

 私達の体内にねじ込まれるあの忌々しいチンポが用を成さないのだから「大人しくしていろ」と言いたくなるが、『敵もさる者』でチンポがだめなら指や道具で女性に悪さをしようとする。経験豊富で技術が高い男性なら指一本で女性をイカせることがきるらしい。


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 賄腹専務への枕営業も当然あの1回では終わらない。専務から度々お誘いをいただき、指定されたホテルに出向く。毬村編集長は「溜まっているんだ」と私に即入れして楽しむのに対して、専務は私をイカかせて、その様を見て楽しんでいるようだ。基本的には部屋の灯りを暗くして、無言で淡々と私をイカせる。始めは指で割れ目やクリトリスを刺激してイクことを教えてくれて、私が少し慣れてきた頃には股間だけではなく、乳房や乳首を撫でたり指で引っ掻いたりする刺激も加わった。これも初めはブラの上からだったが、ブラを外して直接乳首を指で摘まんだり弾いたりされるようになると、既に彼氏や編集長にもされて経験済みだったとは言えやはり気持ちが良かった。

 慣れるまでは座って下着姿からのスタートだったが、しだいにシャワー後全裸で横たわる私に愛撫をしてくれるようになった。私の彼氏が性的な興奮と未熟ゆえの探求心で体中撫で回したのとは異なり、私をイカせるために場所や力の強弱、指の腹など使用する部位を色々と試し、その時々の私の反応を分析しながら評価を積み上げていき、私を効率よくイカせる方法を探し出して楽しんでいる。愛撫の最中、私自身は体温が上がって汗をかいたり、呼吸が速くなったり、腰がピクっと動いたりした自覚があったし、より分かりやすく吐息が漏れたり、「あん…」とか「ダメ」とか思わず声が漏れることもあった。専務は私の分かりやすい反応を喜ぶだけではなく、「すごく濡れてるよ」とか、「鳥肌が立ってきたね」と私が無自覚な変化も小声で教えてくれた。


 最初は外イキだけだったし、これだけでも十分気持ち良かったが専務による私の開発はまだ止まらない。十分に濡れた割れ目から人差し指を入れてゆっくり何かを探すように指を動かしていき、時々指をクイクイと曲げて優しく掻くように動かしたり、トントンと軽くリズムカルに刺激してくれた。そして専務は穴の中のある特定のポイントを決めると、そこを集中的にしつこいくらいに同じ力加減と一定のリズムで刺激し続けてくれた。始めのうちは何をされているのかよく分からなかったが、徐々にムズムズとした違和感を覚えるようになり、何回かこの指遣いをされているうちに全身にゆっくりと沸き上がるような快感が拡がって身体が強張り、それが決壊するように溢れ出る感覚がした後、体の力がフーっと抜けて弛緩した。

 こうして次第に中イキもするようになり、最終的には道具まで使うようになった。いわゆるバイブも使うようになったのだ。男性器の形に似せてわずかに曲がった棒状で、実物よりも柔らかい素材だが振動したり、スイングしたりする。しかもご丁寧にその強弱を調整できるようだ。初めて見せられた時は、道具を持ち出された事に驚き、その異形とウィィィン、ウィィィンと大きな音でかき混ぜるようにスイングする様を見て「怖いです。止めてください」と断った。しかし専務は「大丈夫。始めは皆そうだったが、実物よりも気持ち良いと喜ぶ子や、自分で振動を『強』にして楽しむ子ばかりだったよ。」と聞く耳を持たない。実際にコンドームを被せてバイブを差し込まれると、入れられたこと自体は痛くなかったが、入ったまま振動のスイッチを入れられるとバイブの一部が体内で高速振動してビリビリ痛かった。上半身を起こして専務の手を押さえて「やめて、やめてください。」お願いしたが、「まだ『弱』で一番弱い振動だよ」と手を払いのけられ、バイブを差し込んだまま胸や乳首を愛撫したり吸ったり他の刺激も付加して気持ち良くしようとしてくれた。しばらくは痛みの方が強かったが、処女喪失からセックスに慣れたように私の身体はバイブの刺激にも時間をかけて徐々に順応していった。自慰もしなかった私が専務による開発で快感を知ってしまったのだ。


 私がイカされている一方、専務はどうか?私をイカせて楽しんでいるのはもちろんだが男としても満足をしている。全裸の若い女性を撫でまわすのだがら当然興奮してチンポが起つが、ある程度硬くはなるものの竿は斜め下を向いたままだ。年齢のせいなのか専務固有の要因なのか分からないが、そり上がったり垂直にピンと前方を指すまでには中々ならないので、私が手でしごいて硬くしてあげなければならない。毬村編集長に教えてもらった手コキを専務にしてあげ、何度もこなすうちに上達していった。後々役に立つようになるのだが男は亀頭が敏感で刺激してあげると気持ち良いらしく、棒をしごくのと同時にもう片方の掌や指で亀頭を撫でると気持ちよさそうにピクピク腰を震わせながら射精した。こうやって手技を教えてもらい実践もできた。専務はそのまま手だけで射精する場合もあるし、調子が良い時は硬くなったチンポにコンドームを着けて挿入してくる。しかし、セックスをしたとしてもそのまま射精に至るばかりではなく、中折れしてしまって結局手でイカせる場合もあった。

 「カオル、ありがとう。今晩は調子が良さそうだから入れれそうだよ。」専務への枕営業を続けていく内に私を呼び捨てになった。

 「はい。…ゴムはお願いします。」私は専務のチンポを握りって前後に動かしながら本当かしら?と半信半疑だが、中折れするとしてもゴムは着けてもらわなければならない。

 「もちろんだよ。」私が手を離すと自分の鞄まで走り、その場で手際よく着けて戻って来た。萎えない内に早く始めたいのだろう。私がベッドに横たわるとすぐさま位置と角度を調整して正常位で入れてきた。

 「私が若い頃はね、女性を指でイカせた直後グチュグチュに濡れたアソコに挿入して追い打ちをかけて喜ばせていたんだ。…でも、今はこのざまだ。私ももうダメだな。」ゆっくり大きく腰を動かしながら思い出話に耽る。専務は年齢が指や道具で女性がイク直前まで高ぶらせて、最後の最後女性がイキそうな時に挿入して体面を保っていたようだ。専務は元々若い頃からチンポの起ちにコンプレックスがあったのかもしれない。だから指や道具で女をイカせて自尊心を保っているのだ。

 「カオル、……イクぞ。」専務は気持ち良さそうな笑みを浮かべて果てた。私としては編集長のようにフェラを命じられないのは嬉しいし、セックスが不要のケースも多いので専務への枕営業の方がストレスは小さい。しかし、先が見えない枕営業は続くのはげんなりする。いくら指や道具で気持ち良くなれるからと言っても、父親より年上のおじさんに抱かれるのは気持ちが悪いし、他人に体中をいじり回されるのはやはり不快だ。

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