第14話:十二支との格闘 十一番目の敵・赤で力を奮う丑
丑:赤奮若(tʂʰjek pjunH nyak / *tʰjˤek pə[n]-s ŋak / *xlak phun nak)。
まず「奮」から見てみる。
中古音では去声なので、上古音では -s がつくはずだが、『上古音略(修訂版)』(2023)では *phun とされている。しかも同書では通常、中古音で -j- がつく漢字の上古音には短音記号が付くのに、この字にはない。誤植の可能性もあるが、ここでは一応『上古音略(修訂版)』を採用する。
もし「奮若」を *phūn-nak と解釈すれば、サンスクリットの Pūrṇaḥ(満ちた) に対応しそうだ。
「-nn- ではなく -rṇ- では?」という疑問もあるが、釈迦の弟子でまさにその名の富楼那 Pūrṇa がパーリ語では Puṇṇa と写されることを思えば、当時の発音では -ṇṇ- になっていても不思議ではない。
次に「赤」(tʂʰjek / *tʰjˤek / *xlak)。
意味をとって「赤」とすれば raktapūrṇaḥ(血に満ちた) という、なんとも物騒な語になる。しかし「美女(Sundarī)」の直後に「血に満ちた」は不自然だろう。
そこで音のほうから見る。*xl- を *xr- のように ś- と解釈すれば、「śak」に近づく。またt͡ʃに近い音だったとすると、「汁」t͡ʃipをśivにあてたようにどちらにしろ「śak」の音写でいいことになる。
すると śakti(力) が浮かび上がり、śaktipūrṇaḥ(力に満ちた) という、より自然で神格にふさわしい名となる。
直前にはまさにŚaktiシャクティとも呼ばれるシヴァの妻、Tripura Sundarīの名があるので確定的だ。
おそらくは「ti」に相当する漢字が本来あったのだが、四文字になると長すぎるため省略されたのではないか。
結論。
丑:赤奮若 = śaktipūrṇaḥ(力に満ちた)。
十一頭目、討伐完了
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