第2話 原野 美由紀



「ほら、早く朝飯を食べろよ。冷めちまうぞ」



 俺は美由紀に再び声をかける。

 美由紀はだるそうに伸びをした。

 そうするとパジャマのボタンがちゃんと止まっていなかったのか美由紀の豊満な胸が見える。


 美由紀は中等生に成りたてとは思えないほどスタイルがいい。

 豊満な胸、細い腰、魅惑的なお尻。その上顔もアイドル顔負けの美少女だ。

 もちろん昨夜も俺は美由紀の体を十分に堪能した。


 俺は先に一階に戻るとちょうどトーストがチンッと音を立てて焼き上がった。

 美由紀も一階に降りてきて一緒に朝飯を食べる。


 美由紀の名前は「原野はらの美由紀みゆき

 普通の家庭に生まれたが美由紀が赤ん坊の頃に親が離婚して美由紀は母親に引き取られたらしい。


 その後、美由紀の母親はスナックの経営者になり美由紀を育てたがあまり育児に興味はなかったみたいだ。

 美由紀は母親から虐待などを受けることはなかったが母親は美由紀の行動に何か言うこともなく孤独な幼年時代を送ったそうだ。


 そして俺が通っていた第二初等校に通っていて俺の同級生だった。

 同級生の中では美由紀はそのアイドル顔負けの美少女と初等部とは思えない魅惑的な体で男子からは人気が高かった。


 そんな美由紀の人生を変えた事件が起こる。


 美由紀が初等部高学年の時に下校中に男に捕まり襲われた。

 相手はナイフを持っていて美由紀を脅したが美由紀はもちろん抵抗した。

 そしてもみ合っている時にナイフが男の腹部に刺さりその男は死んでしまった。


 美由紀は警察に連れて行かれたが正当防衛が認められ無罪となった。だが美由紀が人を殺したことに変わりはない。

 噂は瞬く間に広がり美由紀は学校内で孤立した。


 その話を聞いて俺は初めて美由紀に興味を持った。

 そして美由紀に初めて声をかけたのだ。



「俺は紫乃原真人。お前のやったことは当たり前のことだ。自分の身を守るために人を殺すなんて恥じることでも何でもない。普通のことだ」



 美由紀は俺を睨みつけた。



「私は『人殺し』よ。それが普通のことだと言うの?」



 俺は笑って答える。



「俺は初等部に入る前に初めて人を殺したぜ。そいつも俺にいたずらしようとしたんだ。死んで当り前さ」


「え!?」



 美由紀は驚いたように俺を見つめて絶句した。



「俺に興味があるなら俺の過去を話してもいいぜ。但し、俺の過去を聞いたら死ぬことになるかもだけど」


「それは真人君の過去を聞いたら私を殺すということ?」


「それは美由紀しだいだな。俺のことをサツに通報する前にお前を消し去ることなんて俺にとっては朝飯前だってこと」



 俺は半分本気で半分冗談のつもりで言った。

 美由紀は少し考えていたが真っすぐに俺の目を見つめてくる。



「真人君の過去を教えて。どうせ私はまともな人生送れないもの」



 俺は真っすぐな目で俺を見る美由紀を気に入った。

 そして俺は美由紀を自宅に連れていって俺の両親のことや今までの俺の過去を話したんだ。

 美由紀は驚いた表情で俺の話を聞いていた。



「真人君は人を殺すことを良いことだと思うの?」


「そうは思わない。が、世の中死んでも仕方ないクソ野郎は存在するってことさ。で、どうする? 俺のことサツに通報するか?」


「ううん、真人君のことは誰にも言わないわ」


「だったら美由紀も『ダーククラブ』の部員になれよ。俺が部長で部員は3人いる。ダーククラブの部員になる資格は『人を殺したことがある者』さ」


「それって真人君の他にも人を殺したことがある人がいるってこと!?」


「ああ、そうだよ。世の中綺麗ごとで世界は回ってないということさ」



 美由紀はしばらく黙って俺の顔を見ていた。

 そして意を決したように言う。



「私も部員に入れて」


「よし、決まりだな。後日部員を紹介するよ」



 俺は笑顔で美由紀のクラブ入りを認めた。



「真人君。真人君の過去を聞いたから言う訳じゃないんだけど私の話も聞いてくれる?」



 そう言って美由紀は自分の家庭のことを俺に話した。


 両親が離婚して母親に引き取られたが母親は自分に対してほとんど興味がないこと。

 虐待はされなかったが寂しい幼年期を過ごしたこと。


 俺は黙って美由紀の話を聞いていた。


 美由紀もけっこう苦労して育ってきたんだな。


 事件の前に同級生の男子から人気を一身に集めていた時には想像できない美由紀の素顔に俺は惚れた。



「美由紀。お前、俺の女になれ。この家で一緒に住もう」


「えっ? でも……」


「俺は親から毎月生活費貰ってるし一人ぐらい増えても困らないぐらいの生活をしている。お前の母親には俺のところにいると正直に言えばいい」



 美由紀は迷っていたがとりあえずその日は「お母さんに聞いてみる」と言って自宅に帰って行った。

 それから数日後、美由紀は身の回りの物を持って俺の家に来た。


 母親に俺のことを話したら「居場所が分かってるならあなたの好きにしなさい」と言われたらしい。


 その日から美由紀は俺の女になり二人の生活が始まる。

 美由紀は最初は「真人君」と俺のことを呼んでいたがそのうち「マサくん」と呼ぶようになった。

 俺と暮らすようになっても月に一度は自宅に帰り元気でいることを母親に伝えている。


 俺の両親にも美由紀と暮らすことになったとメールを送ったが、父親からは何かと女の子はお金がかかるから毎月の生活費を多くすると返事が来た。

 母親からは「あら、そう。真人も男になったのね」というメールだけ送られてきた。


 一応両家公認の仲というのだろうか。


 俺はトーストをかじりながら自分の目の前でベーコンエッグを食べている美由紀を見た。

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