ダーククラブ活動記録1「卑劣な盗撮事件」

リラックス夢土

第1話 紫乃原 真人



 玉子をフライパンに落とすとジュッと音がする。

 俺は二人分の朝食を作っていた。


 なぜ二人分かというとこの家にはもう一人俺と半同棲をしている女がいるからだ。

 そいつはまだ二階のベッドで惰眠を貪っている。


 たくっ、いつものこととはいえ女なんだからたまには料理作れって思うが口には出さない。

 以前文句を言ったら「だってえ、マサくんが作ったほうがおいしいもん」と返された。


 俺はベーコンエッグを作り終えると身軽に二階の寝室に向かう。



「おい! 美由紀! 飯ができたぞ。起きろ!!」



 ベッドの布団の中の塊がもぞもぞ動く。



「おい! 起きろって!」



 俺が布団を捲るとパジャマ姿の美由紀が目を擦りながら朝の挨拶をする。



「う~ん、おはよー、マサくん」


「早くしないと入学式に遅れるぞ。今日から中等生だろ」



 俺も美由紀も今日から中等一年生だ。

 この家には他には住人はいない。

 なぜ中等生に成りたての俺たちが二人で暮らしているかというと俺ん家は普通じゃないからだ。


 俺の名前は「紫乃原しのはら真人まさと

 父親は国際指名手配犯の殺し屋「ダークナイト」

 母親はこちらも超が付くほどの闇社会では有名な世界を股にかける結婚詐欺師「礼美あやみ


  生まれからしてまともに育つわけがない血統。

 もし悪党の血統ってもんが世の中にあるならまさしく俺はサラブレッドだろう。

 自慢する気はないが。


 小さい頃は俺は父親に育てられた。別に母親が育児放棄したわけではないが結婚詐欺師の「礼美」には子供がいると不便ってことで父親に預けられたのだ。

 そして父親は俺に「殺し」の技術を教えた。


 他に教えることがあったんじゃないかと今は思うが俺を連れて仕事をする父親は常に「血」の匂いがした。

 幼い俺は遊びを覚える感覚で銃やナイフ、体術などを学び「殺し」の技術を覚えていった。


 俺は自分で言うのもなんだが「美女」と名高い母親の「礼美」に外見は似ていて幼い頃はよく女の子と間違えられるほどの容姿をしている。

 そのため幼い頃、俺は変な親父に公園の公衆トイレでいたずらされそうになった。


 その時に役に立ったのは父親から教わった「殺し」の技術だ。

 その親父もまさか幼児に反撃されると思ってなかったのだろう。

 俺は常に持ち歩いていたナイフを使ってその親父をめった刺しにした。もちろん親父は絶命し、俺も返り血を浴びた。


 初めて人を殺したが何の感情も俺の中で動かなかった。

 その時に思ったのは返り血を浴びて体がベトベトになり気持ち悪いという不快感ぐらい。


 そのまま父親のいる家に戻ったら父親は少し驚いた顔をしていたが俺を裸にしてシャワーで返り血を全部流してくれた。

 何があったのか訊いてくる父親に俺は全てを話した。


 ところが父親は心配するどころか俺に説教をした。人を殺したことに対する説教じゃなくもっと返り血を浴びずに殺す方法を使うように言われたのだ。

 この時点で既に俺たち親子の異常性を皆さんは分かってくれると思う。

 だがそんな俺も初等部に上がる年齢になった。


 俺の父親は国際指名手配犯になるぐらいだから世界各国のアジトを転々とした生活。

 俺もその度に転校を繰り返していたから親しい友人もできなかった。


 父親はそんな俺のことを不憫にでも思ったのか初等部3年生になる時に日本のこの町にあるアジトに俺を連れて来た。

 それが今俺が住んでるこの二階建ての一軒家だ。


 外観は二階建ての一軒家だが屋根裏部屋と地下室があり銃やナイフなどの武器類や毒薬なども隠してある。

 そして俺をこの家に置いて父親はどこかに行ってしまった。生活費は毎月俺の名義の口座に振り込まれる。

 その他困ったことがあったらこの男に頼めと一人の男を紹介された。


 「木村一郎」と名乗るその男は40代くらいの見た目は普通のサラリーマンにしか見えない。

 俺は「木村さん」と呼んでいる。


 木村さんは俺と同居しているわけではない。

 学校で保護者が呼ばれるようなことがあると木村さんが対応してくれる。


 そして俺の一人暮らしは始まった。


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