第2話 膝枕

 皆様、膝枕ひざまくらはお好きですか?

 世の思春期男子にとっては、女の子に膝枕してもらうことは今も昔も変わらぬ憧れでしょう。多分。

 女性にとってはどうなのでしょうか。その昔、「あんたの太腿、筋肉カチカチで寝心地ねごこち悪い」と言われたことがありますが……(苦笑)。


 さて、あらためて考えてみると、「膝枕ひざまくら」とはどのような行為を指すのでしょうか。

 頭を乗せて枕代わりにする。どこに? それはもちろん膝――ではありませんよね。

 膝関節に頭を乗せるとか、乗せる側にとっても乗せられる側にとっても、ほとんど拷問に近いです。

 実際に頭を乗せるのは、太腿の上。本来ならば「腿枕ももまくら」とでも言うほうが正確でしょう。


 では、何故「膝枕」と言うのか。Wikipediaによれば、「日本語で膝という場合は、膝頭ひざがしらの上部の大腿部ももの前面を含めることがある」のだそうです。

 そういうことなら、まあ「膝枕」という言い方も、おかしな日本語というわけではないのかもしれません。「幼い子供を膝の上に乗せる」というような言い方もしますしね。

 ただ、だからとって、太腿前部を指さして「ここは“膝”です」と言われると、ちょっと首を傾げたくなりますが。


 何だか連載2話目にして早くも、「よくよく考えてみるとおかしい気がしたけど、調べてみたらおかしくなかった日本語」になってしまいそうな雲行きですが……。

 気を取り直しまして。では、英語で「膝枕」は何というのでしょう。

 Google翻訳で「膝枕」を訳してみると「Knee pillow」と出てきますが、真に受けてはいけません(笑)。

 ずばり「膝枕」に対応する英単語は無いらしく、「sleep on one’s lap」といった表現になるようです。「lap」は大腿部前面の座った時に水平になる部分を指す言葉で、「ラップトップパソコン」なんて言い方もありますね(最近あまり聞かなくなった気がしますが)。


 それでは最後に、万葉集 第5巻 810番の、膝枕を詠んだ歌を引用し、締めといたしましょう。


 いかにあらむ日の時にかも声知らむ人の膝の上我が枕かむ

 訳「いつの日にか私の音色を聞き分けて下さるお方の膝に乗って枕にすることが出来るでしょう。」


 「万葉集ナビ」というサイトから引用させていただきました。作者は不詳だそうです。

 千年のいにしえから、膝枕は人々の憧れだったのですね。

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