4話 解放されるは心も体も
…………
はい……いえ…はい未成年ですし、
ご家族様も心配されると思いまして一声かけさせ
て頂きました。
はい……はい…娘も喜びますので…ええ…はい
はいこちらこそ
今後とも宜しくお願い致します…はい失礼致します…」
おとうさんは電話を切るとオッケーのサインを
くれた♪、これで瑞月のお泊り決定だ〜♪。
スマホを受け取り胸にだいて、いそいそと
私は部屋に戻り、瑞月に電話してお泊りの時
何しよーかなんて話をしてその後、
恵美ちゃんの昔の話を聞いたりしていた。
そこそこ長く話をして、明日ね〜と電話おえた。
あ!恵美ちゃんの番号聞かないと、明日聞こう♪
恵美ちゃん、美人で背も高くていいなぁ…。
あれ?彼氏とか…居ないのかな?
モテるんだろ〜な………。
お父さんは今日、仕事を持ち帰ったから
それを済ませたらお風呂に入るからと、私に先入りなさいと言う…。
避けられたような気になる。
「…触ったのまだ怒ってるのかなぁ…」
ふにゃふにゃでさわりが心地良かったなぁ…
その後びっくりしたけど。
「…うふふふ……。」
それでも私は嬉しかった、とても…。
…怒られたって。
私が知らなかったお父さんの身体のこと。
少しだけど…多分…、
でも…お母さんしか知らなかった事…。
「…んん〜!。」
枕をぎゅう〜と抱いて顔をうずめてみる…
なんか…
胸が締め付けられるような…
なんとも言えない気持ち……。
自然と太腿がもじもじと擦れてしまう…変なの……
なんか…息苦しいな…。
そのまま転がり、うつ伏せになって部屋の
冷たさを感じる。
「今日は先にお風呂、一人で入りなさい。」
…笑顔で言われた…思い出すと自然に息苦しさも、太腿も冷めるようにおさまった…。
寒々しい気持ちになる……。
人が離れていくことに私は敏感で…。
あの時の事を思い出す…。
小学生の時に、友達に酷いことを言った…。
今なら理解できてる…。
もっと他の言葉を言えばよかった…。
『大変だね元気出してね』…とか。
でも……。
私は嬉しかったのかも知れない…
私と同じようになるかもしれなかったあの子に。
仲の良かったあの子が、同じお母さんが居ない子になるのが…。
もっと仲良くなれると思っていたのかも知れない。
仲のいいあの子にお母さんがいるのが羨ましかっ
たのかも知れない…。
でも大きな違いは、私がお母さんを知らなかった事。
あの子はお母さんと暮らしてきたこと。
酷く泣かせた…。
『…お母さんはいなくならない!!』
『なんでそんなこと言うの!!』
『いなくなんか…な…ら…うぅ……』
『うぅぁぁ…あぁ……ううぅぁぁ…』
…おかあさ〜ん!…おかあさ〜ん!』
叫ぶように何度も。
何度も…。
お願いだからいなくならないでよ!
私の傍にずっと側にいてよ!
…私にはそう聞こえた…。
あの子は教室で、そこにはいない
お母さんに縋るよう泣いていた…。
その悲しさや不安は皆にも伝わっていて
なだめていた子も泣いていた…。
『…平気だよ、平気だから…泣かないで…』
って励ましながら…。
それがもとで、私は皆からあまり相手をして貰え
なくなって…。
……あのクラスで友達は居なくなった。
でも皆は悪くなくて……。
それがあって、学年が変わっていっても
私はただ普通に、人に接するだけの子になった。
話されれば話すし、話されなければ…
家の事でやらないと、お父さんや自分が困ること
を考えるように努力した。
その方が楽だったし、必要な事でもあったから…。
私が自分を怖くなってたから…。
幼さもあったと思う…でも…
少し考えればわかることだったことも…。
でもそれは今だから思いつく事かもしれない…。
クラスの…雰囲気の変化に気が付いた先生に
私は呼ばれて、なにがあったの?と聞かれた。
先生は怒ってなかった…でも私は答えれなかった。
今思えば他の皆にも聞いていたのかも知れない。
それから少し経ってあの子は引っ越していった。
教室で先生の隣に立ち、クラスを離れる最後の
挨拶の時、私は…俯いたまま、あの子を…
見れなかった……最後まで謝れなかった…。
そして周りの子達に『さよなら、またね』と言いあの子は去って行った。
みんなでお別れに書いた色紙に、私は何も書けなくて…、…書いてはいけないと思っていて。
私が何かを書き残してしまったら、あの子はその
皆が気持ちを込めた色紙を…
捨ててしまうんじゃないかと思えたから…。
「私は…臆病でずるい子だ……」
…呟いても気持ちは暖かくはならない。
励ましたつもりの言葉が、最悪の言葉だと分から
なかった………知らなかった…。
自分の言葉の恐ろしい刃に気が付いたのは
瑞月のお陰だった。
それは泣かせてしまってから3年後。
あの時、瑞月のことも…傷つけていないかは…
……今だに聞けてない…。
離れていって欲しくなかったから…。
怖かったから…。
「…ほんと…ずるいな…私…」
口に出して自分を責めても誰も許してくれないよ…
ずるい自分が言う。
あぁ…嫌な子だなぁ私。
なんで瑞月は一緒に居てくれるのかな…。
私は幼稚だし…皆みたいな遊びも知らないし
なんで相手してくれるんだろう…。
恵美ちゃんだって成績のいい人と友達みたいだし
他の人達にも凄い頼りにされてて…。
それなのに…あの公園で…
『…野々原さん私…
…あなたと友達になりたいの…』
……どうして急に?って聞け無かった…。
そう聞いたら
泣き出しそうなくらい…
………不安そうな顔で言われたから。
『うん!こちらこそよろしくね♪』と
彼女の表情に戸惑いつつも応えた。
恵美ちゃんはとても喜んでくれた。
あの時の泣かせてしまった友達と…仲良くなった時と同じように。
内心では凄く不安だったくせに
『こちらこそよろしくね』 なんて…
恵美ちゃんに失礼な気もする。
いつか恵美ちゃんにも…ちゃんと話せる日が来るかなぁ…。
…不安…怖いくらいの不安…
今なら、平気だと思う…でもまた…
誰かを悲しませてしまうかも知れない…。
誰かを怒らせてしまうかも知れない…。
友達2人を遠ざけてしまうんじゃないかと…
鉛のように重く、とても冷たくて寂しい不安が
胸の中にのし掛かる。
お父さんに、聞いてもらおうかな……。
昨日の夜、お風呂に入っていたときに、
お父さんはこう言ってくれてた…。
「これからは何でも話聞くからな」て…。
―でも許してくれるかは…別だよね…きっと。
お父さんをがっかりさせてしまうかな…
…悲しませてしまうかも…。
言い知れない気持ちのなかで…目を閉じる…。
微睡んだ意識に私は身を預けた…。
「…ん…んぁ?…」
私は寝てしまっていた事に気が付いた。
離れた所から水音が聴こえてくる
さぁば……ばぁしゃー
―あ…お父さんお風呂に入ってるんだ…
「あ!私まだ入ってなかった無かった!」
…もうお父さん上がっちゃうかな…
すぐお風呂場に行って声をかけた。
「おとうさん…もう出ちゃう?
聞いてほしことがあるんだけど…」
お風呂のすりガラス越し聞くと、
「うん?まだはいってないのか?はいるかい?」
と言ってくれた!
避けられてたんじゃなかった!!
私は嬉しくなって着替えも取りに行かず
その場で服を脱ぎ戸をあけた。
「…うぉ!…は、入る時は、声かけてくれ!
平気な顔してるけど、いくら娘とはいえその
え〜と、父さんもびっくりするから…」
「えあはは…ごめんなさい、見ていいよ
えへへ…。」
―避けられてない事が嬉しくて調子に乗った
「そんなあからさまに見れません…あ
まさか待ってかい?声かければよかったな?。」
「ううん…考え事してたら寝ちゃってた…。」
―ほんと…うじうじしてたなぁ…
「そうか…じゃあ背中流してくれるかな?。」
―前だって洗ってあげるよ♪うそ
「はい!任されました♪。」
「よろしく頼みます。」
―いいえ、お疲れ様です
「そうだ、今日はお礼に父さんも流すからな」
―え?それはいいのに…
「ほんと?良いのかな…うれしいけど……
じゃ〜前も洗って♡」 ―言っちゃったー♪
「…けい、楽しんでいるだろう…まったく…
からかわないでくれ」
―ごめんなさい
「まぁでも、父さんも話しが少しあるし。」
―え゙!お説教かな…
「うん、ちゃんとお話聞きます♪」
―ちがうかな…優しいし
…ソープつけて「…では洗います!」
―このままくっついちゃおうかなへへ
「うん、頼むよ」
―あ…条約増やされるか…
…少しの沈黙……お父さんは待ってくれてる。
私が話すのを………不安だな…でも…
話しておきたい…。
私がしてしまった事を、3年も前だけど…
今だに苦しいから。
「…あ…あのね……少しお父さんを
がっかりさせちゃうかも知れない話なのね…」
「大丈夫、…話してごらん」
「…うん、ありがとう……私ね…小学生の時に
友達だった子に………酷いことを言ったの…。」
「…うん」
「…その子のお母さんが病気で入院しいてね
悲しんでいたあの子に……。
『お母さん居なくて私とお揃いだね』って…」
「……うん」
「でね、それから周りの子達とも…その……
うまくいかなくなって…それから友達って作らな
かったの。
あ、でもねイジメとかじゃなくてね……。
ただ…あの時、励ましたつもりで言った言葉がね
……何であの子を泣かせたか分からなくて……
自分の話す言葉が怖くなったの…。
……だから皆を悲しませたり、怒らせたりしたら
嫌だなって…だから皆との距離を私がとったの。」
「……そうだったのか…」
「うん、黙っててごめんなさい…」
「……いいや…辛い思いをしたね……」
「ううん…!そんなことないよあの子に比べた
ら……………でもね
分からなかったからとは言っても、あの子を泣か
せちゃったのは私で…。
でも…でもね…今はなんで泣かせちゃったわかるんだ……。」
「…うん」
「…それはね、中学に入って…周りの子にね
お母さんが居ないこと知られたの。
それを気にかけて、励ましてくれた子に
『なんで?全然悲しくも淋しくもないよって』…言ったの。
そう言ったら皆驚いちゃって…
そうしたら「えー…つめたくない?」て、
でもね私としてはお母さんに
会った事もないし……どう悲しんでいいか分から
なかったの。」
「………それは…そうだよね…。」
「…うん、でもその時に瑞月がね、
教えてくれたの…きっと瑞月はわかってくれてて
私がお母さんに会ったことないって…。」
―瑞月はしってたんだよね
「……ああ…」
「それでね…お父さんと、お母さんを入れ替えて
考えてみたらって……。」
―周りの人が、私を薄情な子だと思ってても
「…そうか」
―あぁ…瑞月の強さや優しさが羨ましい…
「……そうしたらね
…お父さ…んがもし…も居なく…なったらって…
―子供の時一人で居る時に感じた孤独感…
…考え…たら……怖くて…さみ…しくて苦しくて
―わかっていたのに
…辛くて…辛くて……なのに…。」
―こんな気持ちをあの子に与えてしまった
――こんな気持ちに瑞月が気が付かせてくれた
「…ああ…私…こんな酷いこと…あの子に言った
んだって……思っ…たの……わかった…の…。」
―そして瑞月は抱きしめてくれた
背中を洗っていた私の手は止まっていた…
目の奥が熱くてうっすら痛い…息も苦しい…
項垂れたまま動けなかった…。
お父さんは何も言わずに、ゆっくりと振り返っ
て…私をそっと抱きしめてくれた……。
―あの時の瑞月のように
…何度も頭を撫でてくれていた…
きっとお父さんも…泣いていた…
―半分受け取るよ、というように
ぽたり、ぽたりと私の肩に温かい雫が…何度も
落ちていて……。
―一緒に悲しめるからねと言うように
私の呼吸が落ち着くまで、あやすように背中を
なだめていてくれた。
―一人じゃないよって言うように
「…グズ…ありがとう…お父さん…」
「ああ……」
腕だけで私を抱いたままお父さんは…
予想もして無かった事を話してくれた…。
「…その時な…実は、お父さん先生から
電話を貰ってたんだ…。」
「…え?」
お父さんは、驚く私に微笑んで、話を続けた。
「佳樹がね、友達を泣かせてしまったって、
お母さんが入院中で悲しんでいる子に
『お母さんいないの私と一緒だね』といって
言われた子は酷く泣いてしまったってね。
佳樹なりに一人じゃないよ、と言う励ましの言葉
だったと思いますって。」
「……そうだったんだ……知らなかった……。」
「…うん…でもね、周りの子たちにも少なからず
動揺があって、佳樹もつらい思いをしていた
とも先生、教えてくれてたんだ。」
「…………」 ―ほんとにしらなかった…
「―でな…ここからは…その……
言い訳になってしまうけれど……、先生に一月に
一回くらい電話して様子を聞いていたんだ。
佳樹がね、家では明るく振る舞ってるのかも
知れないと…思ってね。」
「……うん…」
「でも、イジメやそういうものでは無いけど
クラスの中でギクシャクはしているようだと
聞いていたんだ……。」
「それは違うよ…」
「…うん…自分からだよね…」
「…うん」
「でも、父さん間違っていたと今は思っているん
だ、もっと早くに先生から連絡もらったよって、
事情を聞いたよって伝えていたら佳樹も…
こんなに苦しまなくて済んだかもしれないと…」
―そんなことないよ
「…ありがとう、でもね、あの時間が無かったら
瑞月と今みたいに仲良くなってないよ、
勿論他の子と仲良く出来ていたかもだけど…。
それはなんか違うと思うんだ…。」
「…そうか、そうだな…それでも親としては
申し訳なかったと思うんだよ、済まなかった。」
「ううん…此方こそありがとう…」
「でも…佳樹に…いい友達ができて…
僕は本当に、本当にそれが今嬉しくて幸せだよ。」
―ありがとうお父さん
「…うん…私も瑞月には感謝してるんだ…いつも
は、からかってくるけどね…ふふ…。」
「ははは…本当によかったね…けい
大事にし過ぎないように、大切にしなさい。」
「もちろん♪…なにせお父さんの次に好きだから
ね瑞月はさ♪恵美ちゃんには憧れてるの」
「…あはは、でも良かったよ、けいの中で
わだかまりが解けたようで…安心したよ…。」
「…うん…胸のつかえが取れたよう…ご心労をお
かけしました父上様!」
―でも許されたわけじゃない
「そう来たか!あはは、あ!そうだあと一つ。」
「んーなに?」 ―それでも少し楽になったかも
「先生に電話していた頃にね、けいのその友達の
お母さんと話した事があるんだよ、謝ろうと思
ってね、先生に電話番号を聞いて。」
「そうなの?…ごめんなさい……
怒ってたでしょ…。」
お父さんは微笑んで、私の不安を否定した。
「いいや、事情を娘さんから聞いていたみたいで
ね、ピンと来たんだって。けいは励ましてくれて
いたんだって。
でも拙い言葉が、うちの娘に届かなかったんだと
思いますって言ってて、逆に謝られたよ、
だからお互いにすみませんってね。」
「そうなんだ…でもあの子は…」
そう私が不安げに言いかけると、お父さんは柔ら
かく笑って首を振り、説明してくれた。
「平気だよ、お母さんが説明してくれたんだって
佳が言ったのは「お母さんがいなくなる」
と言う意味じゃなくて「けいは一緒にいるよ」
って意味で言ったのよって。
「そばにいるよ」って励ましてくれてたんだよっ
て、そうしたらね。
私佳ちゃんに酷いこと言ったって、お別れの挨拶
もしなかったって、ごめんなさいって
泣いていたそうだよ。」
――信じられなかった
「……うそ…ほん…と?…ううぅ…ぅ…。」
「……グズ…ほんとに?…」
―あの子は許してくれていた
「あぁ…よかったね…本当に…」
――胸の鉛が溶けるように消えてゆく…
嬉しくて嬉しくて…温かい涙がこぼれ落ちた…。
あの苦しさに、こんな終わり方があったなんて思
わなかった…。
この先も、思い出す事が減ったとしても…
常に傍に有って、その度に私はあの時を
心のなかで繰り返して、悔やんで後悔していくも
のだと思っていた、
そうでなければいけないと思っていた…。
泣き顔で私は恥ずかしかったけれど、お父さんを
見上げた…すると
とても緩やかに微笑んで居てくれた…。
多分酷い顔だったと思うけど…私も微笑んで
お父さんにお礼を言った。
「お父さん…ありがとう……」
頭を撫でられて、さらに涙が止まらなくて……
私はお父さんに抱き着いてしばらく泣いてしまっ
ていた…。
やっと…許された気がして…うんん…、
許されて…私は心を彷徨う迷子ではなくなった。
寒々しかった心が、温かくなった気がした。
温かい…お父さんと触れている身体がとても温かい…。
涙が収まって、抱きついていることが心地よくて
しばらくそうしているとお父さんは困ったように
話を切り出した。
「さ、冷えてしまうよ、父さん洗い終えてるから
かわろう、背中流すよ、椅子に座って?。」
「…や…もう少しこのまま……」
「いや…冷静になったら恥ずかしいんだよ…父さんさ…」
―…いいじゃない…も少し
「もう…嬉しいくせに…」
―多分私の方が嬉しいんだよ
「そりゃあ、嬉しいさ、娘に抱きつかれて嫌な父
親なんてそうそういないよ、でも節度と言うもの
があります…それにお互い…その…
裸なわけだし。」
―嬉しいんだ…うふ
「もう…わかりましたよ」
と私は納得いかないふりをしてパッと離れた。
でも背の高いお父さんからは色々見えちゃった
みたいで、私の顔からお父さんの視線が外れて
私の胸に注がれる形になっていた。
「あ」と短く声を上げお父さんはバッと横を向
いて少し顔を赤くしてお父さんは
「…ほらけい、背中を洗うよ」と言ってくれた。
―ごまかしてる
「……今しっかり見てたでしょ…」
―ちゃんと見てほしいな
「……すまない…いや…その…ごめん。」
―お父さんの頭抱いてあげたいな
「昨日から初めてじっと見たでしょ…」
―えへへ、見せてるの私だよね
「…ほんっとにすまない…やっぱり一緒は無理があるよ…やっぱり…別々に…」
―逃がしませんよ
「怒ってませんよ〜だ、でも目をそらされるのは
傷つきます、罰として一回椅子に座って
下さい!」
「いや…なんで傷つくんだ?僕は洗い終わってるから…」
「何でもいいから座って下さい」
「…わかったから…えと椅子…」
横を向きながら椅子を引き寄せお父さんは座った。
「はい、じゃあ…目を閉じてください!」
「え…何するの?触ったらだめだからねホント」
「いいから目を閉じて黙る!」
「…母さんに似てきたなぁ…」
「お静かに…」
そうしてゆっくりと、抱きやすい位置にあるお父
さんの頭を胸で抱えるようゆっくりと抱いた。
「けい!?」
「お静かに…今からお話します、少し。」
「いや…だっておまえ…」
「少し!お話ししますので」
私が強めに言うと観念したのかお父さんは
おとなしく顔を私の胸に預けてくれた。
「こうしてるとね、凄く優しい気持ちになれるん
だよ。
前ね瑞月がしてくれてね、私驚いたの心地よくて
私はお母さん知らないからかもだけど、
瑞月に聞いたら、泣いた後とかはこうしてくれ
てたんだって。
それで、今お父さんにこうしてるのはね、
さっき一緒に泣いてくれてありがとうの気持ちと
ね。
あの子とのわだかまりを癒してくれて
ありがとうの気持ちと、いつも見守ってくれて
ありがとう…の気持ちなのです。
大胆な事しているのはわかってるけど
お父さんにこうしてあげたくて仕方なかったの。
ごめんなさい…とあと少し…ちょっとだけー
逆セクハラ、ここは笑うとこね♪。」
「…うん…ありがとう…心地いいよとても…。」
「うん♪お父さん、ありがとう本当に…。」
「じゃあ…背中お願い致します!」
と抱いていた腕をそっと解いた、
当然お父さんの眼の前には、私のお胸があるので
お父さんは目を閉じていた。
ゆっくりと背中を向けて座ると床だと低いからと
後ろから椅子が腰に当てられた。
座り直して待っていると。
「じゃあ洗うよ?」と言われた。
「あらためてお願い致します」
―何だか照れくさい
「所で瑞月ちゃんに頭を抱かれたのは何でだい?」
「あ…それはね、フフ♪…ふざけてたら
瑞月を驚かせちゃて頭ぶたれたの、で結構痛くて
うずくまってたら、瑞月がごめん!って
頭抱えて撫でてくれたの。」
「…あ、裸じゃ無かったんだね…」
「そうよ、今お父さんにしたのは
その方が心地良いかなって
あとほんとに嬉しかったから、その気持ちが
強かったからだよ。」
「おふくろにも子供の頃してもらったなぁ…
小さい頃だったけど……あと母さんにもね。
まさかこの年で娘にしてもらうとは思わなかった
よ。」
「なぁ〜んだ、お母さんにもされてたんだ…。」
「おや、やきもちかい?それは嬉しいね。」
「ふぅ〜んだ、お父さんなんか大好きだ!」
「あはは、ありがとう」
「もぉ〜こちらこそ!ふふふ」
「…大きくなったけど、小さな背中だなぁ〜」
「…そうかな〜?お父さんと比べたらね」
―なんだか少し嬉しそう…私も嬉しい。
「…でも、いい友達が出来て嬉しいよ」
―たまに意地悪だけどね♪
「うん私も、瑞月はお父さんの次に好きかな〜」
―瑞月はどうなんだろう
「…そうなのか…お父さん抜きにして
一番だったら瑞月ちゃんと付き合ったりするのかい?」
―女の子だよ〜瑞月は、いちを…フフ
「…うん?女の子同士だよ?」
「まぁ〜そうだけど、お父さんの次なんだろう?」
―あれ?そっか女の子なのにね?
「うーん…うん?あれ〜?」
―友達として…よりは強い??
「あっはっは!悩む余地が多いにあるんだね!」
「えー私女の子好きなの?あれ〜?…
でもお父さん、瑞月すっごい男の子みたいだよ、
しっかり者で皆に頼りにされてるの!」
「へぇ〜だから佳樹も頼ってるのかな?」
―うん、すごく頼ってばかり…
「私は良くからかわれてます〜」
―楽しいからいいけど
「益々会ってみたいよ佳樹の一番の友達に」
―それはそうだけど
「うん♪お父さんは私のだけどね♪」
―また抱き着いちゃうよ〜まったく…
「はいはい、わかってますよ〜さーてそろそろどうだい?、こんなもんかな?」
「ありがとうお父さん♪」
湯船入ろう?と言うと、今日はお父さんタオルで隠してた…残念♪
「おっと!急に振り返らないでくれよ〜
さっきも言ったけどお父さんも恥ずかしいんだか
らな〜」
「私はいいのになぁ〜お父さんだけ隠してる〜
ずるいなぁ〜ふふ」
―タオル奪うふりして握っちゃおうかな…
「いや…そうは言うけどなぁ」
―嘘です、したいけど…フフ
「あ、そう言えばお父さんの話は何?」
「あ…あ…大した事じゃないんだ…いや大した事あるかな…」
「なに?」 ―お説教じゃなかったホッ…
「あ、や…その…昨日成長した……変に受け取ら
ないでくれ?…その…綺麗だったんだ…。」
「?何が?」 ―綺麗?
「…その…だから佳樹がな…自分の娘と言う贔屓
目で見ても、綺麗だなって思ったんだ。」
「そ、そうなんだ…」―ちょっと照れるよ…
「…うん…そのね…あー…あの小さかった佳樹が
ね…大きくなって、…女性として変わって行って
て…その…えー…
そんな女性へ成長を見る事は…ないと思っていたんだ。
会社に女の子のいるお父さんと話した時、
毛嫌いされている…とか聞いていたから、
それが普通だと思っていたんだ。
だから…まさかこんな風に風呂とか入ると思って
なくてね…父さんも恥ずかしいから…直視出来な
いけど、女性として…綺麗だなって。
元気に成長してくれたんだなって思って…。」
「…そんなふうに…言われたら…恥ずかしい…」
―どうしよう…目眩がする…
「ああ…ごめんそう言うつもりじゃなくて…んー
すまない…うまく言えない…。」
―見て欲しい…私を…
「…私は…へんな目で…見てもらいたい…。」
「昨日…お父さんがお風呂上がった…後に…」
身体を洗おうとしたら…ね胸の先が凄く硬くなっ
てて………その……ここの…小さいのも…かたく
なって…今も…変で……
ぁぁああ…やっぱりなしーー!!
…やだぁ……恥ずかしいどうしよう!!
おおお父さん!ごめんね!わ!私先に上がる
ね!」
私凄く今エッチだ…!変な気分だ!どうしよう!
本当ならお父さんに抱きつきたい!
でも!逃げ出したい!!
恥ずかしくて、でも今湯船から出たら胸もアソコ
も変になってるの見れちゃうかもと思うと出るに
でれない……どうしよう!…。
「お父さん…ごめんなさい…なんだか…恥ずかし
くて…少しあっち向いてて…くれる?」
あれ?お…お父さん?
…お父さん?…びっくりしたまま動かないーー!
あぁ…もうダメ…見られてもいい!逃げたい!
「…す…すまない…けいまだ頭洗ってないだろう
おとーさん上がるからゆっくりしなさい……」
と言うとお父さんは前を隠しながらボーと、
滑るように出ていった…平気かな…。
はぁぁぁ…何で?見られたって、抱き着いたって
平気だったのに…なんで……
私は湯船からゆっくり上がって…自分の胸元を見
た…
触らなくたってわかる…胸の先が疼いてる…
お腹の下がジワジワと何か温かかく感じる…。
触っも変わらないのに…。
そして一番の変化が起きたのは…椅子に座ろうと
身を屈めた途端、身体の中心から じゅわり と
何かが垂れて出てきた…声に出てしまった…
「うえ!?」
手で掬うと…透明で少し糸を引いてしまうような
粘液が………………
いや……だって……。
「…これが…濡れるなんだ……」
そして気が付いた…。
手で掬った時に触れた小さな突起が痛くなくて…
痺れるようなくすぐったいような…なんとも言え
ない感覚に……。
今なら…触っても痛くないのかも……
そう思ったらまたじわりと粘液が出てくるのを感
じた…。
…どうしよう私…
…なんか汚らしい……でも凄くいやらしい……。
好奇心から私はそっと撫でてみた…。
その刺激は強くて…痛くはないけど…頭が拒否す
るような刺激の強さ…感覚…これは無理…。
心と身体が切ない…それはきっとさらに下…。
何かが要求されているのに……触れると気持ち良
くはない……。
何よこれ?どうしたらいいの…
自分の中で求める欲求と身体の反応が相容れない
もどかしさが、より興奮と好奇心をくすぐる…
さらに下へ私の指は伸びて…その周りを撫でてみ
る…「…ん…」
凄い…感触は艶めかしくて…柔らかくて…
…そして何かを求めているそこに指を少し入れて
みた…
「…ハァ…」
柔らかい…いやらしい…でも…奥がある…。
さらにゆっくりとなぞるよう指を進めた…
ゾクリとする腰が勝手に引けて
チュプと音をたてながら…
そこから指が遠ざかる…「ん…」
気持ちよさから遠ざかった指に
甘い寂しさを覚えた…。
頭の中の私はさらに求めようとしている
でも慣れていないからなのか、刺激が強いからか
身体がビクリと逃げるように
そこから甘い指が遠ざかる……。
もどかしい……少し入った指がどうなっている
のか見てみたくて手を顔に近づける…
匂いはない…思ったよりも指先しか濡れてなか
った、どれだけ深いんだろう…。
いやらしく濡れている指を見て居ると
私は言いようのない恥ずかしさから顔上げ
お風呂の鏡を見た…息が荒かったことに初めて気
が付いた。
鏡の中の私は頬を紅く染めて泣きそうな…
切なそうな表情をしていた。
鏡に映る自分を観ながら、その指を舐めてみる
……ヌルリとして溶けていく感触に興奮した…。
汚い…わかってる…いやらしい…
くすぐったい…変態…でも、そのどれもが
紛れもなく私だった…。
自分の変わりように、体の変化にゆっくりと
意識が向いた…きっとみんなもこんな風に
驚いて…興奮して…自分を知って行ってるんだ…。
イクなんて程遠い経験だった…。
身体はまだせつないような…感覚…でも頭は少し
冷静になって、途端に自分のしていた事に
恥ずかしくなる…それよりも嬉しくなる…
少しわかった気がしたから…。
すっかり冷静になって身体が少し冷えていること
に気が付いた…「もう一度温まろう……。」
シャワーでもう一度身体を流し
湯船に入いろうとした時ふと気になった…
「お湯につかったらこの粘液どうなるのかな…
ていうか…これ自分で出てくるのを止めれないの
かな?」疑問を持ちつつも
私はあまり自分を興奮させないよう
ペタリとソコを触って、あれ以上エッチなものが
出てきていないのを確認して湯船に浸かって
その後身体を洗ってお風呂をでた…。
あ!着替え持ってきてなかったとタオルを巻いた
まま部屋に行く所で、お父さんの部屋からまだ
明かりが漏れているのに気が付いた。
そっと覗くとノートパソコンの前でお父さんは、
あれこれ書類をみながら仕事をしていた。
「……おとーさん、まだお仕事?」
お父さんは振り返ると
「ん、あぁ…後少しで終わるんだ、けい今出たの
か、湯冷めするから早く服を着なさい、あ、それ
と少ししたら父さんコーヒー飲むけど、けい
も何か温かいの飲むかい?」
「うん…私も頂きます、着替えてくるね」
「わかった、沸かしておくよ」
私はさっきまでのこともあって短く返事をして
着替えに行った。
台所ではもうお父さんがお湯を沸かして支度をしていた。
さっきの事…皆に平気で私が聞いていた恥ずか
しい事、私はやっと理解できた。
『恥ずかしい事の』言葉の中にあるその経験の意味。
その経験を知るまでの経緯…。
その経緯で知った汚らしくていやらしい、でも、
それを望んでしまう渇きのような高揚感。
なんてことを私は平気な顔で聞いていたのだろう…。
瑞月も、恵美ちゃんも本当は嫌じゃなかったのか
な…明日私も、話してくれた二人に話そう…。
私の一面、いやらしい私の事を…。
私は紅茶の入ったカップを両手で持って
ぼんやりと、そんな事を考えていた…。
今回は、ここまで。
読んで頂けたら幸いに御座います。
いたらぬ所はご容赦下さいませm(__)m
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