第30話「生徒が行方不明になりました」③
翌日の昼休み。
蒼太と美月は、伊勢山のクラスである二年A組に来ていた。
「本当は持田先生に聞くのが早いけど……首突っ込むなって釘を刺されてるからね」
蒼太が苦い顔を浮かべながら、教室のドアを開けた。
「このクラスには確か……あ、川瀬さん〜」
蒼太が手を振ると、目を丸くした川瀬が近付いてきた。生徒会書記を務める彼女とも事件で何度か関わっていた。
「どうされたんですか?あ、もしかして……」
川瀬がちらりと視線を向けると蒼太は小さく頷いた。
「行方不明の生徒について聞きたいんだ」
蒼太の言葉に、川瀬が息を呑む。
「うちのクラスから二人も出てますもんね……」
口元に当てられた指がかすかに震えていた。
「伊勢山くんと、もう一人の生徒は仲が良かったのかな?」
「そうなんです。いつも一緒にいました」
川瀬は、ふと何かを思い出したように話を続けた。
「それに、最近行方不明になったもう一人の生徒は文芸部の後輩らしくて……」
蒼太の眉がぴくりと動いた。
「お昼休みに、よく伊勢山くんたちに会いに来てるのを見かけました」
蒼太と美月が顔を見合わせた。
「その三人のことで、他に知ってることあるかな?どんなことでも良いんだ」
「う~ん……そう言えば、咲奈ちゃんから聞いたんですが、その一年生の子が少し前に持田先生に呼び出されてたみたいで」
蒼太の目付きがわずかに鋭くなった。
「ありがとう、川瀬さん。助かったよ」
川瀬が表情を和らげると、会釈をしながら教室へと戻っていった。
「……どうやら僕らの考えは当たってそうだね」
蒼太が教室を見つめながらつぶやく。
「伊勢山先輩たちは……どこに行ってしまったんでしょうか」
「この辺りに天静教関連の建物があるのかもしれない……それか、その代わりになりそうな場所」
蒼太の言葉に美月は、ふとあることを思い出した。
「そう言えば……この町の端に廃墟があるんです」
「廃墟?」
美月が小さく頷く。
「小さい頃、両親や先生から近づいちゃいけないって言われてた場所で……」
「そっか、美月ちゃんはこの辺りに住んでるもんね」
生まれてからずっとこの町で暮らしてきた美月は、過去のある出来事を思い出した。
「小学生の頃……クラスの男の子が肝試しをしにその廃墟に行こうって話をしてて、私はそれを止めようと後を追ったんです」
男子たちを追いかけて、美月は曲がり角を曲がった。
すると、騒いでいた男子たちが建物の前でぴたりと固まっていた。
異様なほど真っ白で無機質な外観。
黒い鉄格子で作られた門が、ギギギと耳に刺さるような音を響かせる。
幼い美月は、言葉を失ったままその場に立ち尽くした。
「その建物に近づくな!呪われるぞ!!」
背後から聞こえた老人の怒鳴り声に、美月の体が飛び跳ねた。
その声を合図に、男子たちは声を上げながら一斉にその場から走り去った。
美月も震える足を必死に動かし、来た道を全力で戻った。
振り返ることはできず、そのまま自宅へとまっすぐ帰った。
「それ以来、一度も近寄ったことはないんです。今も残ってるのか……」
美月がぎゅっと眉を寄せる。
「いわくつきのようだね……調べてみよう」
蒼太はスマホを取り出し、地図アプリを開いた。
「どの辺りか覚えてる?」
蒼太がスマホの画面を美月に見せると、美月がそっと指をさした。
「ここのはずなんですが、地図に載ってない……」
美月が眉をひそめる。
「実際に行ってみないとわからなそうだね」
蒼太は画面を見つめながら、ゆっくりと息を吐いた。
「……美月ちゃん。この件は持田先生にも止められてるし、危険性も高い」
蒼太は美月の瞳をまっすぐ見つめた。
「それでも……僕は、事件の真相を確かめたいんだ」
蒼太の瞳から強い意志が感じられる。
止めなくてはいけない。
それでも、胸の奥から探偵としての好奇心が溢れ出てきてしまう。
「……私も行きます」
美月の言葉に、蒼太が微笑みを浮かべた。
「ありがとう。……心強いよ」
二人はお互いの顔を見つめながら、決意を固めた。
「その前に、準備をしておこう」
「準備?」
蒼太は、スマホと一枚の紙を持ちながらにこりと微笑んだ。
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