第21話 騎馬戦

「それでは、騎馬戦に出場される、選手の皆様は準備を整え、スタートラインでお待ち下さい」


私たちは、審判の指示に従い、スタートラインで開始の合図を待っていた。


「立花さん、作戦通り、私たちA組はクラスで固まって行動して一人ずつ潰していけば良い?」


「ええ、それでお願いします、」


私たちのクラスの作戦は、数の優位を利用して、二人一組で、一人になっているチームを囲み、一人ずつ、着実に潰す作戦でした。


この騎馬戦は制限時間が付いているので、無理して全員を潰す必要がないので、一番効率の良い作戦です。


「そろそろですか」


「これより騎馬戦を開始いたします」


「3、2、1、」


開始の合図として、スターターピストルが、鳴らされた。


これにより、すべてのチームが一斉に動き出しました。


(一番連携が取れていないチームは...... )


「みなさん!、まずは一番チームワークの取れていないDクラスを狙います!」


一クラスのチーム数は四チームなので、二人一組で行動して一人を囲み潰しに行きました。


(後ろが、ガラ空きですよ!)


「しまった!」


「まずは、一チームです!、皆さんも...... !」


後ろを向くと、Dクラスは全滅していました。


「...... !やはり私の障害となり得るのは貴方でしたか、夜空さん!」


そこには、Dクラス三人分の鉢巻を手に持った夜空さんが、居ました。


「ごめんね?愛鈴の狙ってる獲物を横取りしたかったわけじゃないんだけど、流石にライバルが着実に点をとりに行ってるのをみすみす見逃すわけには、いかないからさ!」


そう言うと夜空さんは、私の鉢巻を狙いに来ました。


「喋りながら狙ってくるとは随分卑怯ですね?」

「卑怯?これは戦いだよ?卑怯もへったくれも無いんじゃないかな!、それに、ここで愛鈴さえ、食い止められれば、Bクラスの勝利はほとんど間違いないからさ?」


「見てみなよ愛鈴?今頃は私の仲間がDクラスとAクラスを潰してるころだから...... えっ、」


それは私たちにとって予想外の光景でした、そこには私たちのクラスも夜空のクラスも、私たち以外が鉢巻を取られ、何者かに取られた痕跡だけが残っていました。


「いったい何が......、夜空後ろ!」


「あれぇ、おかしいなぁ鉢巻取れたと思ったんだけどなぁ?」


(全く気づかなかった、一体いつからそこに!)


そこにはCクラスの、神道沙耶さんがいました。


「沙耶、一体いつからそこに居たの?」


「いつからってずっとだよ?」


「なっ、」


「えっ、」


「みんな気づかないんだよ?違うクラス同士でやり合ってるから、みんなわたしに気がつかないで鉢巻を取られちゃうんだぁ?」


そう言うと、神道さんは夜空さんの鉢巻を再び狙った。


「危ないなあ、気づくの一瞬でも遅れてたら鉢巻取られてたよ?」


(どこかおかしい、でもいったいどこが?)


私はこの状況を打開するために策を練っていました。


そこで私は、違和感の正体に気がつきました。


「夜空さん!この試合が始まってからCクラスの神道さん以外の方を一度でも見ましたか?」


「Cクラス?、確か私のクラスの人たちが見つけて鉢巻取りに行ってたはずだよ?」


「やはりそうですか...... 神道さん!貴方、仲間を囮に使いましたね?」


「!よく気づいたね、でもどうやって気づいたの?」


「この違和感に気づいたきっかけは、一つの違和感からでした、最初はCクラスが他のチームにやられただけかと思いました、ですが、考えれば考えるほどわからなくなりました、何故こんなにも強い神道さんがいて、そんなにあっさり倒されたのかが、そう考えてるうちに思い出しました、さっき神道さんが言った違うクラス同士でやり合ってるって言葉、あれはAとBクラスが争ってるから取りやすかったって意味ではなく、Cクラスを囮に使って注意を引いていたから狙いやすかったって意味だったのでは無いのかと思いました。」


「そして、さっき夜空さんに聞いて、確信しました!、神道さんがCクラスを囮に使ったのだと」


「なるほどねぇ、でも、それに今更気づいてももう遅いし、後30秒で時間だよ?」


「ええ、私たちには、もう策なんてものは何一つ残されちゃいませんですので...... 夜空さん!貴方に頼まないといけないのは少し癪に触りますが、残りの60秒!私と協力してはもらえないでしょうか!」


私に残された可能性は、もうこれしかありませんでした。


「もう、愛鈴からのお願いじゃあ断れないな!共闘しようか!」


「...... !ご協力、感謝いたします、この借りは必ずお返ししますので!」


「それで私はどうすれば良い?」

「作戦をお伝えしますので、一度こっちに来てもらえますか?」


「わかった!」


そうして私は夜空に作戦を伝えました。


「ねぇねぇ、話は終わった?」


「ええ、今終わったところです!」

「こっからは反撃返しと行こうか!」


そう言うと夜空は、作戦通り神道さんへと向かって行きました。


「そんな策も何も無い攻撃じゃ意味なんてないよ?」


夜空は神道さんが大事そうに持っていたぬいぐるみを狙った。


「これ、大事なものなんじゃ無いの?」

「返して!」

「大事なものなら、最初から私みたいな意地悪な女に取られないように持って来ないようにしないとね!」


神道さんは表情を変えて、夜空さんへと向かって行きました。


「愛鈴!」


「ええ、わかってます!」


私は理性を失っている、神道さんの後ろへと回り込み鉢巻へと手を伸ばしました。


(お願いします!夜空やみんなにここまでさせたんです!どうにかこの勝負だけは!)


「しまっ...... !」


「行けっ!愛鈴!」


「そこまで!時間になったので、試合はこれで終了といたします!最後にとった鉢巻に関しましてはカメラで確認中ですのでお待ち下さい」


(お願いします!どうか)


結果が決まりました!


「一位に輝いたクラスは...... 鉢巻の合計10枚で、Cクラスとなります!」


(そんな、夜空たちがあんなに頑張って下さったのに、)


「いや〜だいぶ惜しかったね?」

「夜空...... 怒ってないんですか?」


私は夜空たちの頑張りを無駄にしてしまった自分のことがどうしても許せなかった。


「怒る、私が...... ?なんで?」


「だって私は夜空さんたちが、あんなにも頑張って下さったのにこのような結果を...... 」


「あのね愛鈴、最後の結果に文句があるやつなんて一人もいないよ?怒るどころかみんな愛鈴に感謝してる」


「私たちだけだったらそもそもあんなにも惜しい結果すら残せていなかったもん、だから愛鈴、自信持ちなよ!愛鈴はみんなをここまで引っ張って来た、それは胸を張って良いことなんじゃない?」


「ええ、夜空の言うとおりですね、ですが、来年は必ずやこの借りをお返しいたしますよ!」


(これが敗北すると言うことですか、不思議な感覚ですね)


私は夜空に言われてから不思議と、清々しい気分になっていた。


「後は、要がCクラスを倒してくれることを祈ろうか!」


「ええ!」


(要くん...... 頑張って下さいね!)


こうして私たちの騎馬戦は終了した。




















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