第3話

「帰宅と炭酸抜けジュース」


 放課後。チャイムが鳴り終わったばかりの校門を、ムルとピカタは並んで歩いていた。

「なぁムル、今日も“焦げパン”って呼ばれてたな」

「……わざわざ蒸し返すなや」

 ムルは肩を落としつつ、トボトボと歩調を進める。


 そこにタシャが軽快な足取りで追いついてきた。

「おつかれ〜。いやぁ今日のムル、めっちゃイジられてたねぇ」

「お前も言うなや!!」

 ツッコミと笑いが入り交じりながら、三人はシェアハウスへの帰路についた。


 ――ガチャリ。

 玄関を開けると、靴が散乱していた。誰のものかすら分からない。

「おい、誰だよこれ散らかしたの」

 ピカタが眉をひそめる。

「……まぁ、まとめて置いときゃええやろ」

 結局、ムルが自分の靴も他人の靴も全部並べ直す羽目になった。


 リビングに入ると、ようやくホッと一息。ムルはそのまま冷蔵庫に直行する。

「おっ、ジュースあるやん」

 勝手に一本取り出してプシュッと開けた瞬間、タシャが血相を変えた。

「ちょっと! それ私が楽しみにしてた最後の一本!!」

 ムルは一口ごくりと飲む。

「……あ、これ炭酸抜けてるわ」

 間髪入れず、タシャとピカタが揃って叫ぶ。

「最初に言えやぁぁぁ!!」


 リビングに笑いと怒号が響き渡り、三人の放課後は今日も賑やかに過ぎていった。

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