第13話 封印なんたらかんたら、よく覚えていないタイトル
■■■■ NOTICE ■■■■
※この話は「ウェブ小説霊安室」に保管された供養断片です。
本編化の予定はありません。
もし「まだ生きてる!」と思う方は――
「ささやき、えいしょう、いのり、ねんじろ」
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深夜の帳が、
街路地の裏路地を
ひっそりと包み込んでいた。
ぼろぼろの木造建築に
かろうじて吊るされた
ランプの薄暗い光が、
工房の看板を
朧げに照らし出す。
『カエデ工房 ──魔法陣彫刻─』
魔力適性を持たないはずの
男性の名前。
それはこの世界において、
存在しない職業だ。
けれど、この世界の
理不尽な法則は、
俺には通用しない。
俺は、異世界から転生した
唯一の例外だからだ。
工房の奥、
手術台のように無機質な
ベッドの上で、
一人の若い女性が
震える体で横たわっていた。
彼女は、街の貧しい
スラム街から
連れてこられた奴隷だ。
妹の病を治すために、
彼女はすべてを
差し出すことを決めた。
俺は彼女の、
その細い手首を掴み、
冷たい声で確認する。
「……もう一度、言う。
俺の技術は、肉体に
直接魔法陣を刻む禁忌の術だ。
その対価として、
お前たちの身体を
預けてもらう。
一度でも契約すれば、
生涯俺の管理下に置かれる。
…それでも、良いか?」
震えながらも、
彼女はか細い声で答えた。
「はい……お願いします」
その声には、
妹を救いたいという
切実な願いと、
抗いがたい恐怖が
ない交ぜになっていた。
彼女の覚悟に、
俺は無表情で頷く。
探求心。
俺の行動原理は、
それだけだ。
魔法陣の真理を
探求するためなら、
どんな禁忌も、
どんな倫理も、
俺にとって、
取るに足らないものだった。
俺は、彼女の服を
ゆっくりと剥ぎ取った。
すると、その身体には、
虐げられた痕跡が、
くっきりと残されていた。
痩せこけた身体に
生々しい打撲痕や、
古傷が刻まれている。
俺はその現実を、
ただのデータとして
認識した。
感情はない。
俺は、特殊な魔力が
込められた
彫刻刀のような道具を
手に取った。
彼女は、その道具を
見た瞬間、
目を見開いて怯えた。
無理もない。
これから、
彼女の身体に、
一生消えない
紋様を刻み込むのだから。
俺は、まず彼女の胸、
正確には心臓の少し上、
女性の身体の
「心核」と呼ばれる部分に、
繊細な線を刻み始めた。
その瞬間、彼女は
ビクッと大きく跳ね上がり、
「ひっ……!」と
小さな悲鳴を上げた。
痛みと恐怖で、
身体が硬直する。
「動くな。
途中で失敗すれば、
お前の身体は
永遠に魔力を
受け付けなくなる」
俺の言葉に、彼女は
必死に歯を食いしばり、
痛みに耐える。
やがて、その線が
一つの魔法陣を
形成し始めた。
それは、ただの幾何学模様ではなく、
この世界の魔力の流れを
完全に無視し、
俺の探求によって
生み出された
異質な技術の結晶だ。
彫刻刀の刃が、
彼女の肌を
なぞるたびに、
魔力による熱が
じんわりと広がっていく。
彼女の額には
汗がにじみ、
心臓は激しく鼓動を
打ち始めた。
その鼓動の速さは、
恐怖からくるものか、
それとも、
異質な力が身体に
流れ込んでいることへの
生理的な反応か。
次に俺は、
彼女の下腹部に
手を伸ばした。
女性にとって、
最もデリケートで
秘匿されるべき場所。
触れた瞬間、
彼女の体が
再び大きく跳ね、
「あ……!」と
言葉にならない
吐息が漏れた。
恐怖と羞恥。
しかし、
それだけではない。
俺の指が、
その部位に
触れている感触。
それは、
痛みの先にある、
抗いがたい、
甘美な痺れを
伴っていた。
身体の芯から
湧き上がる
熱と、
未知の快感。
彼女の理性が
悲鳴を上げる。
違う、違う……!
これは、妹を救うための、
清廉な行為のはず……!
だが、
彼女の身体は、
正直に反応した。
呼吸が荒くなり、
目が潤む。
羞恥の涙か、
それとも、
快感によるものか。
俺は構わず、
その部位に
「生命の泉」と
呼ばれる
魔法陣を刻み込む。
それは、
彼女の生命力を
爆発的に増幅させる
代わりに、
施術者である俺との間に
絶対的な
支配関係を構築する、
危険な術式だった。
全ての工程が終わり、
彼女はぐったりと
ベッドに倒れ込んだ。
疲労と痛みに加え、
初めて体験する感覚の
混濁に、
意識が朦朧としている。
俺は、自身の指先に
魔力を集中させ、
彼女の身体に刻まれた
魔法陣に
そっと触れた。
途端、
彼女の身体に、
温かく、
重く、
濃厚な魔力が
流れ込んでいく。
それはまるで、
枯渇した大地に
生命の雨が
降り注ぐような、
圧倒的な充足感だった。
「……ぁ、ああ」
彼女の口から、
安堵のような、
甘美な吐息が漏れる。
視界がクリアになり、
疲労が消え去り、
五感が研ぎ澄まされていく。
俺の存在だけが、
彼女の
世界の全てになった。
過去の記憶、
妹を救うという目的、
羞恥、嫌悪、
そして恐怖……
そういった
彼女の自我を形作っていた
要素が、
快感と充足によって
上書きされ、
純粋な渇望と
忠誠へと
昇華されていく。
意識が覚醒した彼女は、
ゆっくりと瞼を開け、
俺を見つめた。
その瞳に、
かつての怯えや
葛藤はなかった。
「……マスター」
彼女は、まるで
生まれたての雛鳥が
親を見つめるように、
俺を見つめ、
そう呟いた。
俺は、
静かに頷く。
これでいい。
探求のためには、
この結果が
最も効率が良い。
翌朝、
工房の扉が開かれ、
リーゼロッテが
姿を現す。
彼女は、
ベッドで
静かに眠る
奴隷の女を見て、
皮肉めいた笑みを浮かべた。
「昨夜は……
お楽しみでしたね、
マスター?」
その言葉に、
女の表情が、
葛藤を乗り越えた後の
甘美な安堵と、
深い依存を示していた。
これは、
カエデの探求の
始まりであり、
多くの女性の人生が
歪められる、
物語の序章だった。
【診断結果】
主人公が男だったと思っていたら女だったため、心肺停止。
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