第3話

 (ふたりは勢いのままに教室の外に出た)


SE//ガヤガヤと人が話している


SE//分厚いソールの靴で歩く音


(後ろの方から)

「あの……。さっきのことなんですけど……」


SE//しおんは軽く笑っている


「お義兄さん……歩くの早いです」


「追いつかない……。あの……、もしかして、怒ってるんですか……?」


SE//しおんが僕の背中にぶつかる音


「急に止まらないでください。びっくりした……」


「あの……。やっぱりからかったこと、怒ってますよね……?」


「いえ……。文化祭の出し物のコンセプトをごまかした、わたしのせいですね……」


「説明すると、地雷系メンヘラがコンセプトのカフェだったんですよ?」


SE//しおん肩をふるわせて笑う


「急に……ああいう態度をとったら……、困りますよね?」


「ウチのクラス、最初はメイドカフェをやろうとしてたんです。でも、メイド服を来たい子があんまりいないし……、それに、あんまりおもしろくないってなったんです」


「それから、多数決をとって、メンヘラカフェになったんです。みんな地雷服なら、着てみたかったみたいです。かわいいじゃないですか」


「で、で、メンヘラに合わせた演技をしようってことになって……。わたしそのコンセプトに沿って、演技してただけです」


(僕はしおんから視線をそらして、そっぽを向く)


(しおんの顔から血の気が引く)


「あの、あの……。エナジードリンクだって、中学生が飲めるやつだし、クラスでひとり1本までって決めてるんです……」


SE//しおんが僕の服をつかんでこすれる音


「さっきのは、全部……演技ですから……」


「本心でいってるわけ……ないじゃないです」


「でも、お義兄さんがどんな反応するのか、気になっちゃって……」


(僕はしおんの方に振り返る)


「えっと……、かわいかったですよ?」


「……ごめんなさい」


「別に気にしてない……ですか……?」


「あの……、許してくれるんですか?」


「……怒ってたわけじゃない?ただ、心配しただけ……。いつもと雰囲気が違うから……」


「急にあんなに情緒不安定になったら、誰だって心配するって?」


「わたしが、急に変になっちゃったんじゃないか……」


「それに、あんな寂しい思いを僕がさせたんじゃないかって不安になった……」


(しおんは僕から顔をそむけながら)


「ふ~~ん。……へぇ~~~。……そうなんですね」


「心配してくれるんですね~」


「いえ、なんでもないです」


(少し、沈黙が流れる)


「あの……、さっきエナドリはひとり1本までっていったじゃないですか……」


「その1本をお義兄さんの接客したときの飲んだんです……」


(少し沈黙ができる)


「……全部演技っていいましたけど……」


(しおんは背伸びをして、僕の耳のもとでささやく)


SE//しおんが僕の方に手をおいて、服がこすれる音


「ホントのことだって、いいました」


「嘘にホントのこと混ぜないと……演技にならないでしょ?」


(しおんは背伸びをやめる)


「……わたしは悪い義妹なんです」


「冗談です」


(やや間があって)


「そういえば、クラスのみんなに頼んで、シフト変えてもらったので、一緒に文化祭まわれますよ?」


「行きませんか?」

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