第4章 崩壊の兆し
デューンたちが旅立つ決意を固めて間もなく、各地から不穏な知らせが届き始めた。
村が一夜にして消滅した。
山が裂け、そこから黒い水が溢れ出た。
海を渡る船が、突如として時の狭間に吸い込まれ、消息を絶った。
すべての現象の中心には、必ず――水瓶の影があった。
「……やはり、始まってしまったようね」
アメリアは沈痛な面持ちで報告を聞いていた。
ダームの町の酒場。
冒険者や商人たちが怯えながら噂を語り合うその場で、デューンたちは事態の深刻さを知った。
「一体どれだけの水瓶が現れているんだ?」
ポルナレフが苛立ちを隠さずテーブルを叩いた。
「正確な数は分からない」
アメリアは首を振る。
「だが水瓶は“器”に過ぎない。本質は、その奥に潜む力……デミウルゴス。
奴は時空を侵食し、世界を別の相に変えようとしている」
ミルフィーが眉を寄せる。
「別の相……って?」
「簡単に言えば、この世界を“もう一つの時間”に書き換えようとしているのだ。
そうなれば、現在も未来もなくなる。永遠に狂った循環に閉じ込められてしまう」
その言葉に、酒場の空気が一層重くなる。
周囲で噂を聞いていた人々も青ざめ、口々に祈りを捧げ始めた。
シリューが立ち上がり、外の空を見上げる。
そこには、地平線の向こうに巨大な水瓶の幻影が浮かび上がっていた。
空を覆い尽くすような圧迫感。
「……悠長にしている暇はなさそうね」
シリューは低くつぶやいた。
その時だった。
町の鐘がけたたましく鳴り響いた。
「南門だ! 魔物が押し寄せてきたぞ!」
住民の叫びに、デューンはすぐに立ち上がる。
「行くぞ! ここを守らなきゃ、旅も始まらない!」
彼らが駆けつけた南門には、すでに異形の魔物が群がっていた。
水瓶の輝きから生まれたものたち――人の姿を模しながら、どこか時間がねじれたかのように歪んだ怪物。
「この人達は……人間だったの?」
ミルフィーが震える声で呟く。
「時を奪われ、存在を歪められた者たちよ」
アメリアは厳しい表情で杖を構える。
「奴らを救う方法は、まだ見つからない……。だから今は――倒すしかない!」
デューンが聖剣を抜き、仲間たちを鼓舞するように叫ぶ。
「俺たちが立ち向かわなきゃ、この町も、世界も終わりだ! 行くぞ!」
剣と魔法が閃き、南門の戦いが始まった。
だがこれは、ほんの序章に過ぎなかった。
戦いの最中、空の幻影がより鮮明に輝き出す。
その奥から、かすかに“誰か”の声が響いてきた。
――まだ眠っているの? アポロン。
――女神が命ずる、意志に従い、目を覚ませ。
それは、かつて命を落とした男に向けられた女神の声だった。
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