第2話 少年執事のラグは赤鬼に一矢報いたい
再び銃口を向けるロディ。発射される弾丸。それを受けながらもブラックは突進しロディの撃つために突き出した両腕を挟み込んで動きを封じ強烈な頭突きを見舞った。
両手両足額から血を噴き出し、ロディは仰向けにダウン。
ダメージで拳銃も手放してしまった。
「威勢だけはあったようだが我の前ではこんなもの。さらばだ」
首を狙ってハサミを繰り出すがロディは紙一重で回避した。
まだ息がある現実に苛立ちを覚え、ブラックはロディの胴に尾を幾重にも巻き付け自分の目の高さまで吊り上げると喉奥から笑い声を発した。
「貴様には我の得意技を浴びせてやろう。暗黒雷撃鞭!」
尾から放たれた漆黒の雷がロディの全身を駆け抜ける。通常の男ならば骨も残らず消滅しているが彼は原型を保っていた。
「効かねぇなあ……お前の鞭なんざ痛くも痒くもねぇよ」
「貴様~!」
完全に頭に血が上ったブラックが幾度も雷撃を食らわせるがロディは薄笑いを浮かべて手を伸ばし、がっちりと尾を捕まえた。
「サソリさんよぉ。俺と綱引きしようや。
どっちの力が強えか白黒ハッキリつけようぜ」
ロディが渾身の力を込めると尾は千切れ、ロディは拘束から解放された。
「バカな……」
「生憎だが、俺はスター流でいちばんのバカでな」
血を流しながら銃を拾ってゆらりゆらりと接近してくるロディにブラックは戦慄した。
どれほど攻撃を加えても怯むどころか前進してくる。
最接近した末に尾も千切ってきた。
普通に戦えば分が悪い。ようやくロディの恐ろしさを認識したときは遅かった。
真っすぐに胸に銃口が突きつけられている。
「グットラック!」
別れの挨拶と共にロディは完璧にブラックの胸を撃ちぬいた。
分厚い装甲も心臓も貫通し止めを刺す。
ブラックはゆっくりと後方に倒れると黒い粒子となって消滅した。
額の汗を拭い息を吐きだすと、愛馬に笑いかける。
「戦闘は終わりだ。うまいハンバーガーでも食いにいこう」
ブルルッと白馬がいななきロディの頬に顔を寄せたとき、ロディの目の前にひとりの少女が現れた。
「ロディさん。無茶は困りますよ」
目よりも大きな丸眼鏡をかけて金髪を二つ結びにした少女の名はエリザベス。
彼女はロディを砂地に寝かせて負傷箇所に触れると瞬きする間に血は止まり傷は嘘のように癒えていく。彼女はどのようなケガでも触れるだけで治癒できる能力者だ。
「悪い悪い。エリザベスちゃんに迷惑がかかることはわかってるんだが、俺バカだから戦闘になるといつも忘れちまうんだ」
後頭部をかいて苦笑するロディにエリザベスは腰に手を当ててお冠状態だ。
「私がいなければあなたは今頃天国に行っていましたよ」
「だろうな」
「医務室でゆっくり体を休めてください」
「そうはいかねぇ。まだ戦わねぇと」
「ダメです」
断固として拒否されたのでロディは肩を落とした。
「転送してくれ」
「当たり前です」
ロディと愛馬とエリザベスは煙のようにその場から消失した。
瞬間移動でスター流本部の医務室へ送られたのである。
はやるロディを半ば強引に寝かせてエリザベスは大仰に嘆息した。
「今回の戦闘は並ではないですが、堪えますね……」
タブレットで戦局を確認する。彼女とロディ、スター流の頂点に君臨するスターを除くスター流の戦士十一人は現在、世界各地で妖怪軍団を相手に大激闘を繰り広げていた。
☆
最初から勝ち目は薄いことは自覚していたが、すこしでも人類の脅威を減らしたいという強い意志からラグは戦闘に参加していた。
日本の山奥へと赴いた彼は赤鬼と対峙。
童話などでよく見かける赤く屈強な体躯に虎柄の腰布、額には反り返った二本の角を生やし、棘のついた棍棒を軽々と振り回している。まさに鬼に金棒状態だった。
木々を破壊し足のジェットエンジンで飛行するラグに衝撃放を浴びせてくる。鋭い牙を剥き出し吠える様は機械の身体のラグでも恐怖を認識するほどだった。
ふんわりと柔らかな茶色の髪に大きな緑の瞳が特徴的な童顔の少年執事は白の執事衣装で格闘をしていた。
一気に己の武装を解放すると長期戦に不利という自身の脳のコンピューターが導きだした答えによって慎重に距離を置いて攻め立てる。
腕を変形させた機関銃もカラカラと空しい音が聞こえるばかりだ。
全ての弾を撃ち込んでしまった。両目を光らせ放ったレーザーも鬼の棍棒が巻き起こす突風ではじき返されてしまう。
ラグは歯を噛みしめて戦慄の汗を流した。
「強い……」
「ウゴーッ」
吠えた鬼が放った一撃がラグの身体に命中。彼の右腕と脇腹を破壊する。
全身から火花が飛び散り戦闘力の低下を体内のアラームが告げるがラグは逃げない。
先ほど、ロディがブラックスコーピオン相手に辛勝したとテレパシーで共有された。
彼が勝ったのだから自分もという意欲が沸いてくるが、鬼はむんずとラグの小柄な体躯を鷲掴みにした。
懸命に逃れようとするがパワーが不足している。
両肩から小型ミサイルを発射するが、煙が晴れても鬼は無傷で力は緩まない。
絶望的な戦力差。自分から志願したのに情けないとラグは涙を流した。
「皆様、あとはお願いいたします……」
赤鬼は彼の心情を嘲笑うかのように力を込めて握り潰す。
手を下に向けて開くとラグだったパーツの残骸が散らばった。
ラグ 戦闘不能
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