第17話 「黒白の居ない戦い」
海藤達は周囲を十分に確認しヤツらがいない事を確認してから行動に移した、自動ドアは店内が暗くなっている事から、電気が落ちていて重く閉ざされていた、自動ドアは何とか一人で開ける事が出来る為、堀内が手動で開け、開いた瞬間に海藤と横田の二人で入り口付近にヤツらの姿が無いことを確認し
「大丈夫そうだな」
「はい」
海藤と横田が確認を終えると四谷が二人を追い越し、近くまで迫っていたヤツらを一体倒した。
「直ぐに安心しない方がいい、あいつらの聴覚は異常だ」
四谷は小声で全員に注意し、そのまま『四谷、堀内』『海藤、篠田』の二手に分かれて調達に向かうのだった、残された波田達は、外と中に別れ周囲を警戒し始めた。
四谷と堀内の二人は食料を求めて、鉈と懐中電灯を手に店内を歩いていた、店内はそんなに広くは無い、時折どこからか呻き声が聞こえてくる、その度に周囲にヤツらの姿が無いか確認するが、どこにいるか分からないでいた
「黒白って人は本当にすごいな、こんな状況で何度も生きて帰って来ているのだから」
四谷は、今回が始めての物資調達で店内のいつ襲われるか分からない恐怖とも戦っていた、堀内は数回物資調達に来ているが、それでも道中や店内に入った時の空気には慣れずにいた
「お前の言う通りだ、あいつはすごいよ、俺たちも頑張らないとな」
堀内は何とか緊張をほぐそうと四谷に声を掛け、その言葉に
「ああ」
彼も小声で返答するのだった、更に少しだけ進んで行くと、ようやく食品コーナーまで辿り着いた、しかしその場には、数体のヤツらが確認できた、隣の列を照らして見るとヤツらの姿は無く、そこだけにヤツらがいた、堀内が動きを見ている間に、四谷が近くにいるヤツらに近づき、鉈を振り下ろした、頭部を確実に攻撃することは出来たが、その音に反応したヤツらが四谷目掛けて動き出し、それに一早く気が付いた堀内が静かに走り出し、今にも襲い掛かりそうなヤツらを仕留めた
「二体目……三体目」
体制を整えた四谷は透かさず、堀内が体制を整える前に次を仕留め、数を数えた、そのまま二人は互いの事をカバーしながら、一体、また一体と倒していった
「これで最後……」
堀内はそこにいた最後の一体に止めを刺し、周辺にいたヤツらを倒したのだった。
「無事か東吾?」
「なんとか、そっちは?」
「大丈夫だ、しっかし多いな」
二人は互いの無事を確認すると、自分達が倒してヤツらを見て驚いていた、その数7体、何故ここに集まっていたのかは分からないが、倒したヤツらを見てみると、リュックサックや、棚の周りには刃物や金槌が落ちている事に気が付いた。
「もしかして、彼らはここに物資を取りに来てヤツらに……」
堀内は倒したヤツらの事を見て見ると、足や腕に噛み後がある事にも気が付き、ヤツらの恐ろしさを感じていた
「やらなきゃ、やられる……肝に銘じておかないとな」
四谷は静かにそう言うと堀内は少し考えこみ、一言。
「ああ」
とだけ返事をして二人は、バッグに出来るだけ食品を詰めて行った。
そんな中、堀内は黒白が以前、手に掛けた男性や恩師の事を思い出していた。
「あの男性は自分がどうなるかきっと分かっていた、だから人として死なせてくれた、彼には感謝したのだろう、それに先生も自身の最後を分かったから、あんな事を……」
口には出さずにいたが、変異した彼らの事を見て思うところがあり、ふと
「なぁ東吾」
「なんだ?」
堀内はある事を思い、四谷に声を掛けた、それに対し四谷は何時もの様に聞き返し。
「もしもさ、俺が感染したら、お前が止めを刺してくれよ」
突然の返答に四谷は驚いていたが、背後を見て何かを察し。
「分かった……だけど、俺が感染した時も頼むよ」
まさかの返答に堀内も驚いていたが、一言。
「分かった、任せろ」
返答し。
「任せろって」
堀内の返答に、四谷は少しだけ笑っていた、その会話はそこで終わり、二人は物資を詰め終え入口に戻るのだった、橋の上では相変わらず煙が上がり続け、消える様子は無い
堀内達がヤツらの対処をしている頃、海藤と篠田の二人は薬や医療道具いくつかをバッグに詰めていた、薬や医療道具のいくつかは入口傍にあるおかげで、ヤツらと出くわす事は無かった。
「本格的な医療道具となると、やはり病院に行くしかないですよね」
篠田は申し訳なさそうに聞くと。
「そうだろうな、ここにあるのは市販薬や一般の人でも扱える物だから、篠田君達が欲しいのはここには無いと思うぞ、他の物資については戻ってからだな、日取りや詳しい人に着いて来て貰わないと」
海藤がそう言うと、篠田は少し残念そうに。
「そうですよね、分かりました。戻り次第ですが、篠原さん達と相談してみます」
篠田は理解を示し、詰められるだけの物資を詰めた。
「どこか、不気味だな……」
医療物資を詰めている間、ヤツらが一体も自分達の所にいる場所に姿を表さない事に疑問を持っていた。
「まぁ表れないのは、助かるが……」
周囲をいくら確認しても、ヤツらの姿は確認出来ない、それでも外では時折、爆発音が鳴っていた。
外の見張りをしている灰田と横田は、爆発音がする度に周囲をくまなく見ていた。
「あの音がヤツらを引き付けている可能性はあるけど、どこから出て来るか分からないと、緊張感はすごいな」
灰田が小声で呟き。
「その気持ちは分かるが、今は集中しないと」
横田は小声で伝えた、それを聞いた灰田は少し不服そうにしていたが、この場所で馬屋が命を落とした事を知っている、彼はその気持ちを飲み込み
「わかってるさ、今はどこにもヤツらは居なさそうだけど、警戒も緊張感も解くつもりはないよ……なんだ?」
返答した後に車の影で何かが動いたことに気が付いた。
「どうした」
「なにかが動いた」
横田と灰田の二人は異変に気が付き、その場を離れようとしたが、入り口とは少し距離が離れていた。
「今は大丈夫そうだから、誰かが戻って来たら、二人で確認しに行こう」
灰田は背後を見て、まだ中に入ったメンバーが誰も帰って来ていない事を確認し提案した。
「そうだな、いま離れたら、何が起こるか分からない」
横田は同意を示し、そのまま警戒を続けた、それからしばらくすると、四谷と堀内の二人が帰って来た。
「無事で良かったです」
無事に帰って来た四谷と堀内を見た波田は安堵していたが、足音が聞こえない中、暗闇からヤツらが迫ってきている事に気が付いた、周りが気が付かない中で波田はそっと武器を構え、ヤツらの姿を視認した、その数3体、
「さすがにこの数はヤバい……」
堀内は今の状態の危険性を感じていたが、まだ海藤と篠田の二人が戻って来ていなかった
「まずいな」
四谷も事態の深刻さを感じていて、あまりに突然の出来事に外にいた灰田と横田の二人も動けずに居た、しかし先ほど後回しにしていた、異変が灰田の背後に迫っていた、ふと視線を灰田の方に向けた横田がそれに気が付き
「くっ」
左手を掴み強く引いた、
「えっ」
と気の抜けた声を出していたが、その異変の正体は、両手が欠損したヤツらだった、そいつは車の背後で何とか立ち上がると、ゆっくりと灰田の方に向かい、噛みつこうとしていた、それに気が付いた横田の咄嗟の行動に寄り、無事だった灰田だったが店内の方はそうでもない、前方には大勢のヤツら、後方には両手を欠損しているヤツらだ、波田達の音に反応した、欠損のあるヤツらが動き出すと同時に、体制を立て直した灰田が攻撃をして、外に居たヤツらを倒す事は出来た、その後に灰田は中にいる波田に
「堀内さん達も両脇に」
本来であればこの声に反応して、襲い掛かって来るかもしれないが、今回は橋の上で、それよりも大きな爆発音が鳴り響いていた、それを聞きつけてヤツらは外に向かって歩き出し、ちょうど戻って来た海藤と篠田は何とかしてみんなを救おうとしていたが、とてもその状況では無く、二人はその場をやり過ごすしかなかった、ヤツらが全て外に出て行った直後に、背後から波田・大道・堀内・四谷の四人で、前方は灰田と横田の二人で倒して行った、その後に波田達は互いの事を見合わせ、何も言わずに外に出て行った。
「全員無事で良かった」
灰田は全員の無事を見て安堵していたが、海藤はさっき倒したヤツらを見て。
「こいつらをどうにかしないと、今後の調達に差し支えるな……」
呟いた後に、ヤツらを店内から運び出し始めた、その光景を見て大道や篠田は驚いていたが、他のメンバーは海藤の後に続き、手分けしてヤツらを外に運び出して行くのだった、運んで行く先を篠田が見ていると、そこには今までこの場所で倒したヤツらで出来た死体の山がそこにはあった。
「これって……」
篠田はその光景を見て
「仕方がないですよ、こいつらを運び出さないと、中に有る物資を持って行く事が出来ないですし、他のヤツらがこいつらを食べる為に集まってくる可能性もあるから」
灰田も慣れた手つきで動いていた。
「それに最初の頃は慣れなかったけど、こいつらをどうにかしないと何も出来ないのは事実だから……」
灰田の発言に声を出せずに驚いていたが、少し考えた後に頷き、篠田もヤツらを運び出すのを手伝い始めた、運び出そうと思いヤツらの手を引くと、それは予想以上に重く、持ち上げる事が出来ずにいた、その状態の篠田を見兼ねた波田は手を貸し、二人でどうにか運び出し、先ほどの山に投げ入れるのだった、今はまだ小さな山だが、このままだと少しずつ大きくなり、いずれは
「いつも、こんな事を?」
運び出すのが終わり、返り血を拭いながら、篠田が質問していた。
「ここまで多かったのは初めてだけど、そのままにすることが大半ですね、あそこにあるヤツらは、車調達した時に倒したヤツらで、二回目ここに来た時にあそこに集めたんですよ」
黒白がまだ避難所に居た時に、黒白抜きで来た際にそこら中にヤツらが転がっていた、だが動くか動かないか分からなかった事もあり、頭部に一刺ししてから運び出し、同じところに置いていたら、いつの間にか山になっていた。
「
海藤が以前から気になっていた事を聞くのだった。
「通常でしたら、夏場は一週間~10日、冬場だと数か月と言った感じだと思いますが、完全にとなると数年は……それに、この山のヤツらや、今も動いているヤツらにその常識が通じるのかは、正直分からないです。時間や設備があれば調べている人も居る可能性はあるかもしれないけれど、世界規模でこの状態が続いているのであれば、調べるのも困難になって来ます」
篠田は少し落ち込んだ様子で話していた、それにこのままの状況が続くのであれば、様々な事に支障が出て来る、水やガス、電気それに食料、今はスーパーやドラッグストアで調達しているが、ゆくゆくはその物資も無くなる、それに
「完全にヤツらの機能が停止するとしても、数年は掛かるのか」
海藤は先ほどの篠田からの返答を聞き、自分達が穏やかに暮らせる日々が、果てしなく遠い事を思い知り、ただ空を眺めていた。
「海藤さん、そろそろ」
灰田は動く気配が無かった海藤を見兼ねて声を掛けると、海藤は我に返り
「ああ、行こう」
皆の方を振り返り歩き出した、その背中を見ていた灰田はふと気になる事があり、ヤツらの山を眺めていた、あの山には馬屋の姿が無いのだ、海藤達と来た時にヤツらを運んだのだが、いくらさがしても馬屋の姿だけは見つからなかった、変異して居なくなったのか、それともかろうじて生きていたのか、それは定かではない、動き出したメンバーの中に灰田がいない事に気が付いた横田は灰田の近くに行き。
「行こう」
とだけ声を掛け、灰田も
「ああ」
短く返答して帰路に就くのだった。
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