第1話 「崩壊・脱出」
朝、高校に向かい朝のホームルームを終えてすぐ、一時間目の準備をしている生徒達がいる中、一人の男子生徒が何も持たずに教室から出て行った、その男子生徒の友人の一人が後を追いかけ、その生徒と共に廊下を歩いていた。
「なんだよ黒白、朝から眠そうじゃないか、さっきもでかい欠伸して、注意されてたし」
「うるせぇ、昨日、遅い時間までバイトしてたから、寝不足なんだよ」
「なるほどね、そしたら最初の授業はどうすんだよ、」
「サボるさ、いつも使ってる空き教室でさ、あそこなら誰も来ないから、ゆっくり出来るし、……まぁ、なんかあったら連絡してくれ」
そう言うと、黒白は一人、校舎の四階の隅にあるに教室に向かった、そこはあまり人が来なく、外に出ると校門や職員室、他の教室もいくつか見える事もあり、サボり場所としては打って付けなのだ、また黒白は内緒でその教室と屋上のカギを複製していた事もあり、どちらにも自由に出入りできる状態だった。
「まさか、前に本で読んだ内容を試してみたら、本当にスペアキーが作れるとは思って無かったけどなぁ、バレたら停学か退学になるのは確実だろうな」
静かに呟き、黒白は教壇の裏に隠れスマホを充電しながら目を閉じた、しばらく眠っていると、外から何やら騒がしい声が聴こえ黒白は眠い目を擦りながら、声のする方に視線をやると、体育の授業を担当している教師と他数名の教師が一本のさすまたを持ち、校門前に居る二人の不振人物の下に向かった、黒白の居る教室からでは校門に居る不振人物たちの事は良く見えなかったがその頃、街中では一人また一人と噛み殺される事件が世界規模で多発しており、警察や医療機関の電話は既にパンクしていた、またその様子も一部のメディアでは既にその一部始終が撮影されているのだった、そんな中、黒白達の通う学校にもその魔の手が近づいてきているのだった。
「さっきから何なんだあんたは、ここは立ち入り禁止なんだ、今すぐ帰れ」
体育教師が声を荒げて言うと後ろに居たもう一人も学校の方に近づいて来た、だがどちらも正気には思えない様子だ、奥の方に居た人の足元を見て見ると、地面に血痕があり両名とも、ずっと低いうなり声を上げているからだ、教師たちはそのことに気が付かず、ただの不審者だと思い込んでいた。
体育教師の男が威嚇の為、不審者?の胸倉を掴むと勢い余って
「伊藤先生、やりすぎでは?」
「いや、それがこいつ、全く力が入ってないんですよ」
伊藤が
「いってぇ、おいっ離せこいつ」
彼は何とかして引き離そうとしたが、思っていた以上に噛む力が強く、全く離そうとせず、数学教師がさすまたを使い、そいつを押し出した事もあり、ようやく引き離すことは出来たものの、伊藤の左腕は血で染まり、次第に意識が無くなり、倒れこんでしまい。
その後すぐに一緒に来ていた教師達は倒れた伊東に声を掛けながら、何とか意識が戻らないか、必死に声を掛けていたが、意識が戻ることなく時間が過ぎて行った、数学教師の津志田が、念の為に警察や病院に電話してみたのだが、何度電話しても
『現在、回線が込み合って居る為、時間を置いてからおかけ直し下さい』
と自動音声で受け答えをされるだけですぐに切れてしまい、全く取り合って貰えない状態が続き、ようやく警察に繋がったかと思いきや、現状を伝えた後に来てもらおうとすると、電話越しに叫び声が聴こえ、それに驚き、津志田はスマホを落としてしまい、先程の叫び声がスピーカーになってしまった状態で周囲にまでその声が聴こえ、その音を聞きつけ、近くに居た先程の不審者と同じ状態の人々が集まって来た、そしてその音を聞きつけてなのか、倒れていた伊藤も目を覚まし、その様子を見ていた教師たちは
伊藤先生だったモノはすぐ隣に居た用務員の首筋に噛みつき、それを見ていた他の教師たちは叫び声を上げ、一人はすぐにそこから立ち去っていたが、それ以外の教師たちは先程のスマホからの叫び声で集まって来た不審者たちに囲まれ、教師たちもまた襲われていた。
空き教室でサボっていた黒白は遠巻きではあるがその一部始終見ていた、そしてその
「おい黒白、なに廊下走ってんだ、それに今授業中だろう」
それに驚き一度足を止めたが、信頼できる教師に会えた事もあり、黒白は先程見た事を全て、その蒲田に話した
「さっき、伊藤先生たちが外に行ったきり帰って来なかった理由はそう言う事か……分かった今から校内放送を掛けて避難を呼び掛けるから、お前も千葉先生に伝えて避難しろ」
そう言い蒲田は放送室のある二階に焦った様子で降りて行き、黒白もまた自身の教室のある3階に再び走って向かい、勢いよく教室の扉を開けると皆、後ろを見たが黒白はそれを気にせず前に歩いて行った
「おい、黒白サボるのは構わないが、授業妨害は流石にっ」
と言いかけたが、黒白は先程、蒲田に言った事と同じことを伝えた、すると千葉は急いで全員に身支度を整えるように伝えた、その前に身支度を整えていたと言うよりは、サボりに行っていた為、朝来たままだった荷物を持ち、黒白は掃除用具入れを開け武器になりそうな物を物色していた、使えそうな物を選んだその時、教室のスピーカーが着いたと思ったその時、蒲田の声ではない、男の声で
「痛い、やっ止めてくれー、うわぁぁぁぁ」
と聞こえた後に骨が折れるような鈍い音が聞こえ、更には付近から再び叫び声が聴こえ、スピーカーのスイッチが切れていなかった事もあり、声の主が襲われるまでの音が聞こえてしまい、そこからは他の教室も含め
「どけっ」
他者を押し退け逃げようとする生徒
「痛い!」
人の波に吞まれけがをする人、辺りどころが悪くそのまま命を落とす人
「みんな!落ち着け」
必死に声を掛け続ける教師や生徒もいた、だがそれも遅く一人また一人と襲われていった、少し時間が経ち少し静かになり始めた頃、クラス内には三人しかおらず、黒白はそっと静かに外を見て見ると広がっていた光景は、まさに地獄の様な光景だった、噛まれた後に近くに居た、友や後輩、教師やクラスメイトに襲い掛かり、次から次へと感染が広がり、死者が増え、混乱や恐怖が蔓延していく、外から目を離し、教室の方に視線を送ると。
一人の女生徒が過呼吸になり座り込んでいた、近くにもう一人女生徒が居て過呼吸になっている生徒を介抱していた、黒白はそんな二人の様子を見ながら、自分の荷物のチェックを済ませ、最後に自分のバイクのカギがあるのを確認、その後に掃除用具入れから出した木製のモップを壊し、使いやすいようにようにし準備を終えた後に二人の女生徒の方に向かった、何とか落ち着きを取り戻したのを確認すると黒白は。
「俺は、何とかしてここから脱出するつもりだが、加藤と和田はどうする?」
彼女達には黒白の言葉は少しきつく聞こえたようだったが、二人は一度互いの顔を見た後に頷き。
「一緒に連いて行く」
涙を
付近からは足音は聞こえなかったが外からは絶えず叫び声が聞こえ、逃げている人々がいる、そして奴らに捕まり捕食され息絶える者、噛まれたのちに息絶え、変化し他者を襲いに行く者、変わり果てたヤツらに何とか攻撃を与え、難を逃れる者と様々だ、そんな中、黒白達は教室から音を立てない様に気をそっと歩き出した。
教室から出る前に二人にあくまで過程として、外で人を襲っているヤツらは大きな音に反応するかもしれないと説明した上で行動をおこした、理由としては幾つの作品でヤツらの様な存在は血の匂いや何かしらの大きな音に反応して他者を襲っている事が多いからだ……そして、もしヤツらと対峙し戦う事になった際は頭を攻撃するか、首を跳ねでもしない限り自分達も殺される可能性もある、外で偶然か必然か頭部を攻撃され、行動を停止しているヤツらも見受けられる事からそうした方が良いのだろう。
そして黒白達三人は教室から出て、昇降口まで歩き出した、幸い彼らが居るのは三階だからなのか、ヤツらは一体も居なく二階に降りることは出来たのだが、二階に降り、そのまま一階に降りようとしたその時、踊り場に二体のヤツらがいた、まだ下の方が大きな音が出ていた事も影響してなのか、まだ黒白達に気づいていない様子だったので三人は静かにその場から離れ近くに在る、理科室へと逃げ込むと、そこには黒白の友人の姿があった。
「
「黒白も無事なんだな」
「ああ、何とかな」
「それはそうと、外がどうなっているか、分かるか?」
海斗が訪ねると、黒白はここに来る前に見た外の様子を伝えると海斗の顔は少し青ざめていた、無理も無いだろう、つい数時間前までは授業をしたり友達と楽しく話していたのだから、しかし今のこの現状はまるで夢を見ている様なのだから
事実この惨状を見て夢だと思い込み、屋上やベランダから飛び降りた人も数名居た、しかしその人たちは起き上がることも無く、そのまま死体となりヤツらに食われているのだ、黒白は何と学校から抜け出し、どこかに避難しようと考えていた。
しかしこの惨状を考えると安全な場所と言うのは無いのかもしれない、海斗が落ち着くまでの間に黒白はSNSアプリの
「海斗、俺達はここから脱出しようと思っている……お前はどうする?」
黒白はそう言った後に続けて
「外に逃げても安全な保障は何処にも無いし、もしかしたらここよりも危険かもしれない、でも逃げる事が出来れば、会いたいと思う奴に会える可能性は上がる……どうする?」
少し強張った声をしていたがと、海斗は
「俺も一緒に行くよ…こんな状態だけど、母さんや親父たちが生きているかもしれないし」
落ち着いた様子でそう告げた、そして黒白、加藤、和田、海斗の四人は少しの間、休憩しながらも、何とか両親や友人に電話して見るのだが、一向に繋がらなかった、そして休憩を終えると、黒白は前方を海斗は後方から、周囲が安全である事を確認した後に海斗は加藤、和田の二人と一緒に教室から出て、黒白と合流を果たし、そのまま当初の予定通りに校門へと足を進めた。
何とか正面玄関まで、ヤツらと出くわさずに済んだのだが、外を見て見ると数は30以上のヤツらが存在し、さらに校門までヤツらは存在し、徒歩で校内から出る事は不可能な状態だった、そこから四人は近くに在る用務員室に何とか逃げ込み、部屋の鍵を閉めた海斗と黒白の二人はどうやって内から脱出するか、考えていると和田が
「ねぇ先生達の車を使ってここから出れたりしないかな?」
と発言したのだが
「あっでも私達まだ自動車学校にも行って無いし、車を運転なんて出来ないよね」
直ぐに訂正したのだが黒白と海斗の二人は互いの顔を見合わせ
思わず…
「それだ!」
とやや大きめの声を出してしまった、幸い近くにヤツらがいなかったのもあり、何の問題も無く、静かに用務員室を後にし、そのまま職員室に向かっていった、職員室であれば校門、そして駐車場までの道のりがはっきり分かるし、正面玄関を経由しなくとも、一階に降りる事が出来るからだ、四人は正面玄関に向かった際に各自の靴に履き替え、少しでも動きやすい状態にしていた。
職員室の近くに行くと、3体のヤツらが居た、何とかやり過ごそうとしたが、加藤のスカートにあるポケットからスマホが落ちてしまい、近くに居た三体のヤツらはその音を聞きつけ加藤を襲おうとしていた、その光景を見ていた黒白は覚悟を決め、持って来ていたモップで胸を突いたのだが、そいつは怯むどころか力が衰えること無く、今度は黒白を襲おうとしていた
「なんだよこいつ、心臓に刺したんだぞ!」
黒白は噛まれそうになった瞬間、咄嗟にモップから手を離した、その後に勢いよく押すと、ヤツらはトロフィーが飾ってある、展示コーナーのガラスを打ち破り、モップの刺さったヤツらは首にガラスが刺さり、動かなくなっていた、それを目の当たりにした黒白は映画の様にヤツらは頭部の破壊、あるいは首の切断以外に方法が無いのだと気づいた、そしてすぐに黒白はトロフィーの一つを掴み、もう一体の頭部目掛け思いっきり振りかざし、何とか倒すことに成功した、最後の一体は窓側に居て、加藤を襲おうと近づいていたヤツらに突進し、空いていた窓から突き落とした
黒白は自身の手に血が付いている事に構わずに、そして何も言わずに職員室の中に入って行った、三人はその後ろ姿をただ眺める事しか出来ずにいた。
三人は適当な椅子に座り、黒白は自身の手に着いた返り血を水で洗い、顔に着いた血も洗い流した後に紙タオルで綺麗に拭き、アルコールで消毒した後に近くにある椅子に座り、大きく息を吐いた、そして数分の沈黙あり、加藤が黒白の近くに歩み寄り、口を開いた。
「さっきは助けてくれてありがとう」
と頭を下げた、黒白はそれを見てすぐに彼女の肩をポンッと叩き
「ああ、なんてことないさ、それより加藤も他の二人も怪我は無いか?」
そう聞いた加藤はすぐに。
「私は大丈夫」
返答し、和田と海斗の二人も怪我も無く、何の以上も無いと告げたのだった、その後に四人は手分けをし、校内側の入り口に机やいすを使い、バリケードを作って行た、作っている最中校内からヤツらの呻き声も聞こえてきたが、四人はなるべく気にしない様に行動していた、作り終えた後に教室内にあったテレビを点けると、そこでまず流れていたのは
『……です。各地で起こっている暴動に警察の手が回らず、政府は緊急対策を行っている模様です。しかし自衛隊の治安出動については与野党問わず慎重になっている模様、地域別の被害に置きましては、1000件を超えているとの情報もあります。』
どこのチャンネルを回しても同じような内容で放送しており、チャンネルによっては自宅の中に避難を促すところや威嚇射撃なのか銃声のような発砲する音が聞こえて来るものもあった、そして先程アプリで見た内容よりも各国や日本はより悲惨な状態になっていた、この状況に陥った事により、いくつもの都市機能は停止し、各国の議員の中にも感染した人や亡くなっている者も増え、それと同時に略奪や暴行、ヤツらに襲われ感染する人、人が居なくなったことも影響し、火災や怪我人の搬送に伴いありとあらゆる機能が止まっていた、それは警察や消防そして電波までも例外ではない、四人は何とか落ち着いた事もあり、各自親に連絡を取ろうと考え、通話してみたのだが何度電話しても。
『ただいま、回線が込み合っております。再度おかけ直しください』
と繰り返され、全くつながることは無かった。
「なぁ黒白、此処から脱出するのは良しとして、どこに行く?」
海斗はそう言い黒白に訪ねた、黒白は一度考え。
「俺達の中学校辺りはどうだ?あそこなら、住宅街の中とはいえ見晴らしも良いし、周辺にある店舗の事を考えれば、しばらくは医療品や食料には困らない、それにあそこなら、俺達の両親もいる可能性もある」
そう提案すると、加藤と和田の二人も黒白と海斗とは中学時代全く関りは無かったが、同級生ではあるからだ、だから可能性としては十分と思える、状態次第ではあるが一時的な避難所として機能している可能性すらある、海斗は聞いた後に。
「分かった、そうしたら何とか中学校まで行ってみるか」
冷静にそう言うと和田と加藤の二人も頷いていた。
だが短時間とはいえ、慣れない緊張もあったのか三人はすぐには動けないでいた、無理もない、つい数時間前までただの高校生だった四人が今は生きるか死ぬかのやり取りをしている、そんな中で黒白は、生きる為に三体のヤツらを倒したのだから、表には出していないが、葛藤をしているのだろう……黒白は持っていた水を一気に飲み干し覚悟を決めていた、それは自分達が生きるためにヤツらを倒す覚悟を、そしてもう一つの覚悟を……
黒白達は十分な休息を取った後に、職員室の中に何か武器として使えそうな物が無いか探した後に教師たちのバックを物色し、二つの車のカギを見つけた海斗はその車のカギを見つめながら
「なぁ、黒白お前今日さ何でここまできたんだ?」
思い出したかのように聞くと、加藤と和田は不思議そうな顔をしていたが、黒白はニヤリと不敵な笑みを浮かべ。
「いやぁここから脱出する前に海斗に会えて良かったよ、危なくバイクをここに置いて行かないといけない所だったからさ」
そう嬉しそうに言うと、海斗は半分呆れたような表情を見せながら、いつもの黒白の様だと再確認し二人は笑っていた、笑い終えると黒白は
「三人は先に下に降りてくれ、三人が階段から離れたのを確認したら俺も教室から出て行く」
提案すると海斗はさっきまでの表情とは違い、少し怒った様子だったが黒白が続けて
「俺のバイクは駐車場より近いところに隠してある、だから俺は海斗たちが駐車場の方に向かう直前にテレビの音量を最大まで上げてからここから出て行く、ヤツらは音に反応するからな」
そう言い切り、海斗が黒白の瞳を見て見ると、すでに覚悟を決めた瞳である事を確認し深いため息をしてすぐに
「わかった、ただし死ぬんじゃねえぞ」
と言った後に
「当たり前だろ」
直ぐに黒白は返したのだが、少しだけ考え込んでいた
「悪い、三人とも行く前に窓を全開にするのだけ手伝ってくれない?」
申し訳なさそうに言うと、今度は四人で笑っていた、だけれど彼らのこの笑顔はこれからの厳しく辛い時代の中でとても貴重で
三人が階段からそっと離れて行き駐輪場に姿を隠したのを確認した後にテレビの音量を一気に上げ、大音量になったところで黒白自身も急ぎ下に降りて行き、傍にある体育館の外入り口まで離れると、音量に引き付けられ外にいた沢山のヤツらが職員室の周りに集まったのだが、階段を上る事が出来ないのか、数分放っておくと体育館の方まで溢れてきていた
黒白はヤツらに囲まれる前にいつも、バイクを隠している男子寮と第二体育館の間に向かった道中、音量が届かなく移動していなかったヤツらも居たのだが、体育館倉庫から持ち出した、金属バットで頭部を破壊しなんとか自身のバイクまで辿り着き、ヤツらに追い使られる前にエンジンを掛ける事に成功して、そして直進して車道に出ようとすると、海斗たちも丁度車に乗りこみ、待ち合わせ場所にしていた第二駐車場に向かった、最初に黒白が着き、その二分後に海斗たちも合流した。
「そっちも無事だったみたいだな」
海斗はドア越しでそう言った後に続いて
「一瞬危ない時が在ったが、お前がやってくれたお陰で、俺達も無事で済んだよ」
安心した様子で告げ、黒白は少し照れていたが直ぐに調子を戻し。
「とりあえず駅の方から向かおうと思っているんだが、どう思う?可能なら道中使えそうな物を拾っていきたいとも考えているんだけど」
提案してみた、すると海斗は似たようなことを考えていたらしく、その提案に同意し四人は長い時間をかけ、ようやく校内から出る事が出来た、しかし外は新たな脅威で充ち溢れていた、ヤツらの存在は当然なのだが、危機的状況に陥った人間もまた脅威となりえるのだ。
四人は一度駅に向かい、そのまま母校に向かう事にし、国道に出たのは良いのだが、そこにはいくつもの車が乗り捨ててあり、そして周りにヤツらはいないが沢山の人が倒れ、近くの公園では数匹の犬が吠えているのが聴こえて来た、恐らくは鳴き声に引かれてこの周辺に居たヤツらは犬の居る公園に向かったのだろう、ヤツらの足では犬に追いつけるはずも無く、ずっと鳴き声が聞こえていた黒白達も犬を助けてやりたい気持ちはあったのだが、今は何より自分達の命を大切にするべきであり、何とかここから抜け出し自身の家族、と再会できる事を祈っていた、極力音を立てない様に道を進んでいると、大きな交差点に辿り着いた、そこは車も避難する為なのか、様々なところに放置されており、黒白達が真ん中の車線を一列に,並ぶと何とか渡れる状態だった、黒白と海斗はスピードを緩めて進み切り、交差点を進み切ろうとした
その時!
後方から大きな音を立てながら何かがこちらに進んで来る音が聞こえた、黒白が振り返ると後ろから来ていたのは一台の大型トラック、それがすごい勢いで周りにある車や奴らを跳ね飛ばしながら黒白達の居る所まで向かって来ていた、それを見て黒白は大声で
「急げ!」
と叫び、黒白はアクセルを回し、海斗はアクセルを踏み込み急ぎその場から離れようとした、黒白は前方に進み何とか無事に済んだのだが、海斗は勢いが付き横転したトラックに少し接触し勢いよく左側に行ってしまったがトラックの下敷きになることは無く、海斗達三人も無事だった、しかしトラックに道を塞がれ黒白と海斗たちは合流出来なくなってしまった、黒白がトラックの給油口を見て見るとそこからガソリンが漏れており、次の瞬間そこに引火し周囲は瞬く間に炎に包まれてしまった、すると反対側から
「黒白!俺達は無事だ!俺達はこっち側から中学校へ向かう!無事でいろよ!」
大声で告げて来た、そして黒白も
「分かった!そっちもな!」
と大声でそう告げ黒白と海斗たちは各自のルートで中学校へ向かう事にした
黒白がそのままバイクを走らせ数分するとガソリンスタンドが見えて来た、彼はガソリンの補給と少し水分を取ろうと考え、そこに寄ったのだが給油には現金が必要となっており、魔の悪い事に黒白は数百円しか持ち合わせていなかった、そんな中ふと、スタンド内の建物に目をやると、レジが見えその中に現金が入っていると思い、建物内に入りレジを開けるカギを探していたのだが、それらしい物は見当たらなかったが黒白は自身の右手にあるバットを見つめため息を漏らし
「まっ人生で一度くらいはやってみたかったし……」
と呟き、レジの上に立つと勢いよくバットを振り下ろし四回、五回と何度か殴打していると、レジは歪みそして札の入っている所にも穴が開き数枚の紙幣を取ることが出来た、レジを殴打している音が響いたと思い外を慎重に見て見ると、不思議とヤツらは全くいなかった、しかし黒白は万が一を考え急ぎ給油した後に左にあるコンビニに視線をやると、一台の警察車両が居る事に気が付いた
黒白はそっと警察車両に近づいてみると二人の警官が乗っていたが、どちらもぶつかった衝撃で既に息は無かった、黒白が見ていた運転席側の警官の腰には黒光りする物が見えた、黒白はそっとそれを見て見るとそこにあったのは一丁の拳銃があった、黒白はエンジン部分から漏れているガソリンに注意しながらもその警官のベルトと銃の入っているホルスターが一体になっていたよう様子だったので慎重に外し、隣に居た警官のも取ろうと思ったのだが、そちらは完全にコンビニの入り口に挟まれていたこともあり断念した、黒白はバイクの収納スペースにさっき入手した物を一度入れその場を後にした、しかしなぜ世界はたった一日いや、たった数時間でここまでの地獄と化してしまったのだろうか、それを誰かが知る可能性はゼロに等しいだろう、もしかしたら遠い未来にこの始まりを知る可能性があるのかもしれない。
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