第3話
歌舞伎町を焼き尽くす不審火は、瞬く間に混沌を招き入れた。
黒煙が夜空を覆い、サイレンの音が街中に響き渡る。
尾根は、燃え盛るビルの前で立ち尽くしていた。燃えたのは、かつて自分が働いていたスカウト会社『コネクト』の系列店だ。
おいね「この火事は、ただの火事じゃねぇ」
ヤクザと金融会社、そしてホステス。
まるで誰かが糸を引くように、全ての点が繋がり始めている。
その頃、『カネマルファイナンス』の社長室では、若月が静かに事態を見守っていた。
ワカ「これでいい…」
薄ら笑みを浮かべ、彼の目はどこか満足げに輝いている。
ウナポン「指示通り、赤羽凛の家族と身辺調査も完了しました。彼女に逃げ場はありません」
鵜飼は淡々と報告する。
若月は彼女の無機質な言葉に、ゾクゾクするような高揚感を覚え興奮していた。
急に玄関のドアが乱雑に開く。
ラオウ「よう若月さん、あんたもとんだワルだねぇ」
その声の主は、新興ヤクザ組織「旺介組」の組長、吉良旺介だった。
吉良は若月のデスクに腰掛け、不敵な笑みを浮かべている。
ラオウ「俺の仕事を手伝ってもらおうかと思ってね。あんたの裏の顔を見込んでの話だ」
ワカ「話は聞かせてもらうが、僕のゲームの邪魔はさせないですよ」
若月の言葉には、静かな怒りがこもっていた。
CLUB『LUNA』のフロアは、火事の喧騒とは無縁だった。
しかしその裏、バックヤードでは静かなる会話が繰り広げられていた。
赤羽「ハマちゃん、その『ゲーム』って、一体何なの?」
赤羽は浜崎に問いかけた。
浜崎はグラスを傾けながら、微笑む。
ハマちゃん「10年前まで、ここ歌舞伎町を支配し、君臨していたキングと呼ばれた男が居たの…」
そう切り出し、静かに語り始めた
当時の歌舞伎町は、海外からの移民が大量に押し寄せ治安は悪化。
国内の深刻な少子高齢化と、下がり続けるGDPへの打開策として、政府は海外からの労働者の規制を緩和。
さらに支援金なども併せ、かなりの待遇をもって大々的にその政策を推し進めた。
その結果、治安は悪化するばかりか、外国人への処罰さえ黙認する事態が増えた。
当時のキングは民間の警護会社を創り、街とそこに住む人々を守っていた。
目を輝かせ、食い入るように話を聞いている。
アカリン「凄い、そんな素敵な人がいたんだ」
そう言われ複雑そうな表情を浮かべる。
ハマちゃん「確かに、それだけ聴くと美談に聞こえるわね」
首を傾げる彼女
アカリン「え?違うの?」
浜崎は続きを語り始めた。
表向きは治安を守り、多くの人々から信頼を得ていたが。
裏では、外国人を指揮し狙った場所に向かわせ、営業妨害や暴力によって疲弊させる。
それを仲裁し、それと同時に資金繰りに困った事業者達に、土地や権利を担保に金を貸し付けるといった行為を繰り返していた。
俯きグラスを見つめながら重々しく語る。
ハマちゃん「たくさんの人が路頭に迷い、たくさんの人が消えたわ」
驚き言葉に詰まる彼女
アカリン「そ、そんな、、、酷い」
顔を上げ赤羽の目を見ながら。
ハマちゃん「善人の皮を被った悪魔よ」
そうして街全体の利権を奪い、事実上支配し、いつしかキングと呼ばれるようになった。
だがしかし、その栄転の時間は長くは続かなかった。
多くの恨みを買ったキングは、ある日突然あっさりと何者かによってその生涯の幕を閉じたのだった。
アカリン「でもそれが『ゲーム』とどお関係するの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます