第十九話 三回戦 翠嶺学院戦(前編)

開会式後の緊張


 三回戦。会場はこれまで以上の観客で埋め尽くされていた。

 翠嶺学院——県内屈指の“粘り打線”。去年も強豪をファウルで苦しめ、じりじりと球数を削って勝ち上がったチームだ。


 蒼志館ベンチの空気は引き締まっていた。

 藤堂監督は短く言う。

 「今日の先発は高城。思い切って腕を振れ。後ろには如月が控えている。二枚看板で勝つぞ」


 高城はキャップを深くかぶり直し、軽く笑った。

 「よし、任せろ」


蒼志館 打順表


小坂 駿(ショート/俊足巧打)


篠原 圭介(サード/キャプテン)


海斗 玲央(センター/強肩強打)


佐伯 大和(ファースト/パワー)


小畑 翔(レフト/勝負強い)


中西 颯真(ライト/粘り打ち)


水島 悠(セカンド/守備職人)


山根 智久(キャッチャー/頭脳派)


高城 達也(ピッチャー/右腕速球派)


翠嶺学院 打順表


相沢 健太(ライト/出塁率高い)


村上 拓也(セカンド/小技巧者)


江藤 慎吾(センター/繋ぎ役)


佐野 大輝(ファースト/チーム随一の中距離砲)


北原 剛(レフト/粘り屋)


石川 颯(ショート/逆方向打ち)


平田 悠真(三塁/バントもうまい)


谷口 健司(キャッチャー/堅守型)


西川 翔(ピッチャー/制球型右腕)


一回表 蒼志館の攻撃


 先頭の小坂が出塁を狙うもセカンドゴロ。

 二番・篠原は外直球を叩き、センター前。

 三番・海斗は初球から積極的に振るがショートゴロ。併殺でチェンジ。


 (簡単に点は取れないか……)


一回裏 翠嶺学院の攻撃


 マウンドには高城。

 「150出すぞ!」とベンチから声が飛ぶ。


 一番・相沢。初球、外直球。ファウル。

 二球目も直球。今度は当てられ、一塁線ファウル。

 三球目、直球で押し込んで三振。

 高城はガッツポーズ。


 二番・村上。初球、外直球を軽打。ファーストゴロ。

 三番・江藤。ここで初めてスライダーを投じる。空振り。

 最後は直球で押し込み、三振。


 「ナイスボール!」

 蒼志館ベンチが沸いた。


二回裏 翠嶺学院のいやらしさ


 四番・佐野。初球直球をファウル。二球目も直球。カット。

 三球目、スライダー。ファウル。

 (全部粘ってくる……!)

 七球目、やっと打ち上げさせてライトフライ。


 五番・北原も粘る。六球目、ようやくセカンドゴロ。

 六番・石川は直球を逆方向に流し、ライト前ヒット。

 七番・平田が送りバント。ツーアウト二塁。


 八番・谷口。フルカウント。十球目、外直球を見極め、四球。

 九番・西川。粘られた末、直球を弾き返され、三遊間を抜ける。

 二塁走者が一気にホームイン。

 「先制、翠嶺!」


 高城は帽子を押さえ、深呼吸した。

 (粘り打線……球数がかさんでる。これが翠嶺か)


三回裏 さらなる粘り


 一番・相沢。直球をカット、カット、カット。七球目、外スラを打たせて三ゴロ。

 二番・村上。バントの構えを見せつつ、直球をカット。五球目でセカンドゴロ。

 三番・江藤。フルカウントまで粘られ、最後は外直球を流されてレフト前。


 四番・佐野。ここもフルカウント。直球を打たせてセンターフライ。チェンジ。


 高城は三回で既に球数60。

 マウンド上で小さく息を吐く。

 (わかってたけど……これが翠嶺の戦い方か)


蒼志館ベンチ


 キャプテン篠原が集めた。

 「いいか、あいつらは絶対に三振しない。高城の球を見切って、削って、最後に一発を狙ってくる」


 山根は如月の肩を叩いた。

 「お前の出番は必ず来る。そこで“何か”を掴め。白石にやられたままじゃ終われない」


 俺は小さく頷いた。

 (そうだ……足りないものを、ここで見つける)


現在の能力表(如月 隼人)


球速:137km/h


コントロール:B+


スタミナ:B


変化球:スライダー6/シュート3


特殊能力:奪三振◎/対ピンチ○/低め○/キレ○/打たれ強さ○/逃げ球/クイック○


備考:三回戦はリリーフ待機/相手は「粘り打線」/成長の糸口を掴む予兆

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