第二話 仲間との再会
グラウンドに吹き込む春風は、どこか懐かしい匂いがした。
まだ真新しいユニフォームを着た一年生たちが、慣れない掛け声をあげながらウォーミングアップをしている。
俺もその列に混じって走り出したが、胸の鼓動は落ち着いていた。
――そうだ、俺はもう一度やり直せる。
「おい隼人! 遅いぞ!」
振り返ると、背番号「5」をつけた三塁手が手を振っていた。
キャプテンの 篠原 大地。中学時代からの仲間で、前世では俺がプロに進むと同時に別の道へ消えていった男だ。
その笑顔を目にした瞬間、胸が熱くなった。
「……篠原」
思わず声が震える。だが彼は気にすることなく、豪快に背中を叩いてきた。
「お前、顔つき変わったな! 昔より頼もしそうだぞ」
◆
練習が始まる。
キャッチボールの相手は控え投手の 水島 俊。
前世の彼は最後まで無名のまま終わった男だ。だが今世では――俺が刺激を与えれば、きっと違う未来を歩めるはずだ。
「行くぞ隼人!」
水島が軽く投げてくるボールを受け取り、俺は自然とサイドスローのフォームを作った。
体が勝手に覚えている。低い位置から腕を振り抜くと、白球は伸びるように彼の胸へ飛び込んだ。
――パァン!
ミットの音が、周囲の空気を震わせた。
「お、おい……今の球、速くね?」
水島が目を丸くする。篠原や他の部員も手を止めてこちらを見ていた。
「……あれが一年の球か?」
「まるで二年か三年みたいなキレだぞ」
俺は笑みをこらえながら、さらにもう一球。
今度は手元で大きく曲がるスライダー。水島は必死にミットを伸ばすが、捕球と同時にバランスを崩した。
「な、なんだこれ……!」
驚愕の声が響き、グラウンドがざわついた。
◆
監督の藤堂が腕を組んで見ていた。
「如月……お前、本当に一年か?」
低い声がグラウンドに落ちた。俺は背筋を正し、力強く答えた。
「はい。――必ず、このチームを勝たせます」
周囲が息を呑んだ。
前世では決して言えなかった言葉を、今は迷わず口にできた。
仲間たちとともに、再び始まる野球人生。
この一歩が、甲子園への道を切り開くのだ。
現在の能力表(如月 隼人)
球速:132km/h
コントロール:C+(キャッチボールで安定感を見せた)
スタミナ:C
変化球:スライダー3/シュート2
特殊能力:奪三振◎/対ピンチ○/キレ○/打たれ強さ○/逃げ球
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