第二話 仲間との再会

グラウンドに吹き込む春風は、どこか懐かしい匂いがした。

 まだ真新しいユニフォームを着た一年生たちが、慣れない掛け声をあげながらウォーミングアップをしている。

 俺もその列に混じって走り出したが、胸の鼓動は落ち着いていた。

 ――そうだ、俺はもう一度やり直せる。


 「おい隼人! 遅いぞ!」


 振り返ると、背番号「5」をつけた三塁手が手を振っていた。

 キャプテンの 篠原 大地。中学時代からの仲間で、前世では俺がプロに進むと同時に別の道へ消えていった男だ。

 その笑顔を目にした瞬間、胸が熱くなった。


 「……篠原」

 思わず声が震える。だが彼は気にすることなく、豪快に背中を叩いてきた。

 「お前、顔つき変わったな! 昔より頼もしそうだぞ」



 練習が始まる。

 キャッチボールの相手は控え投手の 水島 俊。

 前世の彼は最後まで無名のまま終わった男だ。だが今世では――俺が刺激を与えれば、きっと違う未来を歩めるはずだ。


 「行くぞ隼人!」

 水島が軽く投げてくるボールを受け取り、俺は自然とサイドスローのフォームを作った。

 体が勝手に覚えている。低い位置から腕を振り抜くと、白球は伸びるように彼の胸へ飛び込んだ。


 ――パァン!


 ミットの音が、周囲の空気を震わせた。

 「お、おい……今の球、速くね?」

 水島が目を丸くする。篠原や他の部員も手を止めてこちらを見ていた。


 「……あれが一年の球か?」

 「まるで二年か三年みたいなキレだぞ」


 俺は笑みをこらえながら、さらにもう一球。

 今度は手元で大きく曲がるスライダー。水島は必死にミットを伸ばすが、捕球と同時にバランスを崩した。


 「な、なんだこれ……!」

 驚愕の声が響き、グラウンドがざわついた。



 監督の藤堂が腕を組んで見ていた。

 「如月……お前、本当に一年か?」

 低い声がグラウンドに落ちた。俺は背筋を正し、力強く答えた。


 「はい。――必ず、このチームを勝たせます」


 周囲が息を呑んだ。

 前世では決して言えなかった言葉を、今は迷わず口にできた。


 仲間たちとともに、再び始まる野球人生。

 この一歩が、甲子園への道を切り開くのだ。


現在の能力表(如月 隼人)


球速:132km/h


コントロール:C+(キャッチボールで安定感を見せた)


スタミナ:C


変化球:スライダー3/シュート2


特殊能力:奪三振◎/対ピンチ○/キレ○/打たれ強さ○/逃げ球

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