『転生サイドスロー ~左腕の魔球で全国制覇~』

kuroeru

第一話 『転生サイドスロー ~左腕の魔球で全国制覇~』

――俺の野球人生は、失敗だった。


 左のサイドスローという希少な武器を持ちながら、プロの舞台で芽が出ることはなかった。

 二軍暮らしの日々。ファームでいくら三振を奪っても、一軍の舞台では制球難と力不足をさらけ出すばかり。

 何度もチャンスは与えられた。だが、結果を残せたことは一度もない。


 気がつけば、三十を越えた。膝は悲鳴を上げ、球速は落ち、球団から戦力外通告を突きつけられた。


 「俺は……何のために投げてきたんだろうな」


 ロッカールームで最後のユニフォームを脱ぎ、静かにバッグにしまった。隣では後輩たちが「来季は勝負だ」と笑っている。俺には、もう未来がなかった。



 その夜、酒に逃げた。

 居酒屋のテレビに映るのは、同期入団のエースが一軍マウンドで歓声を浴びる姿。

 インタビュアーのマイクに、彼は誇らしげに答えていた。

 ――俺には、一度も訪れなかった光景だ。


 終電を逃し、酔った足取りで深夜の国道を歩いた。

 「せめて……もう一度、やり直せたら」

 つぶやいた瞬間、轟音とともにヘッドライトの光が迫ってきた。


 ――世界は真っ白に塗り潰された。



 「……ん?」


 まぶたを開けると、見覚えのある天井。

 いや、忘れようのない場所だ。実家の自分の部屋。

 慌ててカレンダーを手に取る。


 「20XX年 4月1日」


 息が止まった。プロ入りの八年前。ちょうど高校入学前の春――。

 鏡に映ったのは、皺ひとつない十五歳の俺だった。


 「マジかよ……」


 膝の痛みもない。体は軽く、全盛期よりも動ける感覚。

 そして視界の端に、奇妙なパネルが浮かんでいた。


 ――青と赤で区切られたステータス表。


 【投手能力】

 球速132km/h

 コントロールC

 スタミナC

 変化球:スライダー3/シュート2


 その下には特殊能力が並んでいた。


 奪三振◎/対ピンチ○/キレ○/打たれ強さ○/逃げ球


 「……パワプロの、能力パネル?」


 前世では夢のように憧れたスキルたちが、今の俺に宿っている。

 震える手でパネルを撫でながら、胸の奥が熱くなった。


 ――今度こそ、やり直せる。


 失敗した野球人生を。もう一度、この手で掴み取るのだ。


現在の能力表(如月 隼人)


球速:132km/h


コントロール:C


スタミナ:C


変化球:スライダー3/シュート2


特殊能力:奪三振◎/対ピンチ○/キレ○/打たれ強さ○/逃げ球

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