私が好きになったのは同性でした。
ぷるーん
第1話 対面
朝起きて、学校へ行く。
学生である私は、これが日課だ。
学校へ行くのは面倒だが、楽しい。
あの人の顔を見る、それだけでいい。
いつも通りの道を通り、道行く人に挨拶をする。
「おはようございます。」
「おはよう。今日も早いね。」
「いってらっしゃい。気をつけていくんだよ。」と声をかけてもらう。
この街では、挨拶をすると、元気が出る言葉をかけてくれる人が多い。
ありがたいことにこれが日常茶飯事なので、過ごしやすい。
(今日は雨降りか、嫌だな。)と考えながら歩いていると、
いつもの見慣れた校門が見えてきた。
そこに立っている先生にも声をかける。
「おはようございます。」
「おはよう。田中。今日は、朝読書がある日だから図書館で本を借りるように。」
(忘れてた、急いで図書館に行かないと。)
図書館に行くと、朝早いからか、ほとんど人がいない。
これならすぐ本を借りれると思い、本を選び、図書館委員に持っていった。
「お願いします。」
「はい。持っていって大丈夫ですよ。」
借りる手続きを済ませ、ふと窓に目を向ける。
朝日にあたった髪が綺麗だ。美しい。
好きな人が窓際の席に座っていた。
何度見ても、素敵で、私ごときが近寄ってはいけない存在と思っていた。
話しかけてみたいが、脈拍があがり、胸が振動して、うまく話しかけることができない。
家で、話しかけようと話題を探してきて練習もしたのに、緊張して言葉が出てこない。
(おはよう。と言いたいのに。)
普段は、誰にでも挨拶をする私だが、好きな人になると挨拶ができない。
挨拶どころか、話しかけることすらも。
見惚れていると、朝礼のチャイムが鳴った。
まずいな。遅刻する。
急いで本を手に教室に戻る。
間に合った。
「おはよう。田中。今日は遅かったな。」
「すみません。図書館で本を選んでいたら遅くなりました。」
「そうか。田中は本が好きなのか。」
「はい。好きです。」
「良い趣味だな。まあいい。席につけ。」
「はい。」
席に着いてもあの感覚が抜けない。
(可愛かったなあ。もっとみていたかったな。)
そんなことを考えながら、読書をする。
やっぱり、太宰治の本は面白いな。
人間失格は何度みてもいい。
チャイムが鳴り、読書を中断した。
先生が生徒に声をかける。
「一時間目が始まるから準備しとけー。」
さて、準備するか。
立ち上がった途端、図書館でみた美しい髪をした好きな人が目の前にいた。
何事かと思ったが、冷静を保ちながら、声をかける。
「何か用かな。」
「………………………。」
緊張して口がうまく回らない。
やっと出た言葉は、無視された。
彼女は、無言のまま、私のことをじーっと見てきた。
私、何かしたかな。顔に何かついてるのか。
聞いてみようかと思ったが、声がでない。
授業開始5分前のチャイムが鳴ると、彼女はどこかにいった。
(幸せだったな。彼女の顔を間近で見れるなんて今日は幸せだ。)
授業になっても、さっきのことを思い出すだけで胸が張り裂けそうなくらい、振動する。
終わり
次に続きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます