No.5 第8話の感想

 続きです。


>第8話 おにぎりたちのよるのかいぎ


 平仮名ですね。

 この物語は主人公ユーリの知識や認識レベルが少し幼いので、この平仮名にも意味を感じます。



> その声は軽薄なようでありながら、抑えきれない強力な威圧と怒りのエネルギーを放射していた。

>「やあ、こんにちは。

> この薄ら寒い神殿みたいな白空間と、お高くとまったその声──

> まさかとは思うけど、神様のつもりじゃないよね?」


 前回の続きですね。

 アリシアが呼んだ?ヴァイオレットの言葉です。 



>「……大陸に、解読技術があるはずがない」

> 空間に響いたAIの声には、いつもの威厳に細かなヒビが入っていた。計算外の事態に、その超越的な知性も一瞬、揺らいだようだ。


 AIの想定外。

 例外処理がきっちりなされるかどうかの世界でしょうけれど……このあたりはやたら人間っぽいですね。



>「え? それ本気で言ってる?」

> 銀髪の女が、楽しそうに片眉を上げた。ヴァイオレット。見かけはかわいいが、彼女の脳内は量子の嵐。先端演算領域で踊る、知能爆弾みたいな女だ。

> 量子通信の青白い光が彼女の姿を幻想的に照らしている。それは科学と魔法の境界のような光景だった。


 青い光。なんだかチェレンコフ光みたいですね(何

 十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない、というやつですか。



>「確かにちょっと骨が折れたよ? 暗号解読も、もう一人のアリシアちゃんを作るのも。君たちAIと同じ原理、ね? 量子観測による人間大脳モデル。重ね合わせ意識論。あんたの中でひしめく20万の人間の意識群と原理は一緒。あんたはもうずっと、重ね合わせでつくられた──もう一人の従順で弱々しいアリシアちゃん──を支配してたってわけ!」

> 隣で静かに目を細めているのはアリシア。白い空間の片隅には、仮想空間で「もうひとりのアリシア」が頭を撃ち抜いた死体となって椅子に括り付けられている。


 このへん、不思議な感じですね。

 共鳴装置で精神を電脳空間とリンクさせているわけです。

 そのコピーを用意するとなると、リンクを切り替えるとか、同時に動かすとか、何かありそうですよね。

 暗号解読して裏で処理すれば気付かれないのでしょうけれど、アリシアの精神的には多大な影響がありそうです。



>「さあ、悪魔祓いといこうか。あんたの正体はムシケラでしょ? 量子コンピューティングファームで走光性本能を持って蠢く原始生命群に、サンプリングされた人間の意識群が乗っかってるのよね? あー、気持ちわるい」

> 白い空間の外縁から、ガラスが砕けるような音が微かに聞こえてくる。電子の壁が崩れ始め、侵入を検知したAIたちが次々と通信を切断していく音だ。

>「……逃げちゃった。捕まえたかったのに」


 あ、逃げられるんですね。

 通信経路を物理的切断すればいけますか。



> ヴァイオレットは、失敗を悔しがるというより、昆虫採集に失敗したこどもみたいなノリで言った。

> アリシアはごく短く息を吐いた。それが、彼女なりの安堵のしるし。

>「ヴァイオレット、我々は気づかないうちにセレーネの使者に出会っていたらしい。それも今日」

> アリシアの声には、久しぶりに将校の鋭さが戻っていた。


 アリシアが報告します。

 第二世代AIに指摘されるまで知らなかったのかもしれませんね。



>「セレーネの子ども、見つかったのね?」

> 「ユーリ・ヴォスホート」アリシアがそっと呟く。ロシア語で「日の出」を意味する名。だが彼女の思考は、その響きに別の単語を重ねていた。

> それは、ヴォストーク。意味は「東」――そう、あの子の名前だ。

>「そうだ。名前は、ユーリ・ヴォスホート。第三区立学校の生徒。14歳、孤児、保護者なし」


 ヴァイオレットにとって、セレーネはどういう関係なのでしょう。 

 色々気になるところです。



> ヴァイオレットは口の端をつり上げた。

>「セレーネらしい、安直だけど意味深な命名だね」


 まるで知己のような言葉。

 情報としては知っているのでしょうけれど、交流もあったのでしょうか。





>***

> 13年前のある夜、アリシアは病院のベッドに、ほぼ死体のような体で転がっていた。

> アマゾンの東の端っこ。クールー国際宇宙特区。ちょっとばかりハイソな患者が集まる医療施設だ。

> もっとも、表向きには「事故で瀕死の重傷を負ったが、奇跡的に最新医療で生還した名家の娘」で通っていた。

> 実際には──どっぷりと「連合」の洗脳教育コースに漬け込まれていた真っ最中だったのだけど。


 検査で出てきたお話ですね。

 こんな状態から再生できるのは未来医療のすげぇところです。

 ところで、心情が末尾に付加されてますね。これはアリシアのもの?



> そんな彼女の入院ライフは退屈の極みだった。

> 再生治療のためにベッドに縛られ、人工筋肉が織り込まれたボディスーツを着せられ、プロテインより味気ないカロリーゼリーをすすりながら、アリシアはひたすら「ヒマ」だった。


 ユーリが食していたグミみたいなものですかね。カロリーゼリー。

 寝ていると暇なのは入院経験がある人ならわかりますね。



> 3日に一度の検査、無機質な食事、そして極めつけはホログラムの読書指導ロボットが延々と哲学の本を読み聞かせてくる地獄。

> 季節も時間もぼやけて、夢と現実の境目がぐずぐずに溶けていた頃──とうとう彼女は夜な夜な病院内を徘徊するという奇行に走る。


 認知症の人がそうなるのと同じような感じでしょうか。

 (なったことがないのでわかりませんが)



> きっかけは、看護師たちが休憩時間に話していた「病院の七不思議」だった。

> 曰く、「幽霊が出る図書室」。曰く、「怨霊が乗り移った殺人ロボが夜な夜な歩き回る」。曰く、「『迷子の子供』に会ったら死体安置所に連れて行かて終わり」だとか──定番の怖がらせネタ。

> そして夜になると、こっそり病室を抜け出して構内を散歩するのが日課になっていた。

> 15歳の少女というのは、たいていの場合、好奇心と暇に弱い生き物なのだ。


 少なくとも精神が健全であれば暇になるでしょう。

 若さとはそういうものです。



> そんなある夜、懐中ライト片手に病院の奥へと探検を始めた彼女は、ふと背後から、か細い声を聞いた。

>「まま……あいたい……」

> 聞こえたのだ。小さな、子供の声が。

> 振り返れば、誰もいるはずのない廊下に、ぽつんと一人、ちっちゃな子どもが立っていた。3歳くらい?

> 顔立ちは東洋系で、髪がふわっとして、目が星屑をすくったみたいにきらきらしていた。


 病院内で「誰か」に遭遇するとびっくりどころかホラー案件です。

 驚かないアリシアが凄いですね。

 今の時代は看護師が常駐してますから、入院患者がうろつくのは目立ってダメでしょう。

 でも未来はどうなんですかね。機械任せで人間による看護なんてないのかも。



>「まいご? お母さんは?」アリシアが優しく声をかけると、子どもは首を横に振った。

>「まいご、ちがう。まま、あいたい」

> 意味不明な返答にアリシアは首をかしげたが、子どもはおかまいなしにトコトコと歩き出す。そして振り返って、こう言った。

>「こっち」

> まるで当然のように、彼女の手を引いた。


 好奇でうろついていたのなら、されるがままでしょうね。

 庇護心半分でアリシアがついていきます。



> たどり着いたのは図書室。

>「まさか本当に『七不思議』案件……?」

> そんなつぶやきとともにドアを開けると――そこにいたのは、ボロボロのロボットだった。

> 本当に、ボロボロ。関節の軋みもひどければ、音声もやたら明るくて不気味だった。

>「おかえり〜、ユーリ! お友達、できたの?」


 ユーリ。

 アリシアはこのときに、ここで邂逅していたのですね。



>「えーと、あの、すみません」

> アリシアがおずおずと声をかけると、ロボットは動きを止め、ゆっくりと彼女の方を向いた。顔らしきものはあるが、表情はない。まるで仮面のようだった。

>「この子、ユーリちゃん? のお母さんを探しているんですが……」

>「ママは私。私が拾ったから」ロボットが言う。「壁の外。スラムの外れのゴミ置き場で。たぶん、捨て子」


 ロボットが我が子化してます……。

 よく考えたら終わってる世界観でしたから、こういう光景も日常なのかもしれません。



>「はあああああっ!?」

> アリシアの疑念メーターがフルスロットルで跳ね上がる。

> VIPしか入れない高級医療施設のど真ん中に、ゴミ捨て場出身のちびっ子と、それを保護した妙ちくりんなロボがいる?


 夜中に叫ぶと七不思議の仲間入りしますよ。

 場所が場所という点に驚いたわけですか。



> そんな混乱をよそに、小さな手が彼女の服の裾を引っ張った。

> ユーリが、一冊の本を差し出してきたのだ。

>「ごほん、よんで」

> その目はきらきらと、どこまでも無垢だった。

> 絵本には『おにぎりたちのよるのかいぎ』と書かれていた。


 タイトル回収です。

 どんなお話でしょう。



> ……読んだよ。読んであげましたとも。

> 具が少ないと怒るツナマヨと明太子、無言で耐える白むすび、そして――最終的には団結するおにぎり軍団。まさかの友情モノを。


 白むすび……(涙

 具が無くて海苔の服がなくったって、塩の効き具合は同じはずです!



>「むかしむかし、くらーいおべんとうばこのなかでね……おにぎりたちが、よるのかいぎをひらいたの」

>「かいぎってなあに?」

>「おしゃべりのこと。ちょっとだけ、まじめなやつ」

>「まんなかにいたのは、ぐだくさん党。ツナマヨとめんたいこ。ふたりはぷんぷんしてたの。『ぐがすくなすぎるー!』って>「でもね、すみっこに……しろむすびがいたの」

>「ぼくには何もないけど、みんなのおなかはいっぱいにできるんだよ。その一言で、おにぎりたちははっとしたの。そこにあらわれたのは伝説のいくらおにぎり」


 素直に読むアリシアが素敵。

 そしていくら。

 ここで出現しましたか、いくら。

 丼ものではないのですね。



>「いくらってなあに?」

>「赤い宝石のようにぴかぴかした、とってもおいしいごはんなの」

>「いくら、きれいー!」

> 読んであげながら、アリシアは当初の探検の目的だった謎の推理を行う。

> どこかの実験用ロボットが幼い子供を「拾って」きて、このVIP御用達の施設の一角で世話をしている、とか——そんな状況が現実にあり得るのだろうか?

> そもそもこの状況を警備が把握していないわけはない。つまりわかっていて放置されているのだ。


 冷静なアリシアの分析です。

 存在自体が奇異ですから。七不思議として幻を疑わないだけ冷静ですよね。



> ということは、このオンボロロボもまた、VIPなのだ。演繹的事実として。

> まったくわからなかった。現実に起こっていることとは思えなかった。

> そして、ユーリはいつの間にか寝てしまったようだった。


 冷静じゃないですね、疑ってます。

 アリシアの明晰さが常識を保っているのかも。



>「本を読んでくれてありがとう」と謎の怪談ロボ。

> どうしよう。変なロボットにお礼を言われてしまった。

>「いや、なんというか……」彼女は言葉を探した。「あなたは、本当にこの子を育てているの?」

>「そうだよ」ロボットは単純に答えた。

>「どうやって? ミルクとか服とか……」

>「黒服が調達するの」

> 簡潔すぎるその返事は、何も説明になっていなかった。


 黒服。

 黒メガネとセットですよね(何



> その夜、アリシアはベッドで天井を見上げながら考えた。 病院の七不思議? 迷子の子ども? 夜な夜な徘徊するロボ? ――全部本当だったのか。


 アリシアも納得です。

 というか、そういう七不思議的なものに興味があったのですね。

 暇だったからでしょう。



> 翌日、黒服の男がやってきた。

>「レイトン家のアリシア嬢ですね。この件はご内密に。そうですね。よくある病院の怪談だとお考えください」

>「怪談……って」

>「他にどうしようがあります? まあ、よい言い訳あったら考えておいてください。よかったら採用しますよ」

>「えっと……異星人の地球侵略とか?」

> 黒服の眼がキラリと光った「ふむ。興味深い。ならばアリシア様、あなたはさしずめ……第3種接近遭遇者となりますね。黒服のエージェントに目をつけられないようご注意を」


 黒服がエージェント発言。

 イメージが映画『マトリックス』化してきましたね……



> 数日後、アリシアはまた図書室を訪れた。やっぱり気になっていたのだ。

> 図書室に足を踏み入れると、前回と同じ光景が広がっていた。昼間だったからか、ユーリだけでなく、他にも普通の子供たちもいた。

>「ほんとに育ててる……」

> 驚きを通り越して呆れの感情すら湧いてくる。そしてロボは……なぜか前回と違うロボに入れ替わっていた。一体どういう仕組みになっているんだろう。だから七不思議と呼ばれるのか——。


 この時代の孤児はロボットが育ててるんでしょうね。

 でもアリシアが母親を気にしているということは、さすがに親と一緒でないのは普通じゃないのでしょう。



>「お名前は?」アリシアはユーリに尋ねた。

>「ゆーり。ゆーりぼすとーく!」明るく元気な声が答える。

>「ほんとうのママはどこにいるの? お手伝いロボじゃなくて」

> その言葉にユーリは一転、涙ぐみ始めた。「ままだもん」

> 慌てるアリシア。「ごめんなさい、そういう意味じゃなくて……」


 真実が知りたいだけのアリシア。

 でも泣かせてしまうのは本意でない。優しい。



> そして彼女はロボットの方を向いた。「……ちょっと。オンボロさん。ほんとのとこどうなの?」

>「ほんとだよ? 壁の外のスラム。ほら、そこ。ビオトープ崩壊区域の、廃棄物リサイクルゾーン。ゴミ捨て場で適当な端末にログインしたら、隣で泣いてたの。これは運命。ロボはハズレだったけど、これは掘り出し物!」ロボットの声には、どこか誇らしげな響きがあった。

>「意味わかんない!?」


 アリシアの常識からは外れているようですね。

 まぁ、ロボットがそのへんで拾ってきた子供を育てていたら事案なのでしょう。

 そもそも「ロボはハズレ」という意味もわからなさそうです。



> アリシアは空回りして、検討違いのことを言い募ってしまう。

>「赤ん坊育てる気なら、せめて顔に表情ぐらいつけなさいよ。情操教育ってものがあるでしょ? それになによ? ユーリ・ヴォストークってロシア系の名前じゃない。この子アジア人だよ? ちょっと待って、そもそもこれって男性名じゃないの。この子、女の子でしょ!」

> 言いたいことが次々と溢れ出る。ロボットは黙って聞いていたが、やがてゆっくりと応えた。


 思った以上にアリシアの常識がありましたね。

 洗脳前とはいえ、元から相当に優秀なのでしょう。



>「いい名前でしょ、ユーリって。『大地で働く人』、転じて『農夫』。ヴォストークは『東』。有人宇宙船の名前でもあるの。つまり農民宇宙船・東号。ね? アリシア、一緒に火星で農業やろうよ」

> もはや何か突っ込んだらいいのかわからない。おかしいところが多すぎて、アリシアのツッコミ能力の限界を超えていた。


 ああ、なるほど。

 セレーネでしたか。

 アリシアを監視する第二世代AIはこの時点では常時監視していないようですね。



>「農業? しかも火星で? ほんとーに何いってるかわかんない!? 火星で農業する科学力があるなら、地球の植物を復活させなさいよ! ていうかあたし、名前教えたっけ!?」

> ユーリが絵本を差し出してくる。「ねえ、ごほん」

> タイトルは『宇宙イモは地球じゃ育たない』

> なに? それが火星で農業やる理由だっての? 宇宙イモは地球じゃ育たないから。


 地味にこのころからユーリの常識教育がされていたわけですね。

 アリシアのほうが異端に見える不思議。



> そんな悶々とした気持ちをよそにロボはなにやら考え込んでいるようだった。

>「うーん。情操教育……顔に表情ねえ」と唸ってから「こんなのはどう?」と言った。

> その瞬間——

> 何の気配もなく突然背中をちょんちょんと突かれ、アリシアは思わず「ひぃっ!」と悲鳴をあげてしまった。振り返ると視界に入ってきたのは——


 このシーンだけ切り取ると、妖怪のっぺらぼうとのやり取りです(笑



> 少女だった。

> ありえないほど整った顔。色素の薄い髪と、ガラス玉のような瞳。透き通った声。その瞳はまっすぐにアリシアを見つめて、まるで魂の奥を見透かすように言った。

>「あなた、面白い。魂が、ふたつ混ざってる」


 セレーネ。第三世代AIには、人間の「魂」が見えるのですね。

 さすが共鳴で操作できるだけあります。

 この未来のAIは恐ろしい……。



> そして手のひらを差し出してきていった。

>「報酬、払う?」

>「え? なんの?」

>「アリシアに、退屈紛れの探偵ごっこ、提供した。謎の幼児、幽霊、黒服、宇宙人。アリシア、元気になった」

> 綺麗な手……アリシアは思わずその手を取って握ってしまった。


 どこまでセレーネの差配だったのでしょうね。

 反射的に握手をしてしまうアリシア。文化的敗北。



>「握手……報酬は友達、になる?……じゃあ、それで、いい。あたしの名前はロボじゃない。セレーネ」

>「えっと、知ってるみたいだけど、あたしはアリシア」

> 見つめ合うこと数秒。少女はくるりと身を翻すと、近くの子どもたちと笑いながら遊び始めた。そして、いつの間にか風に溶けるように姿を消した。

> ……幻のような出来事だった。


 この握手に意味はあったのでしょうか。

 そしてアリシアには幻だったのでしょう。




>***

> 記憶が流れ、意識が現在に戻る。

> ユーリの顔はあの幻の少女、セレーネによく似ている。

> 4年前、現れたときは痩せて色も悪く、ただの孤児に見えた。

> でも……今は違う。健康を取り戻し、表情に柔らかさが戻ってからというもの──その面影は、確実に重なっていく。


 過去の記憶と現在、接触のあるユーリ。

 アリシアの記憶力は優秀です。



> あの時の少女、ユーリ・ヴォストーク。農民宇宙船日の出号。顔立ちは東洋系。14歳。月面開拓船の搭乗員。

> 現在の教え子、ユーリ・ヴォスホート。農民宇宙船東号。顔立ちは……セレーネが作り出した幻のロシア系美少女。14歳。開拓船が墜落した4年前に現れる。

> ヴォストークとヴォスホート。

> 「東の船」と「夜明けの船」。


 おっと、ヴォストークと、ヴォスホート。横文字で同じに見えてました。

 かつて第二外国語で露語を履修していたというのに……不覚。


 第1話でユーリの回想があり、墜落した話がありましたね。

 ユーリは墜落した船に搭乗していて、墜落時にセレーネに唯一“救われた”存在で。

 セレーネもあの惨劇の最中に、身を隠す媒体がなかったのでユーリに同居し、現在に至る―そういうことでしょう。



>「……わざと、やってる?」

> そんな疑念が浮かぶのも当然だった。


 接点があったからこそ気付いたアリシアです。



> いや、なにより──いくら丼。

> セレーネは、探しても探しても、見つからなかった。AIとして物理的な痕跡を残さず、世界のどこかで眠っていた。

> だというのに──その名前を出してきたあの少女は、こう言ったのだ。

>「いくら丼って、本当にあるんですか?」

> 冗談か。挑発か。あるいは──からかって遊んでいるのか?

>「……これ以上ふざけるようなら、許さない。絶対に見つけ出す。4年間も音沙汰ないと思っていたのに、実はずっと授業を受けていただと? 理由を、問いただしてやる」

> アリシアの声は低く、淡々としていた。怒りは静かで、逆に恐ろしかった。


 アリシアとしては、こう露骨に尻尾を出して遊ばれてる感がありますよね。

 当のユーリにしてみれば、セレーネに焚きつけられて、幻のいくら丼の匂いだけ味わって口にしただけなのに。

 元凶はセレーネですね!



> ヴァイオレットが、青白い光の中で微笑んだ。

>「あれじゃない? 13年前の探偵ごっこが続いてるんじゃない?」

> アリシアはなんとも言えない表情になった。


 ヴァイオレット、的確なツッコミです!






 以上が第8話でした。


 アリシアの過去とユーリ、そしてセレーネ。

 こんな接点があったわけですね。

 この後のお膳立てがそろった感じがします。


 続きを読んでいきたいと思います。



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