準決勝の相手は、関東王者・白嶺高校。全国屈指の強豪で、ここ数年は常にベスト4以上。打線は鋭く、守備に隙がない。まさに全国制覇を狙うにふさわしい相手だった。

初回。

先頭の勇気が初球を叩き、打球はライト前へ。迷いなく二盗を決め、チャンスを作る。

続く二番・田島は相手投手の配球を読み切り、カウントを粘って四球を選ぶ。出塁率の高さはチームに欠かせない武器になっていた。

三番が倒れ、二死一・二塁。ここで四番の俺に回る。観客席から大歓声が響く。

「太陽、決めろ！」

渾身のスイング。打球は鋭くライト前に弾き返り、二塁ランナーの勇気が一気にホームイン。先制点を奪った。

しかし白嶺も強かった。二回に犠牲フライで同点、五回には連打で1点を勝ち越される。スコアは1―2。重苦しい空気が漂う。

その裏、田島が魅せた。

相手がスクイズを仕掛けた瞬間、前に出て素手でボールを拾い、三塁走者を本塁で刺す。スタンドから大きなどよめきが起こった。

「田島、ナイス！」

斎藤が雄叫びを上げ、続く打者を三振に仕留める。

七回裏。

勇気がセーフティバントを決めて出塁。すぐに二盗で得点圏へ。

田島は冷静にボールを見極め、しぶとく三遊間を抜けるヒット。無死一・三塁のチャンスを広げた。

そして二死一・三塁で再び俺。

「頼むぞ、太陽！」

仲間の声に応えるように、外角低めを狙い打つ。打球はレフト線へ落ち、三塁ランナーが還る。同点、2―2。

九回表、斎藤は全力の投球で相手打線を封じ込め、試合はついに九回裏へ。

先頭の勇気が四球で歩く。すかさず二盗。田島が送りバントを決め、一死三塁。

バッテリーは大きく警戒してきたが、その隙を突いて三番が犠牲フライを放ち、勇気が俊足でホームを陥れた。

試合終了。スコア3―2。俺たちは死闘を制し、二年連続で決勝へ進んだ。

ベンチに戻ると、勇気が息を切らせながら笑った。

「太陽、決勝だ……ついに、和哉と戦える！」

田島も力強く頷く。

「俺たち三人で、この試合を勝ち切るんだ」

俺は拳を握った。

「ここまで来たんだ。最後までやり抜こう」

全国制覇まで、あと一勝。

そしてその相手は、和哉のチーム――宿命の決戦だった。

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