第9話 新しい舞台へ
桜の花びらが舞う四月。
俺と勇気は、ついに高校の門をくぐった。
リトルリーグで積み重ねた経験と自信を胸に、俺たちは新しい舞台に挑もうとしていた。
「太陽、ついに高校生だな!」
隣で制服のボタンを直しながら笑う勇気。その笑顔は、中学時代から変わらない。だが体つきは明らかに逞しくなり、肩幅も広がっていた。
俊足の彼にとって、高校野球のフィールドは最高の舞台になるだろう。
グラウンドへと足を運ぶと、既に上級生たちが練習を始めていた。
バットが風を裂く音、ボールがミットに収まる重い音。その一つひとつが「中学とは違う世界」に来たことを実感させる。
◇
だが、そこに和哉の姿はなかった。
中学最後の大会で全国を制したあと、「高校でも三人一緒に」と誓ったはずだった。
けれど彼は別の高校へ行く道を選んだ。
理由は聞いていない。ただ、和哉の瞳に宿っていた決意の強さだけは忘れられなかった。
――必ずまた、マウンドの上で会う。
それが俺の胸に刻まれた答えだった。
◇
入部希望者として自己紹介をすると、周囲からざわめきが起きた。
「全国優勝した太陽と勇気じゃないか?」
「本当に同じチームに来たんだ……」
既に俺たちの名前は広まっていた。注目されるのは嬉しいが、その分だけ結果を出さなければならない。
練習に混じると、上級生たちの球の速さや打球の鋭さに驚かされた。
中学時代は圧倒的な力で制したが、ここでは一筋縄ではいかない。
だが――この壁を越えたとき、本物の強さが身につく。
「太陽、行こうぜ! 俺たちならやれる!」
勇気が走り出す。俊足が土を蹴り上げ、まるで風そのもののように駆け抜ける。
俺も後を追い、バットを握りしめた。
この新しい舞台で、俺たちはもう一度証明してみせる。凡才でも努力で最強になれると。
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