完全無欠の僕が学校のおねえさんに弱点を作られる話

サーモンの煮物

第1話 藍の日常に、、

「野上くん!私と付き合ってください!」

「ごめんね、今は付き合うとか考えられないかな、、、」

何度目だろうか。少なくとも高校に入ってから3回目。どの人も悪い人ではないのだろう。なんなら今の人は、周りに美少女だ、と言われている生徒だった。しかし、藍の記憶には全く残っていなかった。だから、知らない人に告白されたといった印象しか残らない。


「ふぅー」


告白してきた女子がいなくなった屋上で空を見上げながら一息ついた。野上藍は人にあまり興味がない。今の子もすでに顔にモヤがかかっていて思い出せない。そんな藍でも自分に好意を持ってくれた人の告白を断るのは精神的に疲れる。その疲れを青く澄んだ空を見ながら、疲れを癒していた。どのくらい時間がたっただろうか。時間にしたら数分だが、藍の疲れが多少癒され、頭がクリアになったので、教室に戻り昼ご飯をたべに戻ろうとしたら、思わぬところから声が聴こえた。


「きみぃ~大変だね~」


藍は誰もいないと思っていたのに知らない女子の声が聴こえた。内心尻もちをつきそうになったが何とか両足に力を入れ踏ん張った。周囲を見渡し、声の主を探したが見当たらない。もう一度よく見渡してみようと思い見渡そうとしていたところ

「こっちだよ~」

声の主である女子がもう一度声をかけた。


藍は屋上へ上がってくるときに開けた扉の上を見上げると、1人の女子生徒がいた。もちろん、人に興味のない藍にとっては、その人物は見覚えがあるはずもない。

(そんなところ登れたんだ、)

という感想だった。扉の横を見るとはしごがあり彼女はそこから登ったのだろう。そんなところに登るなんてどこぞのギャルかサボり魔の問題児だと思い見上げていた。

そして、どんな人物なのだろうと顔を見ようとしたが、ちょうど太陽と重なり全く見えない。


「ごめんごめん、まぶしくて見えないよね、降りるからちょっと手かしてよ」


どうやら、その女子生徒は降りてくるらしい。その女子生徒ははしごに足をかけている音がする。が、その時、藍は内心思った

(手を貸すってどうゆうこと?)

確かに地面まではしごが続いているわけではなく、途切れているタイプのはしごで手助けは必要そうだが、1人で登れたのであれば、降りられるはずでは?とも思ったが、口には出さないではしごの下で待っていた・すると、


「ちゃんと支えてよね~」

「え、あ、、はい、、、」


藍は、なにを支えるんだ?と思いながら中途半端な返事をした。すると、、、


「はいっっ」

「う、うぐ、、、、」


藍は何をされたのか一瞬分からなかった。さっきまで太陽の光でよく見えなかった女子が胸の中にいる。

はしごの中段あたりから飛び降りたのだった。


「ナイスキャッチ~~、流石、モテる男の子は力持ちだね~」


そんなことを言いながら、その女子生徒は藍から離れた。


「やっぱり、こうゆう頼りがいがあるところがモテの秘訣なのかなぁ?いや、やっぱり整った顔立ちかなぁ?いや、はたまたこの誰にもなびかないミステリアスな感じぃ?うーん、どれもか!!うんうん!」


と完全に自分の世界に入ってしまっていた。藍は完全にペースを乱され、呆然と立ち尽くしていた。すると


「あ、ごめんごめん、1人で盛り上がり過ぎっちゃったね~」

「全然だいじょ、、、  いえいえ、大丈夫ですよ」


藍は、とっさに敬語に切り替えた。

それは、 女子生徒の胸元のバッジが見えた。


藍の通う高校では、胸元に「つばき」のバッジをつけるという校則がある。だから、皆バッジをつけているのだが、学年によってバッジの色が違う。藍は1年生だから、赤いバッジをつけている。そんな感じで、2年生は緑、3年生は青のバッジをつけている。その女子生徒の胸元には青のバッジが見えた。


(この人3年生なのか、、、まぁそうでもないとあんなところに登れるなんてこと知らないよな__)


「なんであんな所にいたんですか?」

「え、、、いい天気だったから、1人でお昼食べて、ゆっくりお昼寝しようと思っていただけだよ、、、? あ! ぜんっっぜん面白いシーンが見れそうとか思ってないから~」


その先輩は、話しながら藍の顔色を見てそんな風に言った。


「そんなことは思っていませんよ。ただ、よくそんなところに登れるって知ってたなあって思っただけです。」

「あ~そっちね~、教室っていろんな人がいて気持ちが休まらないじゃん?だから、お昼はここに来てるんだ~」

「あ、そうなんですね。」


そんな会話をしているうちに時計を見ると、昼休みの時間は半分以上たっており、今急いで戻らなければ、昼ごはんが抜きになってしまう。この先輩を何とか振り切らないとな、、など考えていると、、


「まだ、お昼ご飯食べてないから上に戻るね、野上君もお昼まだなんでしょ??教室戻って早く食べないとごはん抜きになっちゃうよ?」


と言われ、ちょうどいいなと思った藍は、


「そうですね、じゃあお先に失礼します。」


と言って屋内へ続く扉の方へ歩き始めたら


「またね~」

と手を振られた。なので、一応、手を振り扉を閉じるときにお辞儀をして屋上を後にした。

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