おっさんのワイ、転生したら地味巨乳JDだったので女子力あげて無双したった
月見もなか
第1話「目覚めたら、地味巨乳JDだった件」
――まぶしい。
カーテンの隙間から差し込む朝の光で、ワイは目を覚ました。
「……ここ、どこや」
鼻先に漂うのは、いつもの加齢臭とは無縁の、柔軟剤みたいな爽やかな匂い。
天井は白く、壁にはポスターもなく、机の上にはノートと参考書だけ。
飾り気もなければ、遊びの気配もない。
(華やかさゼロやな……。学生の部屋っぽいけど……誰の部屋やねん)
寝返りを打った瞬間、胸のあたりでどすんと重みが揺れた。
「……え?」
視線を下げて固まる。パジャマの布地の下に、見慣れんふくらみ。
恐る恐る両手で包む。むにゅ。
「……お、おっぱい!? しかも……デカっ!」
手のひらいっぱいに広がる柔らかさ。押せば形を変え、離せばぷるんと戻る。
おっさん時代にはあり得なかった夢の感触が、今は自分の体にあった。
(いやいや、落ち着け。これは検証や、学術的調査や!)
交互に揉み、寄せて谷間を作り、親指で先端を軽くつつく。ぴくっと反応して背筋が震えた。
「……感覚、完全に女やん……」
パジャマのボタンを外し、背中のホックを震える指で外す。
ぱちん。
解放された胸がぷるんっと弾んだ。
「……すげぇ……贅沢すぎるやろ……」
思わず手に取ったブラをひっくり返し、タグを確認する。
そこには薄くなった文字でこう書かれていた。
《F80》
「……Fカップ!? マジか……。どおりで重いわけや……」
呆然と呟きながら鏡の前に立つ。
だが映る顔は――ぼやけている。輪郭しか分からない。
「……目ぇ悪いんか?」
机の端にケースを見つけ、開けると黒縁の眼鏡が入っていた。
かけてみると――黒髪ロングで前髪重め、地味な女子大生が映った。
胸は迫力あるFカップ、ただし――
下っ腹はぽよんと柔らかく、腕も脚も少しむっちりしていて、全体の印象は冴えない。
「……これ、ワイ……?」
嫌な予感がして、パジャマの裾をめくる。パンツの中を恐る恐る確認する。
「……無いっ!」
膝を抱えて床に座り込む。
(ほんまに……女になっとるんか……?)
その瞬間、頭がズキンと痛む。
――真夜中のオフィス。
――蛍光灯の下、積み上がるタスク。
――胸の締め付け。
――暗闇に沈む視界。
「……あ」
(ワイ……死んだんか。働きすぎやったしな……太りすぎてたし……)
深呼吸して机の上に置かれていた財布を開ける。
カードポケットに学生証が差し込まれていた。
《青川学院大学 文学部 二年 佐藤菜月》
「……佐藤菜月。これが、ワイの新しい名前か」
鏡の中の“佐藤菜月”は、地味で、ぽちゃで、眼鏡をかけるとより冴えない。
その姿を見つめながら、ただ呟く。
「ワイ……地味な女子大生に……転生してもうたんか」
胸の奥に、まだ整理しきれない重たいものを抱えたまま。
けれど時計の針は無情に進んでいた。
クローゼットを開けると、並んでいるのは暗い色の服やジーパンばかり。
華やかさのかけらもないラインナップから、黒Tシャツとジーパンを選んで身に着ける。
スニーカーを履き、カバンを肩にかける。
ドアノブに手を伸ばし、深呼吸。
「……とりあえず、大学行ってみよか」
ガチャリ。朝の光が差し込み、二度目の大学生活が始まった。
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