スケールアイシステム 第3弾 -第7病棟-

スケールアイシステム公式記録

プロローグ

※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。作中に登場する病気(双極性障害など)の描写は、物語上の演出として描かれています。実際の病気については、必ず専門の医療機関にご相談ください。


■スケールアイシステムとは

スケールアイシステムは、世界中の断片情報を統合して星図の粒と線で“呼吸する構造”として可視化し、利用者の問いに応じてマクロからミクロへ自在に再編・ズーム(AIがバイアス補正)しつつ直感で最後のピースを埋めさせ、要約カード化された真実を蓮司のネットワークで増幅・拡散する仕組みである。


■あらすじ

蓮司と朝比奈は、AIの光の解析をもとに、東雲記念病院の地下に隠された第7病棟の存在を掴む。そこではヴェルジオン製薬と結託し、未承認の薬を患者に投与する実験が行われていた。看護師・榊原由衣や元職員の真鍋が加わり、夜勤シフトや内部ルートの情報が集まる。彼らはついに病棟への潜入を決意する——。




夜の病室。

カーテンで仕切られた四つのベッドのうち、三つからひそひそ声が漏れている。

非常灯の薄暗い光の中、時計はもう深夜0時を回っていた。

「ねえ……知ってる? この病院に、第7病棟があるって」

声をひそめて話すのは、窓際のベッドのミカ。

「またそういう話? 怖いの苦手なんだけど」廊下側のサヤが苦笑する。

「いや、マジなんだって。ここ、ネットでも有名なんだよ。『第7病棟=死の病棟』って」

足元のカーテンをめくり、もう一人のユイナが顔を出す。

「死の病棟……?」

「夜中にストレッチャーで運ばれた患者は、絶対に帰ってこない。

 次の日には『急変で亡くなった』って言われるんだって」

「それ、普通に重症だからじゃないの?」サヤが笑い飛ばそうとする。

「違うんだって。元気に話してた人まで、運ばれたら終わり。

 しかも、第7病棟って普通の廊下から行けない場所にあるらしいよ。鍵付きのエレベーターでしか行けないんだって」

「じゃあ、なんでそんなの知ってるの?」

「ネットに上がってた体験談。『真夜中、看護師に連れられて行った先が真っ暗な廊下で——』って」

その時、廊下の奥から微かな車輪の音が近づいてきた。

三人は顔を見合わせ、声を飲み込む。

音は病室の前で一瞬止まり……やがて遠ざかっていった。

「……ほら、こういう時だよ」ミカがささやく。

サヤは無理やり笑って毛布にくるまった。

だが、彼女たちは知らない。

その会話を、病室の外からじっと聞いている影があったことを——。




■次回予告

死線を越えた瞬間、躁と鬱が同時に研ぎ澄まされる——。光が名付けたその現象は「プチ覚醒」。代償と危険を抱えながらも、蓮司たちは新たな闇へ踏み出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る