3話
あれから2週間経過し、私は学園の修練場で源殿と手合わせをしていた。
神居学園修練場〜
カンッ、カンッ、カーンッ
木刀を打ち合う音が修練場に響き渡る
源「まだまだだのう」
暁仁「くっ…」
私は木刀を青眼に構え斜刀と見せかけ横薙ぎに木刀を振るうが木刀の切っ先で流され、当たらず体勢を崩さず身体の軸を使い上段から切り下ろすがこれも流される。
暁仁「若葉流・柳」
4連撃技を使用するも、木刀を上から重ねるように連撃を防ぎ私の首元に木刀を添えた。
源「少しは腕は上げたようだのう」
暁仁「また、駄目でしたか…」
源「まぁ、その歳で大したもんじゃよ」
暁仁「手加減されただけでなく、一撃も当てることができていないんですが」
源「いや、実際に同年代ではもうお前さんに勝てる者は、剣術だけなら北坊くらいではないかのう」
暁仁「勝太ですか…アイツは見た目の割に天才肌ですからね」
源「今のところどっちが勝っているのか聞いてもいいか」
暁仁「私が今のところ2勝、勝ち越してはいます」
源「暁坊と北坊は相変わらずその繰り返しだのう」
暁仁「同年代のいい競い相手だとは思ってはいます」
源「まぁ、続けることじゃな…今日はここまでじゃ」
暁仁「ありがとうございました」
私は修練場から宿舎に戻る途中、見知った女性が2人近づいてきた。
静華「暁仁、やっと会えたね」
暁仁「まだ2週間しか経過していませんよ」
桜「お前は何故、2週間も連絡をよこさなかった」
暁仁「あっ…」
静華「その顔は完全に忘れていた顔だね」
暁仁「………そんな事ありませんよ」
桜「お前はわかりやすいな」
暁仁「…申し訳ありませんでした」
静華「罰として帰ったら添い寝すること」
暁仁「それいつもと変わりませんよね」
桜「今回はお前から私達に抱きついて寝るんだ」
暁仁「……拒否件は?」
静華「ないよ」
桜「ないな」
暁仁「でも、御二人は女子寮に住むのでは?」
桜「学長から許可を得てお前が住んでいる。来客用の宿舎に一緒に住まわせてもらうことになった」
静華「覚悟してね。僕達もう遠慮しないから」
学長〜、何やってんだあの爺!
静華「そうですか…それでも今日はやめたほうがいいのでは?」
静華「何で?」
暁仁「静華様は明日ここの受験日ですよね」
静華「安心していいよ。僕は推薦組だから」
終わった…
桜「行くぞ」
私は御二人に連行される形で宿舎へと戻るのであった。
試験当日〜
私は桜様と共に静華様の実技試験の応援へと来ていた。
暁仁「神居学園の実技試験は毎年あのように行うのですか?」
桜「あぁ、陰陽庁が登録した化物をデータをホログラムとして実体化させ戦わせるのだ」
暁仁「実体化という事はダメージはあるんですね」
桜「そうだ」
暁仁「歴代受験生がこの試験で戦った魑魅魍魎は最大で何級ですか?」
桜「5級だ」
暁仁「複数出てくる場合はあるんですか?」
桜「8級〜6級までは、複数出現するが5級以上は単体出現するのが基本だ」
暁仁「なるほど…説明ありがとうございます。桜様」
桜「…お前からしてこの試験どう見える?」
暁仁「いいとは思いますが、データと実戦では状況が異なります」
桜「例えば何だ?」
暁仁「倒した敵は消えずにその場に残り戦いづらくなるという状況です」
桜「…確かに当たり前な事なのに私自身意識していなかった」
暁仁「天候や地形もそうですし、霊災は沢山の化物に囲まれることも乱戦になる状況が当たり前ですからね」
木村「流石特級は違うな」
そう後ろから話しかけてきたのは木村勇一だった。
木村「隣いいか?」
暁仁「どうぞ」
桜「暁仁、この男は誰だ?」
暁仁「陰陽庁から派遣された。私の補佐をしてくれる方です」
木村「木村だよろしく」
桜「あぁ、こちらこそよろしく頼む」
木村「しかし…俺とあんたにとってはやはりこの試験は物足りないと思っちまうよな」
桜「暁仁、この男は何級なんだ見たところ私達とそこまで年齢は変わらないように見えるが…」
暁仁「私と同い年の1級ですよ」
桜「なっ…!」
木村「おい、そろそろ始まるみたいだぞ」
試験官「これから実技試験を行う。受験番号と名前を呼ばれた者以外は外で待機するように、終わりしだい次の受験者を呼ぶ」
試験官「受験番号1番川口イサナ」
受験生「はい!」
説明を受けた通り、他の受験者は外にあるロビーに向かった。
試験官「準備はいいか…始め!」
受験生「水流弾」
私達3人は、2階の観客席で試験の様子を見ていた。
木村「駄目だな…」
暁仁「そうですね」
桜「何処が駄目なのだ」
暁仁「冷静さを失い状況把握ができていないだけでなく、術のコントロールも氣のコントロールもてんで駄目ですね」
木村「こりゃあ、6体目で終わるな」
試験官「そこまで、結果修祓数6体」
桜「お前達2人の予想通りになったな」
暁仁「これぐらい予想できなければ1級以上は難しいですよ」
桜「…私も頑張らなくてはな」
受験生が次々と試験を受けるが実力が高いと思える有望株は見当たらずに、受験生は26人目となっていた。
試験官「次、受験番号26番二葉佳奈」
「は〜い」
水色の髪に、団子頭をした少女が試験に出てきた。
試験官「始め!」
「竜頭七重!」
七頭の水竜が少女の周りに出現した。
「行っけ〜ぇ」
次々と出現する怪物達を巧みなコントロールで倒していく。
「そこまで!受験者、次は5級だがどうする?」
「流石に無理でぇ~す」
「分かった。それでは記録を発表する」
二葉 佳奈
8級35体 7級20体 6級15体
結果…合計修祓数70体
「二葉佳奈、実技試験合格」
「やった〜ぁ〜!」
2階観客席〜
木村「どう思う?」
暁仁「5級といったところでしょうか?」
桜「凄まじいコントロール技術だったな」
暁仁「あの術は全て同時に操るのがベストなんですが、流石にそこまで受験生に求めるのは酷ですからね。術のコントロール技術は水竜を3体操っていたので5級といったところでしょうか」
木村「最初から3体だけにしとけば5級の化物も相手にできただろうが…あれは完全な判断ミスだな」
桜「そうなのか?」
暁仁「桜様、手数は多く用意しとけばいいのではなく、自分が今持っている手札で如何に最小限に、そして最大限に勝負することができるのか、それを考える事が重要なんですよ」
桜「なるほど…お前はあの術を知っているのか?」
暁仁「過去に、模擬戦で同じ術を使っていた人間と戦った事があるんですよ」
桜「そうなのか!」
暁仁「そいつは水竜を9体同時に操っていましたがね」
木村「そりゃあ凄いな、9体を同時に操るとなると2級ってとこか」
桜「その者は、今何処に?」
暁仁「死にましたよ」
木村「…まぁ、この世界じゃ当たり前の事だからな」
暁仁「そうですね…」
桜「…」
試験官「次、受験番号37番一条静華」
暁仁「静華様の番がきましたよ」
試験官「始め」
「縛樹」
静華様は木氣を使用し敵の動きを封じた。
「炎弓」
炎の弓を創り、炎の矢を右手に持ち飛ばす。
2階観客席〜
木村「なるほど、基本に忠実かつ実戦的だな」
暁仁「……まさか、静華様」
桜「どうした?」
木村「多分あんたの主人は5級以上に挑むつもりみたいだな…」
桜「なっ!それは本当か」
暁仁「えぇ、どうやらそのようですね」
次々と火矢を放ち目の前の敵を殲滅していく静華様の姿にはまだ余裕すら感じられた…
試験官「そこまで…次は5級になるが受けるか?」
静華「受けるよ」
試験官「戦闘中は棄権ができない為、覚悟するように」
アナウンス「これから5級の魑魅魍魎が7体現れます。一体ずつ出現しますが連戦となる為、棄権をする際は倒したあとに棄権を試験官に進言するようお願い致します」
試験官「始め!」
それと同時に出現したのは天狗、5級の中では
飛ぶのが早く木の棒を武器として使用する為、頭を殴られ続ければ致命的だな…
暁仁「受験者にとっては厳しい相手かもしれません」
桜「何故だ?」
暁仁「天狗は、本来集団行動をもとにして戦うので単体となれば楽なのですが、5級の中では最速で飛び回ります」
桜「時速は?」
木村「50kmだ」
ハク(そろそろ、使うか…)
暁仁「何を使うんですか?ハク」
ハク(見ていればわかる)
静華「建御雷神の神に申し奉る」
暁仁「…!」
静華「我は御身の力で、白い閃光をもって我が敵を祓いたまえ」
木村「おいおい、マジかよ」
静華様「雷天…」
静華様頭上に黒い雲が浮かび上がり、雷雲が半径10mを静華の頭上を覆い尽くした。
桜「あれはなんだ」
暁仁「五行には本来雷は存在しません。雷を使用できるのは古式陰陽術のみ」
木村「暁仁、あんたが教えたんじゃないのか!」
暁仁「いいえ…まさかハク!」
ハク(あぁ、我が教えた。お嬢の半径10m内に近づくと雷撃が近づく者を襲い。あの術式は自身の氣が枯渇しない限り出現し続け、白雷を自由自在に操る事ができる)
暁仁・木村「「何だそのチート術式は!」」
桜「そんなに凄いのか?」
暁仁「現在、雷の術式を使用できる陰陽師は4人いるのですが自分の周囲の雷を自在に操る事をできる者は今の所、静華様が初です」
木村「何なら、そんな術式があること自体誰も知らないうえに氣のコントロールを少しでもミスれば暴発しかねない」
桜「静華…強くなったんだな」
暁仁「静華様の六感があってこそできる芸当ですよ…本当にあの方は」
ハク(我に教えを求めに来たので教えたまでよ)
暁仁「正直予想外にも程がありますよ…」
ハク(驚いたであろう?)
暁仁「えぇ…驚きましたよ」
天狗が攻撃を仕掛けたが…
静華「雷槍」
静華様の周囲に6本の雷の槍出現し、自身の死角をなくし2本を天狗の攻撃に回し串刺しにした。
木村「凄いな…」
暁仁「えぇ、実力的には4級といったとこですかね」
アナウンス「次が出現します」
静華様はその後も、姑獲鳥、白うかり、魍魎、餓鬼、狂骨とあっという間に6体を修祓し、最後の一体となった。
アナウンス「最後の一体となります。これを修祓すれば受験者は4級のライセンスを習得となります」
試験官「始め!」
出現したのは、赤鬼だった。
木村「おい、何考えてんだ!」
試験官「観客席で観戦されている方は静かにしていただくようお願いします」
桜「どうかしたのか?」
暁仁「…赤鬼は3年前に情報修正が行われ、4級中位クラスと危険度が上がったんですよ」
桜「何だと!5級7体と言っていたはずだぞ、何故4級の化物が出てくるのだ」
暁仁「恐らく、今回の試験官は情報修正された魑魅魍魎のデータを確認していないのでしょうね」
先ほどまで圧倒していた静華様が押され始めた。
木村「やっぱ、あんまり効いてねえぞ」
桜「静華…」
暁仁「赤鬼は耐久力でいえば3級に近いと言われていますからね。このままだと…」
木村「助けなくていいのか?」
暁仁「静華様が諦めてない以上、私が介入するのあの方の覚悟を踏みにじる行為です。危なくなれば助けます」
「アヴァ〜オ〜」
赤鬼が手に持った棍棒を振り回し、攻撃するがそれを紙一重で避け続ける静華様
静華「くっ…」
木村「おい、そろそろヤバいぞ」
暁仁「……」
私は刀を出し、動きだそうとそう思ったときだった。
ハク(落ち着け主よ、まぁ大人しく見ておれ)
静華「雷縛」
静華様は赤鬼の動きを封じ…デバイスではなく札を使用し、印を結んだ。
静華「天に仕えし 光り輝く 日の神は 天降りては なお光ませ」
静華「…雷光」
赤鬼の頭上から雷が落ち、全身を貫き焼き尽くした
静華「はぁ…はぁ…はぁ…」
私はあらん限り目を開き静華様を観ていた。
ハク(どうだ…主よ)
私は笑顔と共に称賛の言葉を彼女に贈った…
暁仁「ご立派でしたよ…静華様…」
試験官「受験者が試験を受けられないと判断し、これをもって終了とする。結果を発表する」
一条 静華
8級35体 7級20体 6級15体 5級7体
合計修祓数77体
試験官「一条桜、実技試験合格!」
合格の発表と同時に桜様はその場に倒れ意識を失った。
試験官「おい!早く担架を持ってこい」
暁仁「桜様、行ってあげてください」
桜「わかった。お前はどうする」
暁仁「私は試験官にこれ以上ミスが起こらないか監視します」
桜「わかった」
桜様は観客席から静華様の元まで駆け足で向かうのだった。
木村「行かなくてもいいのか?」
暁仁「静華様の側に今居るべきなのは家族である桜様だけですから」
木村「確かにそうだな」
私は静かな怒りを我慢しつつ試験を見守り続けるのであった。
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