2話
私は現在、キャリアケースを持ちながら東京駅を彷徨っていた。
「あれから2週間で荷物をまとめ、御二人より先に来たが人混みがヤバい」
私は指導役の準備の為、御二人より先に東京に来ていた。静華様と桜様は3週間後に合流する予定だ
「え〜と、場所は東京湾に人工的な島を作ったわけか…どうやって行くだろう?」
私は時計型のデバイスを操作し調べることにした。
「車で橋を渡れば行けますが観光地としても人気なので恐らく渋滞でしょうし…どうしましょう」
(我に乗っていくか?)
「確かにハク、貴方に乗っていけば速いでしょうが貴方は絶対に目立ちます」
(では、どうする主よ)
「…船でいきましょうか」
(船か…)
「はい、学園行きのフェリーが19時までやっているとの事なのでそれに乗って行きましょう」
(…やはり我に乗って行かんか?)
「貴方は特級ですよ。感知されたら討伐隊なんかが出動するはめになるので却下です」
(…確かにそうだな、仕方ない)
「行きますか」
私は海岸に着きフェリー乗り場に並ぶこと2時間、無事にフェリーに乗船することが出来た。
「いや〜ぁ、風が気持ちいですね」
(主、あとどれくらいで着くのだ)
「20分ってとこですかね」
(我は眠りにつく、用があれば起こせ)
「わかりました」
それにしても海は初めて見たな、この何処までも続く地平線が美しく何より海は自由なんだとそう感じさせてくれる不思議な力強さがある。
もし、この光景をあいつらと見れたならよかったのにな…
「隣いいか?」
後ろから声を掛けてきたのは、肌が日焼けしたスーツ姿の黒髪の青年だった。
「どうぞ」
「あんたが陰陽庁から学園に派遣される特級であってるか?」
「貴方こそ陰陽庁の公安の人間では?」
「何だ気づいてたのかよ」
「歩き方が隠せてないですよ」
「やっぱりただもんじゃねえな。俺は木村だ、木村勇一、あんたのサポート役だ」
「階級は?」
「非公式だが1級だ」
「見たところ年齢は変わらないと思うんですが…」
「そりゃぁ、あんたと同い年だからな」
「マジですか!」
「と言っても情報活動が主に仕事で実戦は得意じゃない。結界を専門としている」
「それは心強いです」
「あんたの指導員役の補佐として活動する予定だ」
「よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく頼む」
「貴方は命令されてわざわざここまで?」
「嫌、噂の怪物がどんな人間か気になってな自ら志願した」
「噂?」
「裏社会で有名な血狐がどんな人物なのかそう気になってな」
「……やはり陰陽庁は知っていましたか」
「烏のメンバーという所までは調査済みだ」
「優秀なんですね」
「まぁな」
そんな話をしているうちにアナウンスが船内に流れた。
「もう着くみたいですよ」
「船から降りたら学園の学長室に行ってくれ」
「了解」
「これをあんたに」
渡されたのは身分証明書とカードキーだった。
「吉備家は名門だからな、名字だけ変えといた」
「神島暁仁?」
「それがあんたが今日から7年間名乗る偽名だ」
「わかりました」
「そんじゃあ2ヶ月後」
「えぇ、ありがとうございます」
そう言い残し木村殿は去っていった。
(変わった奴よな)
「ハク起きていたんですか」
(あぁ、それより気づいているか)
「えぇ、彼氣のコントロール完璧でしたね」
(あやつ…相当な結界使いよな)
「それほどですか」
(平安の世にもあれほどの結界使いはいない)
「会話中、自分と私に結界を張り話の内容を聞かれないようにしてましたからね」
(主はどう思う)
「結界だけなら今いる特級でかなうものはいないと思います。恐らく、私の全力にも耐えられる程の結界を作る事ができるでしょうね」
(やはりか…)
「戦闘面でもそこらの1級だったら難なく倒せるでしょうね」
(何が実戦はできないだ。とんだタヌキがいたものだ)
「よく陰陽庁は彼のような人材を私に派遣しましたね」
(主が全力をだせるように配慮したのだろう)
「それほどの敵が現れると…」
(我にもわからぬ)
「面倒事の予感しかしないのですが…」
(もう慣れっこであろう)
「はぁ〜」
私は島に上陸した。目の前に写ったのは想像以上の巨大な施設だった。
「デカい」
(文明はこれほど発展していたのか)
「まぁ、観光地でもありますからね。私達は学園に行きましょう」
私は大勢の人混みを切り抜け、学園の門前で棒立ちになっていた。
「…門がデカい」
(縦25m、横20mといったとこか…)
「学園の敷地も半端ないですね。地図がなければ迷います」
(学舎もデカいのう)
「まぁ、大学科をあわせれば全校生徒2248名いるそうなのでこれぐらいデカくないと話にならないのでしょう。ほとんどが上流階級の子供ばかりでしょうしね」
(ただ…)
「えぇ、レベルが低すぎる。これが陰陽師の名門校ですか…」
(時代よな…)
「まぁ、省略式は腕についているデバイスと自身の氣を消費すれば術を使用できますから、それでも強い方はいますがね」
「とりあえず学長室に行きましょうか」
私は神居学園に足を踏み入れ、歩くこと30分
「……迷った」
(迷ったな)
「どうしたものか…」
「そこの君!」
「ん…?」
話しかけてきたのは学園の学生服に身を包んだ一人の爽やかなイケメンだった。
「見たところ迷子かな?」
「貴方はここの学生ですか?」
「あぁ、高等部2年鮫島貞臣だ」
「私は神島暁仁です」
「見たところ同い年のようだけど、来月受験を受ける新入生かな?」
「いいえ、春からここの指導員として陰陽庁から派遣される者です」
「あぁ…君が」
何だその期待していないとでも言いたそうな顔は…腹が立つな
「で、何しに来たのかな?」
「学長室に呼ばれていまして、僭越ながら場所をお教えいただいてもよろしいでしょうか」
「はぁ〜、仕方ない。ここから500m歩いて右折すれば高等部の校舎がある。そこの8階に学長室がある。分かったならとっとと行きたまえ」
「ありがとう御座います」
(不愉快な若造だ)
「まぁ、仕方ありませんよ」
私は校舎に着き、また立ちつくした。
「どうなってるんですかここ…」
(高さ10階建て半径12kmの校舎ときた。贅沢よな)
「校舎を回るのにどれくらいかかるのでしょうね」
(1周半日以上といったとか…)
「………行きますか」
私は校舎を歩きエレベーターを見つけ8階に到着し、学長室に向かう。
「ここですか…」
(さて、どんな人間がいるのやら)
「まぁ、事前に調べてありますよ」
私は学長室に入った。
そこには左目に切り傷が刻まれた白髪の老人が座っていた。
「お久しぶりです。斎藤源殿」
「久しぶりじゃなあ、暁坊」
「相変わらずお元気そうで何よりです」
「何、儂もまだまだ現役じゃよ」
「今回特級を派遣された理由はなんですか?」
「何、ここの学生共は今の陰陽師を舐め腐っておるのでな。ただでさえ人材不足の戦場にこのままだせば間違いなく、今いる学生の9割は死ぬと思ってのう。教育の一貫として依頼したまでじゃ」
「派遣の事は他に誰かご存知で?」
「いや、儂の独断なので他の者は誰も知らぬ。ただ陰陽庁から派遣されるとだけ伝えてはある」
「そちらのほうがいいでしょうね」
「それは別として、暁坊、随分と腕を上げたようじゃのう」
「まだまだですよ」
「それにしても、話の通じる人間が派遣されてよかったわい」
「褒め言葉と受け取りますよ」
「藤助の奴は元気か?」
「えぇ…疲れを知らないのかと言いたくなるほどには元気ですよ」
「あいつときたら、師に会いに来ないで好き放題やりおって」
「まぁ、それが師匠の長所でもありますからね」
「暁坊も苦労しておるのう」
「本当ですよ。今回の件を聞かされたのも2週間前ですよ」
「大変じゃなぁ」
「私は学園で何をやればよろしいのでしょうか?」
「暁坊には、演習場での実戦指導を担当してもらう。指導内容は好きにしてもらって構わない」
「わかりました。それでは私は荷解きをしなければいけませんので宿舎に向かわせていただきます」
「あぁ、ここまで来てもらって悪かったのう」
「いえいえ、また用があれば何時でもお呼びください」
「あぁ、忘れておった。暁坊の指導は儂直々相手をするから覚悟しておれ、お前さんが3年前からどれだけ強くなったか見てやろう」
「……………失礼しました」
やべ〜師匠といい、源殿といい戦闘狂しかいないのかよ。
(主、あの老人強いな)
「烏の佐々木殿とも剣では互角でしょうね」
(どの世にも強者が蔓延っておるな)
私は宿舎に向かい。荷解きをし、御二人が来るまで悠々自適に過ごすのだった。
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