11話

 あれから2週間経ち、私は静華様を護衛する日々を過ごしていた。


「暁仁〜!」


 静華様が私の部屋に慌てた様子で訪ねてきた。


「どうされました?」


「姉さんが帰ってくるって、今連絡が…」


「まだ休みまで少し早いんじゃないですか?」


「…そ、そのー、どうやら清姫との戦いでの暁仁の気配を感じとったらしくてね。僕のことが心配で予定より早く帰ってくるんだって」


「わざわざ東京からですか?」


「そうみたいだよ…」


「流石に分かりますよね。静華様のお姉様ですし…」


「そういえば、ハクはどうしたんだい?」


「師匠に式神の札を作ってもらい。今は封印式の中で寝ているみたいですよ」


「それで、お姉様は何時ごろお帰りになるんですか?」


「今日の15時頃には着くらしいよ」


「2時間後じゃないですか!」


「それでどうするの?」


「出迎える準備をするだけですが?」


「そうじゃなくて、姉さんは腕が立つ剣士なんだ。きっと暁仁に試合を申し込むと思うよ」


「大丈夫です。この世界で私に勝てる剣士は6人程です。お姉様が7人目になるかはわかりませんが、楽しみにはしておきますよ」


「6人…それはいったい誰なんだい?」


「まず義父である吉備藤助、現在表で最強と謳われている剣士斎藤源、謎の女性剣士鬼面の御前、裏では3人、烏の幹部で私が4勝ほど勝ち越されてる。北辺勝太こいつは私より3つ年上の同年代の奴で中々勝負が決まらなくてお互い勝って勝ち越されてを繰り返しています。あと2人には勝てる未来が少しも視えない。正直言って…怪物です」


「怪物…」


「幹部の2番手と称される。河村景蔵、そして間違いなく最強と言える人が一人」


「その人は?」


「佐々木昌仁、間違いなく今の誰も勝てないと思わせられる。烏の筆頭です」


「藤助さん、斎藤源、鬼面の御前、北辺勝太、河村景蔵、佐々木昌仁そんなに強いのかい?」


「御前はまだ会ったことがありませんが、勝太のほうは互角ってところですね。あと4人は何度かボコボコにやられましたよ。景蔵様と昌仁様には一撃もあたえられず逆に一撃で気づいたらやられてる始末でして…はっきり言って人外ですよ」


「そんなにかい?」


「えぇ、御二人は静華様と同じ六感持ちです。固有式も使用できます」


「本物の化物だね…その二人」


「えぇ…最近使われてる言葉で言うなら、クソチート野郎やってらんねーってやつです」


「それ多分古いよ暁仁…」


「まぁ、とりあえず出迎える準備をしましょうか」


「今日から家族全員が集まるみたいなんだ」


「奥様も来られるのですか?」


「うん、精神疾患が回復してきたらしくて、姉さんが帰ってくると同時に一緒に住もうってお父様が…これも暁仁のおかげだよ。ありがとう」


「……さっ、行きましょう」


私は静華様と広間に向かった。


「暁仁殿、姫様」


「東凱殿遅れてしまい申し訳ありません。今から手伝い致します」


「その前に当主様と奥様がお見えになっておりますよ。先に挨拶をしたほうがよろしいかと」


「わかりました。ありがとうございます東凱殿」


「僕は爺を手伝うよ。行っておいで暁仁」


「静華様、会わなくもよろしいのですか?」


「後でのお楽しみってことにしたいの」


「わかりました。では、私は当主様の所に行ってきます」


私は、冬馬様がいる座敷へと向かった。


「暁仁です。入ってもよろしいでしょうか」


「いいよ!」


「失礼致します」


「やぁ、暁仁殿病院以来かな身体の方は大丈夫なのかな?」


「お、おかげさまでよくなりました冬馬様」


「貴方が暁仁殿ですね」


 そこには、とても美しい黒い長髪の女性がいた。

この方が…道理で静華様が綺麗なわけだ…


「始めまして、一条冬馬が妻の一条八恵と申します。この度は誠にありがとう御座いました。一条家共々感謝しております」


「いいえ、私は自分がやりたいと思ったことをやったまでです。お気になさらず」


「所で…静華の婚約者になった事はご存知で?」


「…………………………は?」


「ご存知なかったのですか?藤助様には許可を取り本人には伝えておくと言っておりましたのに」


 あのバカ師匠!勝手に話を進めやがって婚約の「こ」の字も聞いてねえよ。


「静華様はご存知で?」


「えぇ、喜んでいましたよ」


 先に合ってるのかよ。と言うより絶対結託してるだろこの人達


「八恵…私は一言もそんな話を聞いていないのだが…」


「あら貴方は黙っていなさい。私が話をつけたから気にしなくていいの、わかった?」


「はい…」


 冬馬様、可哀想だな。あれ?一条家の当主は誰だったけ?女性が強い一族なんだなきっと…


「静華様とはお話されましたか?」


「…えぇ、何度も謝罪したわこの人と一緒に」


「ご家族が元通りになってよかったですね」


「…やっぱり貴方はいい人ね」


「いいえ、いい人間にも裏の顔を持っているものです」


「貴方でも?」


「えぇ、私にも隠し事など山ほどあります」


「そう…」


「それでは、私は手伝いをしに広間に戻ります」


「暁仁殿、またお話しましょう。…次は家族として」


「喜んで、では失礼します」



 私は広間に戻り、東凱殿の手伝をした。時間はあっという間に過ぎていき15時を迎え、静華様と共に玄関にて帰りを待った。


「あっ、帰ってきた」


「只今戻った」


 お姉様の方もとても綺麗だ長い髪を後ろに束ねて、静華様と違いキリッとした感じだな。後胸がデカい。


「おかえりなさい、姉さん」


「あぁ、只今静華待たせてすまない」


「お初にお目にかかります。静華様の護衛についております吉備暁仁と申します」


「ほう、貴様が…私は一条桜だ」


 いきなり敵意剥き出しに、睨みながら挨拶を返してきた。一条家長女・一条桜様との出会いであった。最初のイメージが最悪なんだが私は一体、彼女に何をしたんだ?













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る