10話

「あ…、あき…、あきと…、暁仁」


「ん…、師匠?」


「ようおはよう、お二人さんよく寝てたな」


「着いたんですね」


「あぁ」


私が目を開けた時、写ったのはコンクリートで出来たトンネルだった。


「暁仁、ここがそうなのかい?」


「このトンネルの向こうがシャンバラになります」


「俺と暁仁は認識阻害は必要ないが、嬢ちゃんは幸蔵から貰ったそのピアスをつけろ」


「わかった」


「行きましょうか」


そこから10分程歩き出口が見えた。


「ここが…」


「えぇ」


 視界に広がるのは薄暗くも光り輝く古びた遺跡群と滝、森林地帯だった。


「地下にこんな広い空間がひろがってるなんて」


「私も最初はそんな反応でしたよ」


「これじゃあ…もう一つの小さい地球じゃないか」


「さぁ、行くぞ長く滞在できてここにいられるのは3時間だ」


「…師匠やっぱり許可取ってなかったんですね」


「許可?」


「ここは、プレートより下にある為、地震などの自然災害が発生しないんです。ここに来るためには組織的許可が必要なんです。勿論許可なしで大金を払ってここに来る人もいるんですけど…師匠はその許可を取らずに正規ルートじゃない場所からここに侵入したんですよ」


「………いい式神が見つかるといいな」


「そんな笑顔でごまかしても駄目ですよ」


「藤助さんって意外にその場しのぎの人なのかい?」


「静華様、師匠は適当なところが結構ある人なんですよ」


「さあ、行くぞ」


1時間後〜


「良さそうなのたくさんいるのに全然契約してくれないな」


「ここにグリフォンなどの怪物がいるのはなぜなんだい?海外の霊災で出現するはずだろう?」


「シャンバラの入口は世界中とつながってますからね。まだ見つかってない入口がいくつもあるんですよ」


「それぐらい広くて沢山の生き物がいるのに、何故暁仁は契約できないんだい?」


「嬢ちゃん、こいつの氣が多いせいで大抵のやつが逃げちまうんだよ」


「………は〜〜あ、ちょっと一人になりに森のほうに行ってきます」


私は一人森のほうに向かった。


「相当ショックなんだね」


「式神はほとんどの陰陽師が持ってるもんだからな」



森林地帯〜


「あ〜ぁ、何で見つかんないかな」


私は一人、泉でかがみ込む。


「ヴルルルゥ〜」


「うん?」


 正面から馬のような鳴き声?顔を上げると近距離で水を飲み私の顔をなめはじめる一頭の一角獣がそこにいた5m程の大きさに顔が龍に似ていて尻尾は牛のよう体は馬?だが鱗に覆われている。白い獣が首を傾げながら私と目を合わせる。


「貴方も一人ですか?」


「ヴルルゥ…」


「もしよかったら私の式神になりませんか」


(いいだろう)


「喋れるのかよ」


(汝の氣がとても魅力的でな、主にしてやってもよい)


「上から目線ですか?」


(契約と言ったな、汝は何を代償とする?)


「何がいいですか?」


(考えていないのか?)


「じゃあ、私の命でどうでしょう?」


(ありふれた代償だな…ならば汝が死した時、魂を私が貰うでよいか?魂を何に使うかは私の自由だ)


「いいでしょう」


(では、今日から汝は我が主だ)


「名前は、ハク(魄)でどうでしょう?」


(不吉な名だなもっとなんとかならんのか)


「白くて綺麗な魂、私が見た貴方の印象がそのように感じたのでその字を合わせてみたんですけど嫌でしたか?」


(…いいだろう。私は今日からハクとしよう)


「よろしくお願いします。ハク」


(主の名を聞いていないが?)


「暁仁です。吉備暁仁」


(主は吉備家の人間か?)


「養子ですけどね。師匠の養子になり吉備の名字を賜りました」


(どこかの名家出身ではないのか?)


「私自身は元々孤児院で暮らしていた孤児ですよ」


(孤児?その膨大な氣を保有して孤児とは珍しい事もあるものだ)


「氣の量は歴代随一と聞いてますから」


(太古の陰陽師並みの氣の量ではあるがあの時代は主並みの氣の持ち主は何名かいたぞ)


「とりあえず行きましょう。時間があまりなくて」


(まさか、ここに許可なしで来たのか?)


「師匠が許可取らずに来たみたいでそこまで時間がないんですよ」


(主は苦労してるのだな…)




藤助と静華〜


「暁仁、遅いね」


「まぁ、他の怪物に襲われてるかもしれんな」


「そんな事あるの!」


「ここにいる生き物が全て安全というわけではないからなぁ」


「暁仁大丈夫かな?」


「俺の弟子だそう簡単にはやられはせんよ」


「あっ、帰ってきたみたい!お~い暁仁」


「静華様〜、師匠〜お待たせしました。見つかりました。私の式神」


「…おい、お前さんそれは麒麟じゃないか!」


「キリン?」


「神獣といってな神に近い獣の事なんだが現在確認されてるのは、赤、黄、黒色の麒麟、白の麒麟しかも一角獣ときた最後に記録されてるのは平安時代を最後に姿を消したという災いを振り払う獣の王…確か、雲を操り空を飛ぶだったか?その白い麒麟を怒らせた国が滅び、別名…国落としの獣と呼ばれてる有名な幻獣だ」


「麒麟を式神にしている人は?」


「2本角と3本角の麒麟いわゆるクローンを式神としている人間は何人かいるが一角はお前さんだけのはずだ…こりゃあ驚いた。麒麟は色によって雷を操る。白の雷は無、黒は死、赤は力、黄は破壊、の雷を使うとされる」


「普通は契約しないんですか?」


「神獣と契約するにはそれなりのリスクを伴うから誰も契約しない。現在契約しているのは日本ではお前さんを合わせて19人だ」


「特級は俺とお前さんを合わせて3名、組織内では俺とお前さんを抜いて4名」


「あと十二体は?」


「平安時代に活躍したとされる安倍晴明が従えていたとされる。十二天将、ある十二の一族に託されているとされている」


「貴人・青竜・天后・大陰・大裳・騰蛇・勾陳・朱雀・玄武・天空・白虎だな。どれも強いが契約者はお前さんと同年代の子供だそうだ」


「勝蛇は火を操れる羽の生えた蛇、貴人は幸運を司る天女、朱雀は火の鳥、青竜は水を操る竜、玄武は土を操る耐久性が強い亀、白虎は攻撃的な虎、太陰は混沌を操る老婆、勾陳は金色の蛇とにかく硬い、天空はデカい鳥って話だ、天后は水を操る女神、大裳は文官姿だと、六合は調和を司る何かだとよ」


「意味がわからないんですが?人ですか?動物ですか?式神であってますか?」


「誰も見たことないんだとよ。太陰は恐らく鬼だと思うが、天空、六合、大裳、天后、貴人はどんな姿をしていて、どんな能力を使うか全くわかっていない。強さは1級または特級とされている。俺自身戦ったのは青龍、朱雀、白虎、玄武この4体だけだからな…」


「チッ、なんですか聞いて損しましたよ」


「師に対して舌打ちとはいい度胸だなバカ弟子」


「まぁまぁ、とりあえず帰らないと大変な事になるんじゃないの?」


「それもそうだ。とりあえず屋敷に帰ってお前さんがどれだけ強くなったか見てやろう」


「えっ…休みは?」


「何言ってんだ?十二天将戦に備えて鍛えてやろうってんだ。付き合え」


「僕も暁仁の戦い見てみたいな」


「それに嬢ちゃん一条家はその内の一体を持ってるはずだぞ」


「そうなの!」


(我も今から戦うのが楽しみだ)


「「喋った!」」


「は〜ぁ、面倒くさい」


私の苦労はしばらく続きそうだ…



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